第79話 試験当日と試験官

 ランクアップ試験を行うことが出来る。ということでレンとエリアスは、当初の目的を思い出した。たしかに事件が解決したので出来るようになるのは当然の流れだろう。


「それじゃあ、数日後とかでも大丈夫ですか?今日はもうボロボロなので休みたいのですが……」


 と言うと


「はい、それでは後日またギルドにいらっしゃってください」


 と受付嬢が答えた。


 帰るとしようかとレンは、エリアスとルティアに声をかける。


 ギルドの食堂では、飲み会が始まっていた。早速、稼いだ金を溶かそうという行動だ。


「貯金しないのは冒険者らしいよな」


 とレンは呟く。




「レン殿にエリアス殿、それにルティア様。帰られるのですか?」


 ギルドを出ようとしたところでハルカが声をかけてくる。


「ええ、今回の戦いで体力的にも精神的にも消耗したので帰って休もうと思います。数日後には、ランクアップ試験もありますので」


「なるほど!レン殿やエリアス殿は、フェレンスに続いて、大変な出来事でしたね。しっかり休んでくださいね」


 と言いギルドから送り出してくれた。



 レン達の姿が見えなくなった後、ハルカは


「そうですか、数日後にはランクアップ試験が……確か私が試験官をすることも可能でしたね。ギルド長に声をかけてみましょう」


 満面の笑みを浮かべて呟くのだった。


 宿に帰り着き、レンはすぐに風呂に入った。身体中を見回すが怪我などもないようだ。


「この世界では、鏡とかはそんなに出回っていないのかな?」


 大浴場に鏡がないことに気づいたレンは疑問を口に出す。後でエリアスやルティアに聞いてみようと思うのだった。



「はぁぁぁ〜疲れが抜けていくな……」


 レンは湯船に浸かりながらリラックスする。


「数日後、ランクアップ試験を受けたらその後はどうしようか……元々試験のために王都に来たのにだいぶ寄り道した気分だな……」


 と呟く。



 試験が終わったら自分は王都に残るのか、それともどこかに旅に出るかなと考えごとをする。フェレンスに続き、王都でもスティグマに遭遇したのだ。スティグマは、当分、否一生勘弁して欲しい所だが……


 やはり修行かな?なんて考えたりする。


 明日、いい修行場所でもないか聞いてみよう!と思いながら大浴場を出るのだった。





 そして、数日が経過しランクアップ試験の日になる。レンが目を覚ますと時間は、明け方のようだった。


「早起きは、気持ちが良いな〜」


 と言いながら外に足を運ぶ。

 戦いボロボロになった服はどうしようかと思っていたら綺麗に直っていたのだ。それにはとても驚いたが、さすがはアプリ管理者がくれた服だと納得しておくしか無い。




 外に出たのはランクアップ試験があるため身体をほぐそうと思ったのだ。ナビゲーターさんは、合格間違いなしと言っているがレンはやるからには最高の状態で行きたいと思ったのだ。


「今日に限っては起きるの早いわね〜、緊張して眠れなかった?」


 まだ眠そうに声をかけてきたのはルティアだ。


「おはよう、ルティア。今日に限っててのは余計だぞ」


 と返事を返すが良く良く考えてみると早起きした試しがあまりないと気がついた。予定があると起きれるというやつだと思った。


 地球ならともかく、こっちの世界で予定とかあまりないしな……冒険者なら大抵好きな時に働けるから良いものだ。


「そういえば、エリアスは起きてるのか?」


「いいえ、寝てると思うわ。ここ最近のことでかなり疲れたでしょうし……」


 たしかに数日前のことを考えるとキツイだろうと思った。ほとんど俺の責任じゃないか?とも思う。


「全く!レンは深く考えすぎなのよ!エリアスが気にしてないって言ったのは本心よ。それに貴方のおかげでエリアスも……私も助かったんだからね」


 レンの内心を察してかルティアが声をかけてくれる。


「そうだな!もうかっこ悪いところは見せられないし、頑張っていくよ」


 と言いながら身体を動かすのだった。



「おはよ〜2人とも早いね。何か話ししてたの?」


「おしゃべりしてただけだよ!さてご飯でも食べにいくか!」


 エリアスも起きてきたので朝食を食べることにするのだった。




 朝食を食べた後、3人は冒険者ギルドに訪れていた。


「ついに試験が受けられるな……」


「そうだね!一生懸命頑張ろう!」


 エリアスも気合十分だ。



「おはようございます。レンさんにエリアスさん。これから試験官の紹介をさせていただきますね!」


 とレンとエリアスに受付嬢が声をかける。


「おう!よろしくな、俺はケルレン。Aランク冒険者だ。今回はエリアス・ミリーの試験を担当させてもらう」


 とガッチリした体格の男が挨拶する。


「よろしくお願いします!」


 エリアスもそれに対し挨拶をする。


「あれ?俺の試験官はいないんですか?」


 ケルレンはエリアスの試験官と言ったため自分の試験を行う人がいないのかと思った。


「いえ、もうすぐ到着するはずです。用事で遅れるとのことでしたが……あ!来られました!」


 誰が試験官なのかと気になってみると、歩いて来るのはレンが明らかに知っている人だった。


「レン・オリガミの試験官を担当させてもらいます。Sランク冒険者ハルカ・ミナヅキです。よろしくお願いします」


 と言いながらハルカは、笑みを浮かべる。


 まさか、ハルカさんが自分の試験官になるなどと予想が出来ずレンはただ驚くのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る