第153話 霊と別行動

「嘘だよな……?いやいや!そんなはず……」


 とレンは、抱えているアンナを落としそうになる。


「おおっと!いや、私が言っていることは本当だぞ」


 アンナが嘘を言っているとは思えなかった。


「と言うことは……ここって、かなり危ない場所じゃないかしら?」


 とルティアが言う。


「怖くない、怖くないぞ」


 ステラなど足がガクガクだ。



「まぁ、幽霊もいるか……そのまま進もう」


「「「えーーー」」」


 批判が飛ぶ。そんなに嫌なのか……とレンは思った。





 レン達の目の前には、巨大な屋敷があった。あまり趣味が良いとは言えないデザインで不気味さを感じる。


「ここに入るの?」


 エリアスが聞いてくる。現在、アンナも立てるようになり後ろの方にいる。


「嫌な予感しかしないよ……」


 ミラが呟く。


「どうする?みんなここで待っとくか?」


 と言いながら、レンが進んでいく。



 全員レンについて屋敷に入る。さすがにレンがいないのは不安なのだろう。




「はぁぁーーい!私の屋敷にようこそ!」


 レン達が屋敷に入った瞬間に声が響く。とても明るい元気な声だ。


「まさか、ボスかしら?」


 ルティアが言う。


「ふふふ、そう正ー解!やるじゃないお間抜けなお嬢さん」


 真っ黒の髪に黒いドレスを着た女の子が空中に浮いている。


「な!誰が間抜けよ、キーーー!」


 ルティアが怒るが、すぐに他の人に押さえられる。


「ここが、ボス部屋なのか?」


 レンが聞いてみる。


「そうだね〜、この屋敷自体がボス部屋かな?でもね、そんなに戦いたくないからね、遊ぼー」


 と女の子が言ってくる。


「何をして遊ぶんだ?」


 とアンナが言う。


「そうだね〜、私がゴールで待ってるからそこまで辿り着くゲームなんてどうかな?」


「結構簡単そうなゲームだね!」


 とミラが余裕そうに答える。


「ふふふ、それはどうかな?お兄ちゃんがいるとあっさりゴールしそうだから別々の場所に飛ばさせてもらうね〜」


 レンを指差しながら女の子が言う。


「な!それは卑怯よ!」


 ルティアが大声で言う。


「間抜けなお嬢さん、怖いんだ〜?」


「くっ、やってやるわよ!」


 怒ったようにルティアが女の子に返事をする。もうヤケにしか見えない。


「それじゃあ、別々に飛ばすよ〜。あ、ここ幽霊出るから気をつけてね!」


 と声が聞こえて、レン達は飛ばされるのだった。







「ここは……」


 レンが周りを見回すと周囲には誰もいなかった。


『ボスの言う通り、別々の場所に飛ばされたようです』


「まぁ、敵も戦闘する気はないみたいだから、みんな大丈夫かな?」


 と言いレンは、歩き始める。みんな幽霊が怖い様子だったので不安を感じる。やる時はやれるメンバーだと信じてレンは進むのだった。





「どこかしら?」


「どこだろうか……」


 ルティアとエリアスが話す。


『ふふふふ……』


「「ヒイッ!」」


 2人が悲鳴を出し周囲を見回すが誰もいなかった。


「ルティア、速くレンと合流しよう!」


「そうね、心が持たないわ」


 と2人は移動を開始する。






「お姉ちゃん、みんなと別々になったね」


 アイリが隣にいるアンナに声をかける。


「ああ、だが例え1人であろうともどうにか出来るようにならなければならない。レンがいなくても大丈夫だということを証明する」


 とアンナが言い、歩き出す。


「そうだね!頑張ろう、お姉ちゃん」


 アイリもそれに続いて歩く……



『アハハハハハ!』


 突然、2人の目の前にボロボロの冒険者の霊が現れ笑い出す。


「わぁぁぁ!」


 とアイリが盾を前に突き出すが、霊は消えてしまう。



「驚いたぁぁ。ビックリしたね、お姉ちゃん!………」


 アイリがアンナの方を向くとアンナはすでに気絶していたのだった。






「怖くて目を開けられないぞーー!誰かいませんかぁ?」


 と目をしっかりと閉じた状態でミラが言う。


「お、この声はミラか?1人じゃなくて安心した。奇遇だな、私は目にゴミが入って開けられないんだ」


 とステラが答える。


「ステラかぁ、ゴミとかどうせ嘘でしょ。私と同じで怖いんでしょ」


 目を閉じて声がする方を向きながらミラが言う。


「こ、怖くなんかないぞ!ゆ、ゆゆゆ幽霊なんてな!」


 ステラも目を閉じたままミラの声がする方を向く。



「それじゃあ、せーので目を開けましょう!」


「わ、わかった」


 と合図を決めて目を開けることにする。


「「せーの!」」



 ミラとステラの2人が目を開けると、2人の間にそれぞれ2人を見つめる2体の骸骨が立っていた。


 2人は、一旦停止して………


「「ギャァァァァァァーーー!」」


 と悲鳴を上げるのだった。






「誰かの悲鳴が聞こえたような……」


 飛び出してくる霊に驚きつつもレンは進みながら呟くのだった。

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