その声は寝室にしている六畳の和室から他室に続く引戸の向こうから聞こえて来た。


「すう…?」


 疲れてうとうとしていた私は、枕元に置いたスマホの電源を入れて時間を見た―午前三時。

 人が話すには遅い時間だ。

 しかも複数のその声は、何か議論しているかのように、ざわざわと昏い部屋の方でざわめいている。

 何を言っているのか分からないが、ジッと聞いていると、怒った男のような声が、数cmほど開いた引戸の隙間から話し掛けて来た。


 すうは怯えているのか視界の端にも現れない。

 声はどんどん大きくなる。

 私は眠くて苛々していたので、思わず大声で怒鳴りつけた。


「五月蝿い!!」


 声はピタリと止んだ。

 開いていた引戸が音もなくスッと閉まる。


―すごい…


―すごい…


 嬉しそうなすうの声を子守唄に、私はまた眠りについた。

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