<interlude2>

──カッポーーン!


 どこからどう見ても西欧式洋館な作りの屋敷の中に、そこだけはいかにも純和風な大浴場があるのは奇妙な光景ではあったが、今はその広さが、ジーナにとっては救いだった。


 「では、善は急げですの!」


 と急かすファミィにグイグイ腕を引っ張られて、脱衣所へと連れて来られたのだ。

 自分も風呂に入るつもりで着替えなどすでに用意していたため、「ちょっと準備を」と心を落ち着ける時間を稼ぐこともできなかった。


 抵抗する暇もなく、あれよあれよと言ううちに裸にされてしまう。ファミィ自身も服に手をかけたため、ジーナは慌てて「お先に!」と風呂場に飛び込んだ。


 焦りつつも、2回かかり湯してから浴槽に入るのは、育ちの良さ故か、キャリオが組んだ行動プログラムが優秀なのか。

 とにかく、頭上にタオルを載せた古式ゆかしいスタイルでお風呂に肩まで浸かることで、ようやくジーナは一息つくことができた。


 「ふぅーーーーーやれやれ──って、忘れてたけど、この擬体、風呂とか入って大丈夫なのかな?」

 「心配いりませんの。その体は20気圧完全防水&耐圧耐腐蝕絶縁仕様ですの」


 ガラガラッと風呂場の扉を開けて入って来たファミィが、ニコニコしながら教えてくれる。バランスのとれた肢体には大きめのバスタオルを巻いていたので、ジーナも何とか平常心を保つことができた。


 いや、実のところジーナ自身が事前に危惧したほど危うい状況ではなかった。

 体が変われば生理機能にも変化があって然り。ゲオルグ少年なら確かに鼻血吹いてブッ倒れそうなこの状況下でも、いまのジーナなら比較的冷静な態度を保つことができるのだ。


 ──が!

 その平静もこれまでのようだった。


 「あらあら、なんで逃げますの?」

 「ぶっ!!」


 肩までお湯につかり100まで数えさせられた挙句に、こんどは洗い場に引っ張られて適温にしたシャワーを頭からかけられる。さらに、お湯と一緒にファミイの手が、未成熟なジーナの体中を優しく這いまわった。


 「くふぅん……ちょ、っと、や、やめてください、お嬢様、自分で身体ぐらい洗えますから!」

 「こら、ジーナちゃん。そんなにゴシゴシ体をこすっちゃあ、ダメですの~。女の子の体はデリケートだから、優しくしてあげるですの!」

 「わわわわ、わかりました、わかりましたから……ひんっ!」


 慌てて首を縦にふるものの、背後のファミィは手を伸ばし、手にとったボディソープを泡立てて、ジーナのささやかな胸のあたりを撫で回してくる。


 「ぁっ……」


 切なげな声を出して身もだえるジーナ。


 「ジーナちゃん、すごくキュートですの。でも、こちらのイチゴはまだまだ今後に期待ですの」

 「ぁっ! ……あン! ひン……」


 泡でヌルヌルになった指先で、小さいなりにピンと尖った乳首をキュキュッと刺激されただけで、ジーナは全身が震えた。


 「やぁ……ちょっと、お嬢さまァ」


 淡い茂みすら生えていない股間から、ヒクヒクと半透明な液体が溢れ出てくる。


 「そんな、ボク……あぁ、こんなのヤなのに……ひン!!」


 ロボットに必要ないはずの荒い呼吸を繰り返しつつ、ジーナはヒクリと体を軽く震わせ、今夜もまた意識が遠くなるのを、どこか他人事のように感じているのだった。

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