第154話 ゴールとイージス再び
「突然飛び出してくると怖いもんだな……」
レンは、走り回りながら呟く。
先程、扉があったため開けてみると、開けた瞬間に幽霊が現れたのだ。さすがに幽霊の不意打ちは驚かざるを得ない。
「それにしても、幽霊なんてのがいるんだな」
元の世界では、幽霊がいるかいないか意見が分かれる。だが、この世界では、いやこの階層では確実に幽霊がいると言える。
『ネクロマンサーというのは、ゴーストを作り出すことが出来ます。もしかすると今後遭遇するかもしれないですね』
とナビゲーターさんが教えてくれる。
ある程度動いたため、マップスキルは埋まっている。自ずとゴールが見えたのだ。
「「ギャァァァァァァ!」」
レンの耳に悲鳴が聞こえた。
「誰だろうか?さっきから叫んでるな」
『ミラとステラだと予想します』
あの2人かぁ……と思う。どちらも怖がっていたようだが、その2人で行動しているようだ。
「残すはこの部屋だけだな」
剣を持ちながらレンが入っていない部屋の扉に手をかける。先程、骸骨の魔物に襲われたため剣は迎撃用だ。
バンッと扉を開けてレンが中に踏み込むとパンッと音がなる。
「おめでと〜う!お兄ちゃんが1番乗りだよ!」
クラッカーを持った女の子がお祝いしてくれる。
「お……おう、ありがとう」
驚きつつもレンが答える。
部屋の中は、子供部屋と言って良いような内装で可愛い感じがするものだった。
「あれは……」
部屋にはいくつか立体映像のようなものがあった。
「うん、あれでみんなを見てたんだよ」
エリアス達が映し出されていたので見ていると女の子が椅子を持ってきてくれたので座ることにする。重い椅子を一生懸命持っている姿はなかなか可愛いと思うものだった。
「ありがとう」
「一緒にお姉ちゃん達の様子を見とこう!」
と言いながらレンの膝の上に座る。2人で様子を見るのだった。
「アイリは、アンナを背負って大変そうだな……」
アンナはいつの間にか気絶してしまったようだ。
ミラとステラは、叫びながらも進み続けている。心が折れないことを祈るのみだ。
エリアスとルティアは、骸骨に追いかけられていた。
「頑張れ!」
とレンは映像を見ながら応援する。
それから幾らかの時間が経ち、全員が部屋に辿り着くのだった。
「死ぬかと思った……」
ミラは、戦闘をしたわけではないがボロボロだ。
「死んじゃったら一緒にこの階層で暮らせるよ?」
「じょ、冗談じゃない!」
女の子に言われてミラが焦って答える。
確かにこの階層で死んだらこの階層の仲間入りとなるかもしれない。
「はっ!私は」
とアンナが目を覚ました。
「あ、お姉ちゃん!あんなにあっさりと気絶するなんて」
「あ、いや……すまない!迷惑をかけたなアイリ」
恥ずかしそうにそして、申し訳なさそうにアンナが謝っていた。
「私達は、余裕だったわね」
とルティアが言う。
「お兄ちゃんと見てたけど、泣きそうになりながら走ってたよ」
ピシッ……とルティアの表情にヒビが入る。
「凄い顔してたな。大丈夫だったか?」
レンもそのシーンを見ていたため同情する。
「よくも見たわねぇぇぇぇぇぇぇ!」
ルティアが掴みかかってくるのを何とか受け止めておく。
「本当に怖かった……」
エリアスも疲れたという様子だ。
「みんなゴールしたし、楽しめたから扉を開けてあげる」
女の子がパチンと指を鳴らすと扉が開いた。54階層への扉のようだ。
「また遊びに来てねー!」
女の子が手を振りながら、見送ってくれる。
「もうこの階層は、こりごりだわ……」
ルティアが言いながら扉に向かっていく。
「結構面白かったと思うんだけどな……」
先にゴールしたレンとしてはみんなの意外な一面を知れて楽しかったと思った。女の子に手を振りながら扉に向かった。
「もうこんな階層は勘弁してほしいな……」
「私は、怖くなかったぞ!」
ステラはまだ言ってるよ……と思いつつ進む。
そして54階層に到着するが、53階層であまりにも疲れたためここで帰ることになるのだった。
転移結晶に触れ、いつも通り迷宮の外に向かう。
だが、今回は違った……
「ここは、どこだ?」
広大な渓谷にレンは1人立っていた。エリアス達も誰もいない。マップも出ないし、ナビゲーターさんの声も聞こえない。さすがに驚くレンに声がかかる。
『やぁ、レン。久しぶりだね、君の活躍はいつも楽しんでいるよ』
そこにはイージスが立っていた。
「イージス!ここは一体……」
『ああ、君の精神だけ95階層に呼んだんだよ。もう王都に行ってしまうんだろう?最後に話しておきたくてね』
レンを見下ろしながらイージスが言う。
「なるほど、だからナビゲーターさんもいないのか……」
『あんまり、迷宮の支配者が冒険者に肩入れするのは良くないけど、王都で何かが起こりそうだからね』
レンの傍には、レンが使っている盾が置かれていた。
「それは、俺が持ってるやつ!」
『少しだけ借りるね。うん……良し。守れる範囲を広くしておいたから、役に立つ時が来るかも知れない』
と言いながらレンの方に盾を渡す。
「ありがとう……そんなことまで出来るんだな!」
レンはイージスに感謝を伝える。
『良いさ、その盾は私にも縁があるものだからね。きっと大切なものを守ってくれる。……それに君は私の好敵手になってくれるだろう?無事に100階層に来てほしいからね』
と笑う。
「そうだな、いずれ強くなってここまでやって来るさ。楽しみにしててくれ」
とレンが手を出すとイージスがそれを握る。
『楽しみにしているよ。それじゃあ時間だ。いつか100階層で……』
イージスの声と同時にレンは、地上に着いているのだった。
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