第128話 買取りと予感

 ランドスネーク達は、レンとエリアスを強敵と認識し地中に潜った。地上に出ていれば確実に殺されることがわかるからだ。


「俺達を地面の底から狙ってるな……」


「確かに……殺気を感じる」


 2人は相手の気配を感じ取りながら移動している。レンやエリアスの速度ならば、地中からのランドスネークの餌食になることもない。


「見えない敵って普通の冒険者からしたら厄介だよな」


 機動力がなければあっさりと魔物の餌食だろう。


「そうだね……来たっ!はぁぁぁぁぁぁ!」


 エリアスが瞬時に横に飛んだ直後、その場所にランドスネークが飛び出してくる。


 だが、エリアスが飛び出してきたランドスネークをあっさりと斬り、再び移動する。



 しっかりと戦えてるな……とレンは感心しながら同じように出てきたランドスネークを棍棒で叩き潰す。


 棍棒で叩くのを何度かやっているうちに、なんだかモグラ叩きでもやってるような気分になった。






 レンが倒し過ぎたせいか、ランドスネークは出てこなくなった。周囲には、頭を潰されたランドスネークの死体が大量に横たわっている。


「レンが強すぎるんだよ」


 エリアスが言ってきたので納得することにした。


「そろそろ戻るとするか……ギルドに魔物を持って行ってみよう」


「そうだね!みんなきっと驚くよ!」


 とエリアスは楽しそうだ。







 迷宮を出たレン達は、そのままギルドに向かった。


「ようこそ!依頼の報告でしょうか?」


 受付嬢が言ってくる。


「今回は、買い取りを頼みたいです」


「わかりました。それでは、そこの台にお願いします」


「いえ、申し訳ないですが、広い場所をお願い出来ないでしょうか?倒した魔物が大きいもので」


 そこそこ言ってみたかったセリフを言うことが出来て、レンは内心喜んでいる。


「わかりました!早速、ご案内させていただきます」


 受付嬢の対応は早かった。ギルドに所属する者はレン達が50階層を最初に攻略した者だと知っているのだ。そんな彼らが広い部屋を求めればすぐに用意する。



「そんなにでかい魔物なのかよ?」


「そうなんじゃないか?破黒の英雄とか言われてるらしいからな……嘘じゃないだろう」


 周囲ではそんな会話がされていた。相手がレンであるために余計な口出しは出来ない。




「こちらでよろしいでしょうか?」


 レンとエリアスは広い倉庫のような場所に案内されていた。


「はい、大丈夫です」


 と言いながらレンは、ランドスネークを取り出す。空間魔法については、もう良いか……と思った。


「ヒェッ!なんて大きさ!」


 受付嬢が腰を抜かしそうになっていたが、なんとか堪えることが出来たようだ。足はプルプルと震えているのが見える。


「大丈夫ですか?」


 気絶しないだろうな?と思いつつ声をかける。


「ええ、大丈夫です……査定しますので少々お待ち下さい」


 と言っている。足取りもかなりぎこちない。まだあるとか言うと不味そうなのでやめておくことにする。




 その後、査定も終わり結構な額を受付嬢からレン達は受け取った。周囲の冒険者達の羨ましそうな視線が集まってくるが無視だ。


 さすがにレン達に絡んでいこうと考える者もいない。レンとしてもその展開は飽きているので助かるのだ。



「さすがだな……あれが破黒の英雄か。たった1人でクラン真紅の宝剣を壊滅させたとか…」


「イージスに現れた化け物もあいつが一撃で吹き飛ばしたらしいぜ!」


 と何やら違った噂が聞こえてきた。だいぶ事実と違っていると思う。




「なんだその情報……」


 近くのエリアスにしか聞こえないくらいの声でレンが呟いた。


「それだけ強いと思われてるんだよ!」


 とエリアスは明るい。レンならばそれくらいのこと容易く出来ると信じてやまないのだ。




「おかえりなさい!レン、エリアス」


 宿に帰るとルティアが迎えてくれる。彼女は留守番していたのだ。ミラは自分の部屋にいるのかここにはいない。


「ただいま!」


「留守番してたら宿に炎の双剣って言うクランの人が来たのよ。それで私達を勧誘したいって……」


 とルティアが説明する。


「クランに勧誘か……それはまた急な話だな。なんて答えたんだ?」


「今、リーダーが出かけてるから返事出来ないって答えたらクランの拠点の場所を教えられたわ」


 と言い紙を渡してくる。紙には確かにクランの所在地が書かれていた。


「50階層の攻略が関係してるのか?」


「たぶん、レンの力が欲しいんでしょ。レンがいるだけで、都市最強のクランになれるから!」


 とエリアスが言う。レンを駒にしたいだけのようだ。


「それなら無視したいな。それになんだか厄介なことが起こりそうな気がするし……」


 とレンは思うのだった。


 スティグマが去った迷宮都市でまたもや事件が起きそうな気配が漂い始めるのだった。

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