僕と王様ゲーム③

 そこからの王様ゲームは、しばらくの間は平穏であった。というのも王様になるのは、僕や敦、赤坂の三人ばかりで問題行動を起こしそうな二人には、まるっきり当たらなかったのである。それこそまさに神が二人を選ばない様に選択しているかの如く。


 その様子に僕達三人は良かったのだが、当然先輩と咲夜は不満なわけで、ゲームが進行するにつれてどんどん不機嫌さを増していっていた。


 その事に多少なりとも罪悪感は感じるが、それよりもわが身の可愛さ優先である。このまま何事もなく今日一日が終わればよいと思っていたのだが、現実は残酷である。


「ふふふ……ついに私の時代が来たわ」

「終わった……」


 咲夜ならばまだ一抹の希望を感じることができたが、よりにもよって先輩が引いてしまったのである。


「よ~し。もう外も暗くなってきたし、そろそろ終わりに……」

「そんなの許すわけないでしょう?」

「デ、デスヨネー……」

「まあ落ち着けよ」

「敦……」

「王様の番号はあくまで番号での指名制。そんな都合よくお前の番号が当たるわけ……」

「それじゃあ一番が王様に十分間王様に身を差し出すで」


 自分の番号を確認する。そこには見事に一番と書かれたものががががが……


「あー、その様子だとマジで当たったの?」

「……うん」

「なんかごめん」

「……ぐすん」

「ちょっと待って」


 そこで待ったをかけたのは咲夜。


「十分間身を差し出すってそれ最初に決めた禁則事項に違反するんじゃないの? だってそれってエッチな命令だってできちゃうじゃん」

「い、言われてみればそんな約束してたな」

「そうなると霧羽先輩の命令は無効ってことになるわけだな」

「ああ、その点については大丈夫よ。私は何も雅也君にエッチな命令をする気なんてないもの。なんならもし私がもしエロいことを命令したらその瞬間私のターンを終了してもいいわよ」


 そういう先輩の表情はやけに強気で、妙な自信を放っていた。


 それにしても先輩がセクハラをしないとなるとこの十分で何を命令しようとしているのだろうか?


「で、でも貴方の事私は信用……」

「咲夜。ここは一旦先輩のいうことを信用してみたらどうかしら?」

「え、朱音?」

「あら。赤坂さんは私の味方をしてくれるのね。てっきり信用してくれないと思っていたわ」

「いえ、別にそういうわけではなく、私としては早く終わらせたいだけですよ」

「そ、そうなの。ええと、江中君の意見はどうかしら? 私の事信頼できない?」

「ええと……その……俺としては信頼できるとか信頼できない以前に雅也が嫌がるをしないのならもうなんでもいいかなって」

「ぐぬぬ。江中君も朱音も裏切って……で、でも雅也君は違うよね?」

「いや、まあそれはそうだけど、敦と赤坂が先輩側に付いた時点でもう勝ち目はないと言うか、覚悟は決めたよ」

「ぐぅ……まー君のそういう潔いところも好きだけど、今は凄く嫌い‼」

「あはは……なんかすまんな」

「さて結論も出た所で雅也君こっちに来てくれるかしら」

「え、あ、はい」


 先輩は手招きを僕を呼ぶと、自分の膝を叩くとそこに寝転がるように指示した。


 先輩の要望というのは、俗にいう所の膝枕であった。


「ええと……」

「ふふふ。私の膝の寝心地はどうかしら」

「その……なんというか。気持ちいです」

「そう。それは良かった」


 それにしても先輩って改めてみると本当に綺麗だよな。ストーカー行動がたまに傷だけど、こうやって穏やかな表情をしていれば美人でカッコいい先輩にしか見えない。実際先ほどから僕の心臓の鼓動は凄まじい速さで行動している。


「まー君の浮気者……」


 といっても先輩の魅力にときめいているというよりは、咲夜のこちらを見る目線が怖いからって理由が一番なのだけれど。


「それにしてもどうして先輩は僕に膝枕をしたかったんですか?」

「それは、ほら。付き合っていた時にこうやって雅也君をねぎらった事がなかったから。それで一度こうしてみたかったのよ」


 先輩は優しい手つきで僕の頭を撫でてくれる。人から頭を撫でられるなど、あまり経験してこなかったし、そんなにいいものだとは思ってなかったが、いざ実際こうしてしてもらうととても良い物であったとこれまでの認識を改めざるを得ない。


「ふふふ、雅也君」

「な、なんですか」

「好きよ。心のそこから」

「……」

「顔が真っ赤よ?」

「……うるさいですよ」

「そんなところも好き」

「……ああ、もうわかりましたから。これ以上はもういいですから。勘弁して下さい」


 本当この人のこういう所は本当にすごいと思う。僕にもこの人の子の正直さが少しでもあったらあの時の関係も変わっていたのだろうか。


「はい。終わり‼ 終了‼ ほら、離れなさい‼」


 咲夜は強引に先輩から僕を引き離すと、ごしごしとタオルで僕の顔を吹き始めた。


「あたしのまー君が、あたしのまー君が汚されちゃったよぉぉぉぉ‼」

「いや、汚されてないから」


 それにしても強くこすりすぎではないだろうか。そのせいで僕の頬は今にも火を噴きそうである。


「雅也君」

「なんですか?」

「またして欲しかったらいつでも言ってね。私の膝はいつでも空いているから」


 あら、ばっちりウインクも決めちゃって。そのせいで咲夜の僕の頬をこする速度が上がってしまったではないか。


「なぁ赤坂」

「何よ」

「俺達は一体何を見せられているのだろうか?」

「そん名の知らないわよ」

「そうだよな。それと赤坂」

「何?」

「俺に膝枕をしてくれたりは……」

「するわけないでしょう? 脳に蛆でも沸いたの?」

「デスヨネー……はぁ……」

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可愛くて、健気で、エッチで、一途な女の子達は、好きですか?~付き合いたい彼女達と付き合いたくない彼の攻防戦~+α 三日月 @furaemon

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