第127話 51階層と数
「これってどうなってるんだ?」
「さっぱりわからない……」
レンとエリアスは絶句していた。突然起きたことに驚いていたのだ。
目の前では、地面から出てきた巨大な蛇のような魔物がレンとエリアスに狙いを定めていた。
時間を少し戻す……
「じゃあ、51階層進んでみようか!」
「楽しみだなあ」
50階層を出る時にイージスは、これからさらに迷宮の難易度が上がっていくからお楽しみに!と言っていた。
レンとしてもそれはとても楽しみなものだ。決して戦闘狂というわけではない……はずだ。
果たしてどんな魔物と出会うだろうか?と期待しながらもレンとエリアスは、迷宮を進んで行った。
美しい花畑が広がる51階層であるため、慎重に歩きたいものだが魔物が出てくればすぐにでも荒らさなければならないだろう。
ゴゴゴゴォォォ……
突然地面が揺れだした。
「地震?エリアス!一応俺の近くに」
レンは、エリアスに注意を出して周囲を見回す。迷宮が揺れるなんてことがあるとは思わなかったのだ。
「何が起きてるの?」
「わからない……まさか、何か出てくるかもな」
地面にはヒビが入り出している。そこから何かしらの気配を感じた。
「少し下がるぞ!」
「キャッ!」
レンがエリアスを掴み、すぐさま後退する。
着地した後、2人はすぐさま剣を抜いて構える。
現れたのは蛇のような魔物だった。そして冒頭に戻る。
一体魔物が現れた位では2人はそこまで驚かないだろう。だが目の前の蛇の魔物は数えるのが億劫だと言わんばかりの数だ。
『あれは、ランドスネークという魔物ですね。地中に生息しており、獲物を襲うために地上に出てきます。地中の移動と数が厄介とされる魔物です』
ナビゲーターさんの説明が入る。
「確かに、嫌になる数だな……」
「油断禁物だね」
エリアスが耳をピンと立てながら答える。
「強化付与!倒しながら押し通るとしようか!」
エリアスに付与をかけながらレンは前を見据える。今にも攻撃を仕掛けてきそうな様子だ。
「ライトニング!」
エリアスも魔法を発動し、攻撃に備える。
「ガァァァァァァァ!」
早速ランドスネークがブレスを吐いてくる。黄緑色の毒でもありそうな物だ。
「氷結!」
レンが氷魔法を放ち、ブレスを凍らせ回避する。
レンは、凍ったブレスをジャンプ台にしてランドスネークに向かって跳躍する。
「炎の剣!」
そのまま魔物の首を斬り裂く。刃は、しっかりと通り首を落とす。1体の強さはそこまでではない。
レンはすぐさま、倒した魔物の死体を踏み台にして次のランドスネークの方に向かう。
エリアスもレンとは反対の方向のランドスネークに向かって飛んでいた。どうしてか、昔を思い出す。
「いつの間にか私はこんなに飛べるようになったんだね……」
かつて全てを失い地に落ちた少女は再び立ち上がり、舞い上がった。
「ありがとう、レン!私はもっと強くなるから」
失った全てを埋めてくれる大切な人に感謝を告げながら、武器を構える。
「雷の剣!」
雷を纏ったエリアスの剣がランドスネークを刺し穿つ。
「装備変更、弓。ライトニングアロー!」
倒した魔物に乗りながらすぐさま弓に切り替えて発射する。
周囲のランドスネークが一斉にこちらを向くのが伝わってきたが、エリアスは冷静さを崩さずに装備を変える。
「装備変更、大剣!そして……ライトニング!」
腕に特に強く魔法を纏う。そして大剣を持っているとは思えないほど軽やかな動きで、向かってくるランドスネークを斬り飛ばしていく。
「ゴァァァァァァァァ!」
一際大きいランドスネークがエリアスの目の前に現れた。鱗がキラリと光っている。
「これは、硬そうだね」
エリアスは、すぐさま大剣に付与されたチャージスキルを発動する。だが魔物もエリアスのチャージが終わるのを待ってくれるほど優しくはない。
「ガァァァァァァァ」
魔物からブレスが吐かれる。
「大丈夫、避けられる!」
しかしエリアスは、チャージを継続したまま、攻撃を回避していく。
「よし、これだけあれば十分!」
チャージしたエリアスは、そのまま魔物まで飛びあがる。そして、首に狙いを定める。
「はぁぁぁぁぁぁ!」
巨大なランドスネークの首をエリアスが大剣で両断していく。
着地したエリアスは、一息ついてレンがいる方向を見る。
「あれは一体!」
レンが行った方向では、様々な魔法が展開されておりランドスネークが吹き飛ばされていた。
ランドスネーク達は、勝てないと悟ったのかすぐさま地中に逃げて行ったのでエリアスは、レンの所に向かって走る。
「結構倒したなぁ」
周りを見回しながらレンが呟く。周囲には、ランドスネークの死体がたくさん落ちている。
「凄い数だね。さすがレン!」
あまりの魔物の死体に驚きつつも、エリアスが声をかけてくれる。
「そんなことないさ!すぐ死体回収して移動しようか」
とレンは少し嬉しそうにしながら提案するのだった。
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