第131話 面接と人選
「はい、次の方どうぞ!」
とミラが言い、部屋にクラン加入希望者が入ってきた。
「それでは、志望動機をお願いします!」
とエリアスが言い、相手が話していく。
現在、レン達はギルドの一室を借りてクランに加入を希望した冒険者達の面接を行なっていた。
レンは、堂々と真ん中に座り、特に質問するでもなくジッと相手を見ていた。
『暇そうですね、マスター』
ナビゲーターさんの声が頭に響く。
(まぁ、俺よりも女性陣の方が観察力があるからな……)
と答える。女性陣と言ってもレン以外はみんな女子であるが……
レンが何もしてないわけではない。ただ座っているだけでも面接を受ける冒険者達には緊張が走るものだ。
さらにナビゲーターによる鑑定で、相手の情報も読み取れる。ここまでで、すでに何人か犯罪歴が発覚しギルドの職員に連行されたものがいた。
「それでは、志望動機をお願いします」
「は、ははは、はい!俺が志望した理由は……」
エリアスの質問に緊張した様子で話す男の子がいて、何だか元の世界での面接受験の練習を思い出してしまった。
『マスターも、なかなか緊張して片言になってる記憶が見えますね』
(勝手に覗くな、ナビゲーターさん)
ナビゲーターさんは、レンの覚えている記憶も覗けるようでなかなか恥ずかしいのだ。
『まあまあ、私達は、一心同体ですので。どんなマスターも受け入れてますよ!一心同体ですので!』
そんなに一心同体を強調するかなぁ……と思うレンだった。
その後も、様々な受験者がいてなかなか大変な時間が過ぎていった。
「犯罪者を捕まえた報酬を貰ったわよ!」
と嬉しそうにルティアが袋を持って帰ってきた。
お金が好きな王女様……とレンは思いながら受け取っておく。
「本当にお金が好きね。これで聖女見習いって笑うわね!」
とミラがルティアを挑発する。
「何ですって!面接の時だけクールぶって、実際の頭はお花畑じゃない。何が賢者見習いよ!」
とルティアが挑発に乗る。
「なにおぉ!」
「なによぉぉ!」
2人の後ろには化身すら見えそうな勢いだ。
そしてついに2人がぶつかる。結果は、すぐに分かった。ステータスでルティアの方が上であるため、彼女に軍配が上がる。
「いだい、いだい!イダダダダあぁぁぁぁぁぁ」
頬っぺたを摘まれたミラが、ギブギブとなっている。
「ふふふ!私を舐めたバツよ」
と言いながら、ルティアが立ち上がる。
「そういえば、2人は賢者と聖女の見習いだったか……すっかり忘れてたよ」
とレンが言った瞬間に空気が固まる。
「何ですって!」
「とんでもないことを言ったわね!」
2人が今度はレンの方を向いて言う。
「まさか今ので煽りになるのか?」
『マスター、2人が攻撃して来そうですよ』
と言った瞬間に2人の拳がレンに向かってくる。
殴られる……ということもなく、レンはあっさりと2人の拳を受け止める。
「動きが止まって見えるぞ?2人とも」
動きが止まって見える、言ってみたかったセリフだ。
「ムキーーー!」
「グヌヌヌヌヌヌ!」
2人は必死で手を動かそうとするが、相手が悪すぎる。2人仲良く放り投げられるのだった。
気を取り直して、面接をした冒険者や一般の人のことをメモした紙を見る。
ここでアンナとアイリも合流して人数を絞っていく。最後まで来ると、なかなか絞り切るのが難しく迷いも生じてしまうものだ。
「私達にいやらしい視線を向けてきた冒険者は、さっさと切ったわ」
とルティアが怒りながら言う。他の女性陣も頷くのだった。
レンでもわかるほど、邪な視線だったのであんまりだよなと思った。何を期待して面接を受けたのだろうと思ってしまう。
「本当に大勢でしたね!お疲れ様です」
とアイリがみんなに言う。
「ありがとう、2人も外の警備お疲れ様」
「ありがとう、レン。こちらは特に問題は無かったが、時々連行されてた人は何だったんだ?」
とアンナが疑問を口にする。
「ああ、あれはねステータスに犯罪歴があった人だよ」
とエリアスが説明する。
「10人はいたぞ!凄いな」
「そんなに犯罪者いたんだね」
とアンナとアイリは驚いていた。まあ、犯罪はこの世界では意外と多いものだ。食べるものに困って盗む人もいる。それだけでと言っては良くないかもしれないが、ステータスに犯罪が載るのだ。
「逆にレンに色目を使う冒険者もいたわね!」
とルティアが言う。力と財力があることがわかっているため、女性冒険者などにレンはとても人気になりつつあるのだ。どうにか取り入ることが出来ないかと考えた者も少なくない。
「確かに、あからさま過ぎるよ」
「2人の言う通りだね。あれは、度がすぎるよ」
ミラが同意してエリアスが続く。エリアスは、少々お怒りのようだ。これは、後でフォローするとしよう。
『マスターも罪な男ですね』
(何言ってんの)
ナビゲーターさんの言葉にレンは返すのだった。
途中で道に逸れることもありつつ、なんとか6人ほどに絞ることが出来たのだった。
「よし、こんな所で良いかな?」
とレンが言いみんなが頷いたのを確認する。
クラン完成まであともう少しとなっているのだった。
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