第148話 52階層と泳ぐ準備

「片付いたな」


 人数が多かったこともあり、ランドスネークの討伐はとてつもない速さで進んでいった。


「この前のリベンジは果たしたぞぉぉぉ!」


 とミラが腕を空に突き上げている。そんなに悔しかったのか……とレンは心で思う。


「あんなにいるなんてな。1人じゃ通りたくない場所だ」


 ステラは、珍しく弱気な発言だった。さすがの彼女でも大変だったのだろう。



「エリアス……ここ最近、かなり動きが良くなってないかしら?」


 とルティアがエリアスに声をかける。


「え!そうかな〜?何かコツが掴めたのかも」


 と答えている。


 レンとしてもエリアスの変化は、気になった所である。エリアスに、フェンリルの加護と言うものが付いているのは気づいているためその力だと思うが、加護であるため害はないだろうと思って様子見している。


「レンも、気づかなかったの?」


「ああ!動きが良くなってるのは気づいていたさ。ほら、エリアスは誰よりも努力しているからな」


 ルティアに声をかけられるがすぐさま答える。


「凄い成長速度で羨ましいわね」


 と言いながらルティアは、納得したようだ。




『フェンリル……この世界において神獣とされている存在ですね。なぜエリアスに力を与えたかはわかりませんが……』


 とナビゲーターさんが言っている。


 レンとしては、何か起きそうな予感がしたが、起きませんようにと祈るしかないのだった。





「本当に51階層にもボス部屋があるんだな……」


 ボス部屋の前でアンナが呟いている。


「強い相手がいるのか?楽しみだな」


 と言いながらステラが早速扉を開いていく。



「ようこそ、51階層のボス部屋に。私が、この階層の最後の魔物です」


 この前と全く同じ始まりだしでドライアドの声が聞こえる。そして真ん中に座っているのだ。


「本当に喋るんですね!」


 とアイリが言っている。


「ええ、私には自我が………てっ、またお前らかぁぁぁ!なんでここにまた来やがったぁぁぁぁぁ!」


 レン達がいるのに気がついたドライアドが大声を出す。


「あらあら、この前にボコボコにしたドライアドじゃないかしら?」


「本当だぁ、また今回も燃やしてしまおうかな!」


 と言いながら、ルティアとミラの2人が前に出て行く。2人ともかなり強気だ。


「ちくしょう!後ろの男と、狼人族がいるんじゃ絶対に勝てないぃぃぃぃ!」


 キーーー!っとハンカチを噛むかのように葉っぱを噛んでいる。


「ほらほら、どうしたの?かかってきなさいよ!」


「なんならこっちから行くよ〜!」


 ルティアとミラは、ドライアドを挑発していく。調子のいい2人だなと後ろにいるレン達は思いながら見ている。


「ムキーーー!前よりも人が多いし、絶対勝てないじゃない。わかりましたよ、通しますよ。どうぞ通ってください!」


 とドライアドがムキになりながらも後ろの扉を開ける。


「そんなことして良いのかよ……」


 とレンが呟く。


「良いんですー!死にたくないんでぇぇぇ!」


 と叫んでいる。なんかこのドライアド面白いなと思いながらもレン達は、進む事にした。




「二度とくるなよ、こん畜生!」


 とドライアドが捨て台詞を吐く。多分、だいぶ先だろうがセイン達の時に来る事になるかもしれない。


「命拾いしたわね………あっ!


「また会いに来るから覚悟しててね………えっ!」


 とルティアとミラが言うが、その直後に2人は地面に縛られている草に足を取られて転んでしまう。


 しっかりと顔面からのダイブだ。


「「「「痛そうー」」」」


 レン達がそれを見て言う。ドライアドが地面の草を操って転ばせたのだろう。



「あいつ!◯す!◯す!」


「おのれ、ドライアドめ!◯ね!」


 これは、駄目だろうとレンは心の中で思う。王女が使う言葉ではない。ルティアとミラが蛮族に見えてきた。


 ドライアドに報復に出そうだったので、2人を掴んでレンは扉の外に放り投げる。



「あの2人の調子に乗るとこはどうにかしないとかな……」


「面白いとは思うんだけどね」


 レンの呟きにエリアスが答えるのだった。




 52階層……一行は、海の様に感じる場所にポツンと浮かぶ小島に立っている。


「もう一度、51階層に行きたいわね」


「あいつを燃やす」


 ルティアとミラが戦う気満々になっていた。


「お2人とも、そんな言葉遣いをしてたらレンさんに嫌われるかもしれないですよ?」


 とアイリが真面目に指摘する。


「「はい、ごめんなさい」」


 とルティアとミラが大人しくなるのだった。年下の子からの指摘は心にダイレクトに届くようだ。


 ナイスだなとレンは内心思う。




「塩水じゃないから海ではないと思うんだけどな……」


 遥か先を眺めながらレンは呟く。


「では、湖ということか?」


 アンナが水に手をつけながら言う。


「たまには戦うことを忘れて綺麗な景色を見るのも良いもんだ」


 ステラが色々と見回しながら言っている。戦いしか興味がないかと思っていたらそうでもないらしい。





 レンは、現在飛んでいた。魔物がいないか等、調べるためだ。他のメンバーは、小島の方で休憩してもらっている。


 どこまで行っても水しかない様に見える。


「これって、水中に道がある感じじゃないよね?」


『その可能性もあります、マスター。泳いでみますか?』


 とナビゲーターさんが提案する。


「そうだね。でも服を脱がないと濡れるのは嫌だな……」


『了解しました。鍛治スキルを使用しアイテムボックスの中の素材で水着を作成……完了しました』


「速いな……さすがユニークスキルに進化したナビゲーターさんだ」


 あっさりと水着を作ったことに驚き褒める。


『いえいえ!では、私は作り物の続きをしますので、何かあったら声を掛けてください』


「ありがとう」


 ナビゲーターさんには、あるものの作成を頼んでいる。レンも手伝ってはいるがやはりナビゲーターさんの方が器用なのだ。




 飛んでいると周囲にも最初の小島ほどではないが島があるのでそこに降りて素早く着替える。


「泳ぐから……潜水と酸素変換なんてのも便利そうだ!インストール」




 スキルをインストールしてレンは、水中に飛び込むのだった。

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