第221話 開幕と対マサト
目の前に現れた魔族達は、各々武器を持っており今にも襲いかかって来そうな様子だ。
「迎え撃つ。聖騎士よ!」
『うぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!』
フェインドラの合図に聖騎士達が咆哮を上げて魔族に向かって行く。
戦いの幕が上がった。
聖騎士と魔族の実力は互角のように見えたが、聖騎士の連携力がそれを上回っている様に感じる。
「周囲を警戒してください!神託では、開戦の一撃が放たれるとありました!」
神女の言葉にレンは、周りの様子に気を配る。確かに、今の魔族達の攻撃では開戦の一撃と言えるほどの脅威はないだろう。
「なんだ、あれは!」
1人の聖騎士の言葉に多くのものが空を見上げた。空からは、こちらに向かって隕石が降り注いでいる。
『あれは、マスターが使っているのと同じような魔法ですね』
レンのマキシマムミーティアのことだろう。ナビゲーターが声を発する。
「あんな数処理しきれない!落ちる」
聖騎士が驚きの声を上げる中、
「レン、いきなりだが盾を使ってくれ!」
とアルファードが声を出す。それに対してレンはすぐに空に飛び上がる。
「とんでもない魔法使いがいるのか!マグノリアか?いや、それ以上かもしれないな」
と言いながら、アイテムボックスから盾を取り出して構える。直後、盾から周囲に障壁が展開され隕石の魔法攻撃を防いでいく。
なんとか魔法が止まったので、盾をしまいながら下の方を見ると未だ魔族との戦いが続いていた。
「おれも戻って戦わないとな……ん?」
『マスター!そこから離脱してください!』
ナビゲーターさんの言葉の直後、レンがいた場所で爆発が起きる。
「ゴホッゴホッ……危な……」
ギリギリ回避して煙が晴れると、そこには白い髪が覗くフードを被った人物がいた。手入れの行き届いた、強力そうな剣を持ち空中に佇んでいる。
「…………消えろ」
短い言葉の直後にレンに向かって、剣を振り上げて飛び込んでくる。
「お前が、まさか!」
レンは、剣を取り出して攻撃を受け止める。お互いの剣がぶつかり合うが、押されたのはレンの方だった。
とてつもないスピードで地面に叩き落とされる。
「レン!」
落ちてきたレンにアルファードが声を上げる。
「無事です……だけど、厄介な相手が……くっ!」
いつの間にか目の前に現れた男の攻撃に、どうにか回避で対応するが服の一部が切れる。
だがさらに追撃が来る。
「まずい!」
斬られると思ったが、剣はレンの目の前で止まった。
「マサトぉぉぉぉ!」
アルファードが吠えながらレンに向けられた剣を受け止めていた。アルファードの言葉からやはり相手は、この前話に聞いた救国の英雄のかつての仲間、マサトであることがわかった。
力強いアルファードの剣の振りでマサトが後退する。
「助かりました」
「ああ、だが油断するな!2人で挑んでも厳しいかもしれない!」
アルファードが剣を構える。
「チェンジボックス!」
周囲に大量の箱を出現させ、レンも準備を整える。
「マキシマムマジック……ヘルファイヤ」
静かにマサトが詠唱した直後に、レンとアルファードの周囲が黒の炎に包まれる。
とてつもない熱さを感じ、まるで地獄にいるような気分になる。
「マキシマムマジック、アクアウォール!」
レンもそれに対応して水魔法を発動し、炎を消すために動く。だが、炎はなかなか弱まる様子がない。
「マサトは優秀な魔法使いでもあった。そう簡単にはいかないな」
と隣でアルファードが答える。
「俺が火を止めますんで、進んでください!フリーズ!」
レンのステータス外スキルが発動し、燃え盛っていたヘルファイヤが動きを止めたためアルファードは、迷わずにマサトに向かう。
さらにレンもそれに続いた。
「「うぉぉぉぉぉ!」」
レンとアルファードが声を上げて向かって行くのを、マサトは特に表情も変えず静かに見据えているのだった。
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