第215話 対聖騎士長と魔眼

 リディエル神聖国、聖騎士長フェインドラ・ガレン。王国最強の冒険者、アルファード・シルフォンと同等の実力を持つとされている神聖国の最強戦力である男だ。


 それな彼に興味を持たれたのは、レン・オリガミだった。


(神女様は、彼が白き英雄とお考えだ。どんな力を持っているか興味深いな)


 神女が明言したわけではないが、直感的に彼を白き英雄と考えているのがわかった。もしも、神聖国が神託通り戦いの場になった時に彼にも力を貸して貰う必要もあるかもしれないため見定めたいと思った。



「アルファードが褒めていたので私も気になりました。よろしければ私とも鍛錬などいかがですか?」


 親友と言っても過言では無い男、アルファード。彼がレンのことを高く評価していた。あれは、将来俺を超えるとまで言ったのだ。戦士としてのフェインドラもレンに興味を持ったのだ。


「よろしくお願いします!」


 真っ直ぐな瞳でレンが返事を行った。


(1人の戦士として、この戦いは楽しむことができるかもしれないな)


 とフェインドラは、微笑むのだった。






「さーて、どうするかな」


 身体をほぐしながら自然と口から言葉が漏れる。内容は当然、聖騎士長との鍛錬だ。こんなにすぐに聖騎士長と戦うことになるとは思わなかった。


『案外ゲームなどでは、この流れは良くあるものではありませんか?』


 レンの呟きにナビゲーターさんが答える。


「まあ、そうだね。でも実際にそうなると厳しいだろ?攻略サイトなんかがあるわけじゃないし」


 スマホゲームなんかをする時には、ネットの攻略系のサイトがとても役に立ったものだ。弱点なども詳しく書かれており便利だ。


「ナビゲーターさん、聖騎士長の攻略情報を表示してくれ!」


『検索中……申し訳ありませんが、そのようなデータはありません、マスター』


 そりゃあ無いよな……とレンは思う。さすがにここで攻略情報でも出てこようものなら衝撃だ。わざわざ流れに乗って検索中と言ってくれたナビゲーターさんにも申し訳なく思う。


「普通に戦うしか無いよな」


 とレンは呟く。



 聖騎士長の装備は、他の兵士達と似たようなもので鎧と両手剣を持っている。盾は持っていないように見えるがアイテムボックスなどの可能性もあるため油断は出来ない。


 少しだけ風が吹き、髪が揺れるのを感じた。聖騎士長の長い髪が揺れるのを見てなかなかに絵になる構図だなと思う。控えめに言ってイケメンだ。


『これから戦闘になるのに余裕ですね、マスター。イケメンが羨ましいですか?』


「まあね、来世に期待したいよ。よし、切り替えていきますかぁ!」


 とナビゲーターさんに答える。




「リディエル神聖国、聖騎士長フェインドラ・ガレン」


 と聖騎士長が名乗り剣を構える。


「Aランク冒険者、レン・オリガミ」


 レンも真似て名乗っておく。


「それでは、始め!」


 と審判役の兵士が合図を出した瞬間に2人が動く。


「聖技、スピードアップはつ……ぬっう!」


 フェインドラが聖騎士のスキルを発動させようとするが、レンが斬りかかり妨害を行う。実力がアルファードクラスであるなら、スキルを発動されること自体が危険かもしれない。


「はぁぁぁぁぁぁ!」


 声を上げながらレンは、連続攻撃を放つ。しかし、フェインドラは、それに対して慌てることなく対応して来た。


「聖技、パワーウェポン!」


 先程レンが聖騎士から受けたスキルを使用してくる。


「ぐっ!」


 聖騎士達とは比べ物にならない衝撃を受け、身体が後ろに飛ばされる。剣を地面に刺して勢いを殺しながらレンは停止する。


「良い対応ですね。魔法も使って構いませんからね?」


 朗らかに言いながらも距離を詰めて来ている。レンもポーカーフェイスで剣を構え直す。


「転移!」


 と一言呟いてレンは、フェインドラの目の前に出て剣を振る。だがフェインドラは、焦ることなく自らの剣で受け止めていた。



「転移……だよな?」「消えたと思ったら現れた」「あんな動きが出来るのか!」


 と周囲で見守る聖騎士達の声が聞こえる。彼らからするとレンとフェインドラの戦いは、目で追うのは難しいものだ。


「やりますね。転移魔法は、なかなか使える人がいない珍しい技です。ぜひ他の技も見せてください」


「じゃあ、お望み通り行きますよ!」


 フェインドラの剣を無理矢理払ってレンは、後ろに後退する。


「力を貸してくれ、ナビゲーターさん」


『はい、承知しました!マスター』



 レンの髪の色が金色に変わり、周囲にいくつもの魔法が展開される。


「これは……変身?面白い!」


 フェインドラがレンに向かって突撃してくる。


「マジックバレット!」


 レンが手を指鉄砲の形にしてフェインドラの方に向けると魔法の球が放たれる。


「聖技、アーマーシールド」


 防御力を格段に上げたフェインドラは、魔法の球をもろともせずに向かってくる。


「錬金!」


「聖技、バーストアタック!」


 レンが錬金魔法で壁を作り出して進路を妨害するが、フェインドラもそれを破壊して迫る。


 ここまであっさりと対応してくると、アルファードと戦っている気分になる。さすがは同等の実力者だ。


「それでは、出し惜しみせずに使いましょう。ステータス外スキル!」


「気をつけないとな」


 ステータス外スキルは、切り札と言っても良いものだ。

 剣を振り上げて正面から向かってくるフェインドラに警戒する。


『マスター!右です!』


 ナビゲーターさんの言葉の直後に横から剣撃が飛んでくる。


「くっ!」


 ギリギリ剣を横に出して攻撃を防ぐ。そして誰がその攻撃をしてきたかを見るとレンの右には誰もいない。


「さて、これはどうですか?」


『マスター屈んでください!』


 すぐさまナビゲーターさんの指示に頭を屈める。上を何かが飛んでいったのを感じた。


「見えない攻撃……これがステータス外スキルか」


 とレンは呟く。やはり厄介なものであった。


「さて、次いくぞ」


 とフェインドラが剣を構え直す。確実にフェインドラのステータス外スキルの効果だろうと思う。


「俺も、使えるものを色々と使ってみるか」


 と言いながらレンは自らの目を見開く。




「魔眼発動!」


 クシフォンにより与えられた魔眼が発動しレンの目の色が変化する。


 レンも対抗していくのだった。

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