第123話 奮闘と魔法部隊

 自分の身体が操られ、勝手に動いていることについてはわかっていた。自分自身の意識はあるが何もできなかったのだ。


 姉と慕ってくれるアイリに対しても操られて冷たい態度を取ってしまう。


 数年が経った。

 正直、ずっと何も出来ずに外の様子だけを眺めているのは嫌なものだ。良く精神が保ってるとは思う。


 いつの間にか私は、クランリーダーに祭り上げられていてひたすら迷宮攻略を進めさせられていた。スティグマというらしい敵は私の剣神の加護に目を付けたようだ。50階層まで攻略を進めることになった。


 アイリは、良く私に話しかけようとしてくるが身体が反応できない。きっと私のことを嫌うだろうかと思ってしまう。



 ある日ついに50階層へのボス部屋を見つけた。これを攻略することで、ユニークスキルを手に入れることが出来るらしく、それを利用して悪いことを企んでいるらしい。


「ふふ、いよいよだ。貴様には随分世話になってきたなぁ」


 とメジスが言っていた。私の肩に触れてくるが、触り方にいやらしさを感じた。



 どうしようもないと思っていたが、私達の50階層攻略は失敗したのだ。この間に誰かが攻略してくれと願った。


 そしてそれが叶うことになる。破黒の英雄と呼ばれる男が5人ほどで攻略したとのことだった。その中には、アイリもいたのだ。本当に感謝したが、反対にメジス達が怒り狂っている姿を目にすると何か起きそうで不安を感じた。


 何でも破黒の英雄に交渉という名の脅しをかけることにしたらしく、私もついて来いと言われ行くことになった。



 破黒の英雄……自分とは大して年齢も変わらないように見える男だった。レン・オリガミという変わった名前をしている。


 彼は突然、ファンだと言って私の手を握ってきたのだ。突然で、見ているだけの私は驚いてしまう。変わった奴だと思った。


 しかし、彼の突然の行動が私を救うためのものだったのだと後で知ることになる。





「感謝します、破黒の英雄レン!大切な妹を守ってくれたこと、そして私を救ってくれたことを」


 炎で燃える剣をしっかりと持ちながら、アンナは言葉を発する。自分の思い通りに動かすことができる……ついに洗脳が解かれたのだ。


「無事で良かったよ。急で悪いけど、そっちはお願いしていいか?俺も倒さないといけない敵がいるんだ」


 レンは、マグノリアを見据えながら言う。


「こちらは、任せてください。恩に報いましょう!」


 とアンナが言った瞬間にレンはマグノリアの方に向かって走り出す。


「お姉ちゃん!」


 アイリの声に振り向くと、人工魔人やキメラがこちらに向かって来ている。


「いきますよ。炎剣!」


 アンナは、剣に炎を纏わせて魔人を迎え撃つ。一体、一体を鮮やかな剣技で切り裂いていく。


「凄いなぁ!かっこいい〜」


 ミラが魔法で援護をしながら呟く。


 洗脳されていたとはいえ、50階層まで登った人物だ。メジスらはアンナの力をあてにしてほとんど戦ってないため、経験値を多く得られている。


「完全に無駄な数年とは言い難いかもですね。ですが、私は許しはしませんよ、スティグマ!」


 魔人を真っ二つにしながら、アンナが吠える。





「大丈夫?ルティア」


「大丈夫よ、エリアス。2人で今度は勝とう」


 2人の目の前には、王都で戦ったキメラがいる。いや、王都で戦ったものより屈強でさらに強力そうに見えた。


「ライトニング!」


「ドール!」


 魔法を発動して、戦闘準備をする。


 エリアスがこれまでで最大の加速を見せてキメラに迫る。


「はぁぁぁぁぁぁ!」


 キメラの拳をしっかりと回避しながら武器を持ち替える。


「装備変更、大剣!」


 そのまま力いっぱい武器を振り下ろし首を斬り裂く。そしてすぐさまその場から移動してもう一体を斬り裂く。


 今までで1番身体が動く、エリアスはそう感じていた。マグノリアに立ち向かうレンが見えたので、全力で周りの敵を倒そうと思ったのだ。


「ファイヤードール……まだまだ!」


 ルティアは、火の人形を大量に生み出していく。もう一歩上に進まなければならないと思い魔法を発動させる。


「集まりなさい、ファイヤードール。そして、私を守り敵を焼き払え、ファイヤージャイアント!」


 火の人形が集まり、炎の巨人が誕生する。そして、ルティアの命令通りにキメラを焼き払う。




「やるな!エリアス、ルティア。俺もしっかりしないとな」


 エリアスとルティアの戦闘に少し目を向けながら、レンが呟く。



「人工魔人もキメラもこんなにあっさりと倒されるものなのね………使えないわね!」


 マグノリアは、苛立ちを覚えているようだった。


「人の命を弄ぶお前がいうなぁぁぁぁぁぁ!」


 レンが叫びながら剣を振り下ろす。


 ガキィン!


 と音がなり剣が阻まれる。


「これは、シールド?」


「そうよ。便利でしょ?結界魔法というのもあるのだから」


 レンの剣が阻まれていた。


「なるほどな……炎の剣!」


 剣の付与を強め、結界を溶かしていく。バターのように剣が入っていく。


「本当に厄介ね、あなた。それにあなたの仲間も!」


 とマグノリアは言い壊れた結界から距離を取り、後ろに飛ぶ。


「諦めろ!」


「そうはいかないわ。来なさい、魔法部隊!」


 とマグノリアがいった瞬間にマグノリアの後ろに転移門が現れる。


 そこから出てきたのは、黒いローブを着た集団だ。


「今度は、魔法使いか」


 レンは、それを見ながら呟く。


「私達、魔法部隊で相手をするわ」


 とマグノリアが言うのだった。

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