第130話 本拠地と名前

「次にやることは、クランの本拠地を探すことだよな」


「それは大事だね」


 とレンとエリアスが言いながら、ギルドの受付に向かう。


「あらあら、お2人さん!2人で住む新居でもお探しですか?」


 とルティアが後ろから言ってくる。結構大きな声だ。


「やはり、あの2人……」


「ちくしょう、強い奴がモテるんだよな」


 と付近にいた冒険者達の声が聞こえる。とんだ誤解だ。殺気も飛ばさないで欲しい。


「ルティア、後で覚えとけよ」


 と言いレンは受付に向かっていく。


「レンをからかうのは、なかなかスリルがあるわね」


 とルティアは言うのだった。この後、お仕置きされることになるのだが……




「おはようございます、レンさん。本日は、お2人の新居をお求めでしょうか?でしたらお勧めがあります」


「そうですね、出来たら広い所が良いですね!んん?今何て言いました?」


「お2人で広い家ですね。お子さんが何人できても困らないお家をご紹介しましょう!」


 隣でエリアスがボンっと赤くなっているのがわかった。エリアスは、そういう話に強くない。とりあえず、エリアスは放置しておこう。話しても動揺が凄そうだ。



「はぁ……からかわないで下さいよ。俺達はクランの拠点を探してるんです」


「そうでしたか!ご予算はどれほどか教えて頂けますでしょうか?」


 すぐに切り替えるあたり、受付嬢だなと思った。引き際を弁えている。


 確かにお金が無ければ始まらないが、レンは結構お金を持っているので自信満々だ。


「これくらいは余裕で!」


 袋に大量に入った金貨を見せながらレンが言うのだった。


「それだけあれば十分ですよ!良い場所を探させていただきます」


 と言い書類をあさり始めた。


 レンをからかうという度胸を見せたこの受付嬢……かなりの大物だなと冒険者達は思うのだった。



「レンは……子供沢山欲しい?」


 とエリアスが顔を赤くしながら聞いてきたのでレンも顔を赤くするのだった。突然のエリアスによる天然地雷を踏むことになった。


 レンもそういう話に弱かったのだ。





 クランの本拠地についても目処がついたので後は、特に問題は無さそうだ。


「クランの名前をつけましょう!」


 と机をバンっと叩きながらミラが提案する。


「それは、確かに重要だな……名前ね。良い名前をつけないとな」


「なかなか難しいと思うよ。名前を決めるために争いが起こることもあるみたい!」


 とエリアスが言う。すでにからかいからは復帰している。


「それ、本当なの?エリアス。名前で荒れるなんてことあるのね」


 とルティアがため息を吐く。


「私はセンスがないからなぁ」


「私もだよ、お姉ちゃん!」


 アンナが呟き、アイリが同意していた。


「それでは、名前は私にお任せしてください。良い名前を付けましょう!」


 と再びミラが机を叩きながら言う。ミラはいつもブレないなとレンは思った。




 結局、ミラから出たのは、アルティメットなんとかや、エターナルなんとかとみんなから却下されるようなものだった。


「なんで伝わらないんダァァァォァ……グフっ」


 ミラが発狂したので、レンが気絶させておく。話が全く進まないのでここで退場してもらう。


「ナイス、レン」


 とルティアがサムズアップするのでレンも良くわからないが返しておく。


「ミラみたいな性格の人がいると荒れやすい傾向にあるみたい」


 とエリアスが言ったので、みんなその通りだなと思うのだった。



「俺達は、ずっとイージスにいるわけじゃないから2人の意見が大事だと思うけど」


 とレンが言う。自分達で決めてしまうのは申し訳ない。


「いやいや、色々とレンにお世話になってるんだ。正直、私達では良い案が浮かばないし、是非とも名前を付けて欲しい気持ちがある」


 とアンナが言い、アイリも頷いていた。レンには返しきれない恩を感じているのだ。クランの拠点のお金もレンが多めに出しているので申し訳なく思った。


「うーん?」


 レンは、アンナとアイリを眺めながら考える。赤色のアンナと青色のアイリ……ヒントになりそうだなと思う。


「そこまで見つめられると、さすがの私も照れてしまうな」


「恥ずかしいですゥゥ」


 レンが見つめているため、アンナとアイリは顔を少し赤く染めながら答える。


「ああ、悪い悪い!」




 そして時間が経ち、


「そうだな……クラン名は————って言うのはどうだろうか!」


 とレンが提案した。



「おお!良いじゃない!」


 と賛成してくれるのだった。



「うーーん?はっ、私は!」


「あ、目を覚ました。もうクラン名は決まったからな!」


 と目覚めたミラに言う。


「ええええ!」


 とミラがショックを受けるのだった。

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