第149話 水中戦と身体
ドボン!
と音を立ててレンが水中に飛び込む。そしてすぐに陸に上がる。
「冷た!」
全身で水に浸かってみると寒いものだ。さすがに我慢しながら泳ぎたくないので水着に付与を行う事にする。
「これは、防御力が結構低いよな……」
普段の装備とは違うため若干の不安を感じる。
「ステータスでどうにかするしかないな……」
とりあえず、再び水に入っていく。
泳ぎが得意というわけでもないレンだが、スキルのおかげで上手く泳げている。
『息切れの心配もありませんね』
とナビゲーターさんの声が響く。酸素変換というスキルはMPを利用して身体に酸素を生成するスキルであるため水面に顔を出して息継ぎする必要もない。
(ああ、それにしても深いな!)
水中を見回しながら呟く。光魔法、フラッシュボールを落としてみるとかなり下まで落ちていった。50メートルはあるだろう。
(地球での人の潜水限界はどれくらいだったか……まぁ今は関係ないか)
この世界には元の世界の常識は通じない。と考えながら下に潜っていく。意外にも魚が泳いでいる。
『魔物ではありませんね。普通の魚です』
(普通の魚もいるのか……)
冷たささえ感じなければ、泳ぐのは気持ちの良いものだった。
(何かめぼしいものは……)
光魔法で照らしながら水中を進んでいるとこちらに向かってくるものを感じた。
『マスター、魔物がこちらに一直線に向かってきます』
(本当だ……水中戦闘か、上手くいくだろうか)
水中での戦闘となると、剣のスピードなどもかなり落ちる。人にとってはなかなか不利なものだ。
『来ましたよ』
いつの間にか周囲にいた魚はいなくなっていた。そしてレンの正面に現れたのはサメとドラゴンが混ざったような魔物だった。
(こわっ!)
と思いながら水面の方に向かって移動する。足から風魔法を放ち加速していくが、魔物もレンを追ってくる。
そのままレンは、水中から飛び出して宙を舞う。
ザバァァァァァァァン!
と音を立てて魔物も水中から飛び出してくるが、場所はレンに有利だ。
「炎の剣!」
剣を取り出して、魔物を真っ二つに斬る。そしてすぐさま絶命した魔物をアイテムボックスに取り込むのだった。
『余裕でしたね、マスター』
「いくら強くなっても魔物の顔の怖さとかはなんともならないな」
宙に浮きながらナビゲーターさんと話す。
再び水中に入り、探索を続ける。
(魔物もいることがわかったのは、大きな収穫だな……)
全員で移動する時は、船なんかどうだろうか?と思っていたが魔物がいるのでは危ないと思う。
泳ぎ回りながらマッピングしていくと大きめの島にたどり着いた。
島には、見覚えのある扉がある。
「ボス部屋だ。この階層でもボス戦があるのか」
『そのようですね。挑戦しますか?』
とナビゲーターさんが聞いてくる。
「いや、戻ろうかな。ここで挑んだらエリアス達にズルイって言われるかも」
1人で攻略を進めて絞られたことがあった。
「この距離ならいけるな。転移!」
レンは、みんなのもとに戻るのだった。
「わぁっ!ビックリした!」
レンが転移でエリアスの前に現れたため驚いていた。
「ああ、ごめんごめん!かなり進んだから戻ってきたんだ」
と謝る。
「というか、レン。なんで水着なのよ」
とルティアが言う。水着と言うものが存在していることに安心感を覚える。
「泳いでたからな」
「レン、腹筋割れてたのね」
とミラがレンの身体を見ながら言う。
そうレンの腹筋は、割れているのだ。この世界に来てからステータスのお陰で体力が上がったので筋トレをしてみたのだ。まだマッチョという程ではないが、良い感じに割れてきていると思う。
「筋トレを頑張ったんだよ」
「元の世界じゃ運動なんて全くしてなかったのにね〜。私も今日から鍛えようかな」
とミラが言い出している。三日坊主にならないことを祈る。
エリアスがボーッとレンを見てきているため、レンも恥ずかしくなってきた。
「ずっと見つめちゃって、エリアスは変態ね!」
とルティアがエリアスに仕掛ける。
「な!な、腹筋なんか見てないから!」
とエリアスが顔を赤くしてルティアに全力で否定している。
エリアスがルティアにからかわれているのを眺めながら、どうこの階層を進むかを考えるのだった。
現在、レンは下は水着で上にはTシャツを着ている。先程エリアスに対して、ボディビルダーのようなポーズで、なんなら触ってみるか?と筋肉をアピールしてみたら赤くなってどこかに走って行ってしまった。
「目に追えない速さね」
とルティアが言っていた。
その後アイリに上を着るように言われたので素直に従うことにした。
「転移しても良いんだが、あんまり面白くないだろう?」
とレンがみんなに聞く。
「そうだな、転移は無しで行こう。自分の目で見るのも大事なことだ」
とアンナが言う。
「でもどうやって移動する?魔物がいたんでしょ?」
復活したエリアスが言う。
「そうだな、だからこんなのはどうだろうか?」
と言いながらレンは水辺に向かって手をかざす。
すると徐々に水が左右に分かれて人が通れるようになっていく。
「なるほど、重力魔法か」
とステラがそれを見ながら言う。
「さあ、行こうか」
とレンが言い進み始めるのだった。
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