第80話 試験とエリアス対ケルレン

 ギルドの奥には、ランクアップ試験用の試験場が用意されている。


「レンさんとエリアスさんのどちらから試験を行いますか?」


 と受付嬢が聞いてくる。こっちの世界では名前順で試験というようなことはないようだ。


「じゃあ、私からで良いかな?レンの後にやるのはプレッシャーがすごいからね」


 とエリアスが手をあげる。


「ああ、それで良いよ!別にプレッシャーとか考えなくても良いのに」


 とレンは返す。



 試験官のケルレン、ハルカとレン達3人は試験場に入って行く。


 試験場に入った瞬間、レンはこの場所に魔法がかかっているように感じた。


『ええ、マスターの考えはあっております。この空間は、魔法道具によって作られています』


「へー、空間を作るってのはかなり貴重な魔法道具じゃないのか?」


『その通りです、マスター。Bランクのランクアップ試験から王都で行われるのはこれが理由でしょうね』


「魔法道具も数が限られているからね」


 それにしても便利空間だなと周囲を見回すのだった。



「さて、始めるとしようか?」


 とケルレンが言う。


「はい!お願いします。」


 と言いながらエリアスが空間の真ん中に向かう。


 特に舞台などがあるわけでもなく、場所は殺風景だ。



 ケルレンが武器を構える。本物の剣だ。


「この空間での攻撃は、ダメージにはならないんですか?」


 とハルカに質問する。


「具体的に言うと、この空間の中でのダメージは外には持ち越さないものとなっております。なので思う存分戦えるというものです」


 とハルカが言う。



「どこからでも攻撃して良いぞ!俺が合格と思ったら試験は終了だ。見込みがなかったら不合格になる。全力で来い!」


 とケルレンがエリアスに言う。


「行きます!ライトニング!」


 エリアスが雷を全身に纏う。



「エリアスが雷魔法を使いこなしたのは本当に早かったな……」


 全身に魔法を纏ったのを見ながらレンは呟く。


「本当、すごいわよね!2人でキメラに勝てたのもエリアスがいたおかげよ」


 とルティアが隣で褒める。


「いや、ルティアも強くなってるさ。俺達は、充分ルティアにも助けられてるから」


 とレンは言う。ルティアは、顔を赤くして嬉しそうにしていた。



「それでは、試験を開始してください!」


 正面では、受付嬢の合図でエリアスとケルレンの戦いが始まった。


 細剣を装備したエリアスが先に攻める。


「はぁぁぁぁぁぁ!」


 エリアスが細剣で連続して突きを放つが、ケルレンは、冷静に捌いていく。


 さすがはAランク冒険者だとレンは思った。


「ケルレンさんは、Aランクの中でも上位の方です。試験官に選ばれるのも優秀な実力があるからです」


 と受付嬢が言う。


 冒険者の実力を測るためには、確かにそれだけの実力者が必要だよなとレンは思う。

 ラノベなんかでもギルドマスターがお忍びで試験なんてのもあるくらいだしな……



 エリアスの攻撃をはね返したケルレンが反撃に出る。そのため、エリアスはすぐさま後ろに後退するがケルレンは読んでいたため追撃に移る。


「さあ、どうする?……!!」


 とケルレンは言ったがその直後驚く。


 エリアスの手に持たれていたのは、細剣ではなく弓矢になっていたのだ。


「装備変更、ライトニングアロー!」


 すぐさま雷の矢が放たれる。


「身体強化!」


 ケルレンは、スキルを発動し回避する。


「装備変更の隙があまりになかったな」


 ケルレンが感心したように呟く。





 その後も、いくらか刃を合わせてからケルレンが言った。


「これは、紛れもなく合格だな。Aランクにしたいくらいの実力だ!」


 と言って笑った。


「合格出来て良かった〜」


 とエリアスは、ホッとしたようだ。



「お疲れ様、エリアス!」


「おめでとう!エリアス」


 レンとルティアは、エリアスを労う。


「いや〜、合格出来て本当に良かったよ!緊張したな……」


 と安心している。


 エリアスは、試験とか苦手なタイプなのだろうとレンは思った。レンも元の世界では試験なんかが苦手だった。手汗とか酷かったな……

 何となく学生時代を思い出した。



「記録をしますので少々お待ちください」


 と言い受付嬢が何やら書き始めている。試験のことについて書いているのだろう。



「すごかったぜ、嬢ちゃん。Aランクにしても良いってのはお世辞じゃない。俺の本音だ」


 とケルレンがエリアスに声をかける。


「Aランクにも上がれるように頑張ります!」


 とエリアスも答える。



「次は、レン殿の試験の番ですね。準備を始めましょう」


 とハルカが言ったため、レンは気を引き締めるのだった。いい意味で緊張を感じてきた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る