第403話 ただいま

 レンは、ゆっくりと落ちていく。空から地上の身体に向かっているのだろうか?という感覚を感じていた。



「頑張ったね、レン。君を待ってる人が沢山いる。これからも大切にするんだよ?」


 白髪の少年だ。彼を見間違えるはずがない。


「まさか、こんな所で会えるなんてな、レイ!ああ、当たり前だ!」


 消失したと思っていた空想の英雄だ。想定外の再会が続く。


「僕も驚いてるんだよ、まさか消えてないなんてね」


「お前ももう、俺だけの英雄じゃないからな。もしかしたら、それのおかげかもな?」


 リータを救ったレイの行動もあった、レイはレンだけの英雄ではなくなった。だから、ここでまた会えたのかもしれない。


「何年後かはわからないけど、いつかまたレンに会えると思う。いや、会いに行くよ!」


 レイが手を伸ばしてくるのをレンも掴む。


「約束だ、レイ。また会おう!」


「うん、約束だ」


 と言いながらレイは笑って手を離し見えなくなる。



「ああ、本当にやりたいことが多すぎるな。絶対に戻らないとな!」


 眩しい光が見え始めて、レンはそこに向かっていく。







「ぐぬぅ、はぁぁぁあ!戻ってきて下さい、マスター!」


 ナビゲーターの声が響く。レンを甦らせるために、必死に力を使う。MPがどんどん無くなっていくのを感じる。


「このままでは、マスターを……」


 膝をつきそうになるが、


「ナビゲーターさん!」


「私達も助けるに決まってるじゃない!」


 エリアスとルティアもナビゲーターを支えるために、力を貸す。


「エリアス、ルティア!」


「1人で無茶しすぎ。レンもナビゲーターさんも」


「ホントよ、後で覚えてなさいよ!2人揃って文句付けてやるんだから!」


 エリアスとルティアのMPが流れる。さらにそれだけではなかった。


「もちろん、大賢者の力が必要だろ?存分に持っていけ!」


 ミラが、


「私達もだ!レンを救うためなら」


「うん、レンさん戻ってきて!」


「冒険する約束も守ってもらうわよ」


 アンナが、アイリが、フィレンが、



 そこにいるみんなが、レンを助けるために動く。ユニークスキルが奇跡を起こしてくれることを信じて。







 最初の言葉は決めていた。


「ああ……ただいま」


「「「おかえりなさい、レン!」」」


 長い眠りから覚めたような感覚で周囲を見渡すと、多くの者に囲まれているのにレンは気づく。


『やったぁぁぁぁぁ!』


 直後に大声が上がる。あまりに大きい声にレンも驚いてしまうのだった。

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