第214話 空き時間と騎士との鍛錬
リディエル神聖国に着いた翌日、再び聖王とアルキア王子の話し合いは続いている。何やら難しい話が続いておりレンはただ王子の後ろで立っているのみだ。
「レン、交代だ」
とアルファードに声をかけられて、王子の護衛を変わる。主にレンとアルファードが時間で護衛を交代している。ノックスさんともう1人の兵士も交代で付いているのだ。何かあった際には、兵士に伝令をさせることも出来る。
「わかりました」
「お疲れ様です、レン殿。ごゆっくりお休みください」
アルキア王子がレンに声をかけてくる。王子は、とても気にかけてくださる方で優しい人だと思った。王国の未来は明るそうだ。
『さて、これからどうしましょうか?』
「そうだな……」
ナビゲーターさんの問いかけにレンは悩むように呟きながら外に向かって歩く。
城の外に出たレンの前に、数人の聖騎士が立ち塞がり行手を阻むような形になった。
「どうしました?」
何か起きるか?と少しワクワクしながらレンが聞く。
「失礼、昨日破黒の英雄とお聞きしたためお時間がありましたら我々と鍛錬などどうかと思い声をかけさせてもらっております」
渋い男の声で、レンに聞いてくる。昨日、話を聞いていてレンの二つ名に反応した者だろうと思う。
「それはありがたいですね!よろしければご一緒させてください」
朗らかに答えると、後ろの聖騎士達が、おお!と嬉しそうな反応をしていた。
「ありがとうございます。それでは、こちらにどうぞ」
と言われてレンは付いて行った。
『戦う展開にはなりませんでした。残念です』
(いやいや、これで良いんだから!物騒だよ)
ナビゲーターさんの言葉にレンは返す。テンプレ的なのが好きなのだろうか?
個人的には聖騎士というのがどれだけの実力を持っているのかというのも興味があった。
最初に、お互いを知ることが大事だということで、戦ってみることになった。身体強化等のスキルも使って良いそうだ。
「第一部隊所属、隊長のジェルミンだ!よろしく頼む」
剣と盾を構えた聖騎士が言う。レンとしてはみんな、同じ格好に見えるため誰が誰とか判別がつきそうにないが隊長は、鎧のデザインが少し違うため判断しやすそうだった。
「Aランク冒険者、レン・オリガミです。よろしくお願いします!」
レンは、自動修復の付いている剣を持ち同じく名乗る。なんだが、ミラがこういうのは好きそうだなと思った。迷宮都市で魔法を使い始めた彼女は、セリフが長かったものだ。
「それでは、始め!」
と審判の聖騎士の合図で、レンとジェルミンがお互いを探る。
「聖技、アーマーシールド発動!」
とジェルミンが言った瞬間にレンには鎧がより強固に感じられた。
「硬そうだ」
とレンは呟きながら身体強化のスキルを発動させる。
「はぁぁぁぁぁぁ!聖技、パワーウェポン発動」
と言いながらレンに向かって剣を振り下ろしてくる。聖騎士ならではのスキルなのだろうと思いながらレンはそれを受け止める。
「かなり、重いな!だけど……はっ!」
聖騎士の一撃は、強力なものであった。だが、レンにとって脅威ではない。剣撃を自らの剣で受け止めてそのまま跳ね返し、反撃を狙う。
「聖技、スピードアップ発動!」
と言いながら、聖騎士が素早く動くも避けきれず盾で受けるのがやっとのようだ。
バンッ!
と音がなり、聖騎士の盾が飛んでいった。
「隊長の盾を飛ばした!」「なんてパワーだ」
と見ている聖騎士から声が上がる。
「さすがに破黒の英雄……大きい壁だ」
とジェルミンが両手で剣を持ちながら言う。盾を拾いに行けばレンに負けることがわかっているのだ。
再びジェルミンが突っ込んで来たため、それにレンも応えて剣を振るう。
キンっ!と音がなりジェルミンの剣が飛んで落ち、レンが剣を突きつける。
「参った。ここまで実力差があるとは悔しいが、清々しくもある」
と手を挙げてジェルミンが答える。
「いえ、ありがとうございました」
と言いながらレンは剣を鞘にしまう。
「隊長に勝ったな!」「すげーな、やっぱ英雄とか言われる人は」「あんな強くなってみたいな」
と他の聖騎士達が言っている。
レンとジェルミンは、握手を交わした。
「我々が何か出来ることはないかもしれないが、良かったらアドバイスをして行ってはくれないだろうか?」
「俺にも得られそうなことがあるんでぜひお願いします」
とレンは答える。
先程ジェルミンが使っていた聖技というのも気になった。
「ありがたい!みんな、破黒の英雄であるレン殿が鍛錬してくださるぞ!」
とジェルミンが言った瞬間に周囲の聖騎士達がよろしくお願いします!と元気に挨拶を行ってきた。
「こちらこそ、よろしくお願いします!」
と聖騎士とは、とても礼儀正しい人が多いものだと思う。冒険者も見習って欲しいものだなとこれまで会ってきた厄介な冒険者達を思い浮かべた。
そこからレンと聖騎士、第一部隊の鍛錬が始まった。やはり、隊長が部隊での1番の実力者のようでレンに敵う者はいなかった。
他の聖騎士と馴染んで鍛錬を行っていると、
「楽しそうですね」
と柔らかい声が聞こえて、その瞬間に聖騎士達が敬礼の姿勢を取った。
「おっと」
あまりの連携の高さにレンは驚きつつ、レンも姿勢を正す。
「楽にしてください。神聖国のため日々の鍛錬お疲れ様です」
来たのは神女だった。聖騎士達にも声を良くかけているのだろう。尊敬の念が感じられた。
「レン殿と鍛錬か、学ぶことも多いだろう?」
神女の後ろには、聖騎士長が続いており聖騎士に声をかける。
「は!貴重なお時間を割いてくださり、我々を鍛えてくださってます」
とジェルミンが代表して答える。
まだそこまで長くはやってないけどなとレンは思っていると、
「アルファードが褒めていたので私も気になりました。よろしければ私とも鍛錬などいかがですか?」
と聖騎士長が提案してくる。周囲の聖騎士からは、おお!と声が上がった。
「よろしいのですか?」
「ええ、アルファード位は戦えますので」
と言う。たしかに、魔門の話をした時にアルファードと同じくらいだと言っていたことを思い出す。
「お願いします!」
とレンは答える。
レンと聖騎士長が戦うことが決まった。
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