第402話 最後のユニークスキル

「みんな無事だよ。レンが、命を賭けたからディザスターももう出て来てない」


「そうか、良かったよ」


 みんなが無事であることがわかりレンはホッとする。と同時にエリアス達には本当に申し訳ないことをしてしまった。伝えたいことがあったが、そんな余裕もなかった。








「ルティア、マスターの怪我を綺麗に治してくれますか?」


「うん、わかった」


 ルティアがレンに手をかざして魔法を使う。エリアスがあちこちから流れる血をハンカチで拭う。


 だが、顔を拭いても拭いても、レンの顔には涙が落ちる。


「レン……レン……」


 エリアスが名前を呼び続ける。呼んでいればレンが起きてくれると思って。



 周囲の空気も、災厄に打ち勝った喜びよりもレンの死という悲しみの方が大きい。


「流石の賢者の知識にも復活の力はないか……」


 ミラが呟く。大賢者とは言っても名前だけ。まだまだなんだなと思いながらミラが空を見上げる。



「ありがとう、ルティア。傷が治りましたね。ええ、これならマスターも目を覚ましたくれますよ」


 と微笑んでナビゲーターが言う。彼女には最後の仕事が残っていた。マスターから託された最後の仕事が。


「ナビゲーターさん、何をする気?」


「切り札です。マスターに託された最後の仕事を遂行します!」


 ナビゲーターがレンに手をかざした瞬間に、魔法陣のようなものがレンの周囲に現れる。


 その光景に一同が息を呑む。



「成功するかは、私の力次第!ですが、絶対に成功させます。マスターを取り戻すために」


 使用してはじめて膨大なMPが必要になることがわかる。ナビゲーター自身の存在にも関わってくるが、命を賭けて戦ったレンに比べれば、スキルの自分などどうなっても構わない。


「ナビゲーターさん!」


 エリアスやルティアが驚きの声をあげるなか、ナビゲーターはレンに託された最後のユニークスキルを使用する。



「ユニークスキル《バックアップ》発動!」






「レン、時間が来たみたいね」


 レミに言われて、レンは頷く。ナビゲーターさんに頼んだ


「うん、父さんとお母さんも助けたかったんだけどな」


「気にすんなよ、レン。俺達はもう十分生きたんだ。だけどレンの人生はこれからだ!ちゃんと生きて満足したらまた会おう」


「見守ってるから、エリアスとルティアを大事にするのよ?」


 2人の言葉を受けて、レンは歩み始める。


「いつか会う日まで」


「「いってらっしゃい」」


 2人がレンの背中を押した瞬間に、レンは落ちるような感覚を覚えた。



 どこかから自らを呼ぶ声が聞こえた気がしたのだった。

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