第78話 最後のキメラと残る反省

 残り一体のキメラは、かなり屈強な身体つきをした個体だった。威圧感だけでいえば、黒龍を超えているかもしれない。


「あれは、オークなんかも混じっているのでしょうね……そう簡単には攻撃が通らない」


 そう言いながら、ハルカが頭部を狙撃するもすぐに撃たれた場所が再生していく。


「厄介なのが残ってたね……」


 エリアスも慎重に武器を構える。


「出来るだけ大勢で戦った方が良さそうですね」


 とレンも言う。


 全快の状態ならまだしも今のボロボロな状態では勝ち目がないと考えた。


 他のキメラが討伐されたため、多くの冒険者や王国兵が集まって来ていた。みなボロボロで激戦を物語っている。


「あいつはなかなかヤバいんじゃないか?」


「俺たちじゃ勝てねぇだろ!」


「いや、英雄ハルカもいるし、負けるとは思えねぇな」


 とそれぞれ話している。


「私達は、前の敵に集中しましょう。油断すれば一撃で死ぬと覚悟してください」


 とハルカから指示が飛ぶ。


 レン達は、気をより一層引き締めた。


「レン殿とエリアス殿が前衛、私が中衛で状況に合わせて対応します。ルティア様が後衛での援護をお願いします」



「行くぞエリアス!」


「ええ!」


 レンとエリアスは、武器を構えキメラに向かって疾走する。


「ガァァァァア!」


 と突如キメラがファイヤボールを放ってくる。


「魔法を使った!」


「アクアボール!」


 だがルティアの放った魔法がそれを迎撃する。ルティアの対応の早さにレンは驚くがこの戦いで成長したのだろうと納得する。


「水付与、水の剣!」


 撃ち漏らした分は、レンが剣に水を付与し切っていく。


 目の前まで来たレンとエリアスにキメラは、驚きつつも拳を振り上げて攻撃の態勢になる。


「魔法まで使えるなんてね」


 とエリアスは言いながら回避する。


「スティグマは、本当に厄介なことをしてくれたな……」


 とレンも攻撃を回避しながら応じる。フェレンスにいた頃じゃ普通に負けていたかもしれない。


 そこにハルカとルティアの攻撃が入り、ダメージを与えていく。


 レン達は、ただ足止めを考えて動く。


「錬金!」


 キメラの周りに壁を創造し、身動きが取れないようにする。


 その中にハルカが手榴弾を投げる。直後、爆発が起き、傷ついたキメラが出てくる。


「ゴガァァァァァァァァァ!」


 キメラが突如大きな悲鳴をあげた。


「狂化ですね……注意して行きますよ。あと少し」


 ハルカが言った。


 狂化を使ったということは、キメラの体力は間もなく尽きるということだ。だが、体力が尽きるまでにかなりの被害を与えられることも事実だ。


「ドレイン!」


 少しでも体力を削るため、注意しながら攻撃を続ける。


「「はぁぁぁぁぁぁ!」」


 レンとエリアスの攻撃がキメラの両腕を切断する。


 キメラの腕の再生は、始まらない。狂化も使用したためか修復は追いついていない様だ。


「皆さん、これで決めます」


 4人が一斉にキメラに攻撃を放つ。




 そしてついにキメラが倒れるのだった。


「おお!あの魔物を倒しやがったぞ!さすがは、英雄だ」


「だが、一緒に戦った3人もかなりの使い手じゃないか?」


「はぁ、生きた心地がしなかったぜ……」


 と周りの冒険者が賞賛や無事だった安堵を漏らすのを聞き、終わったのだとレンは実感した。


 街を見回しながら、魔物を倒したが、これからの復興などが大変そうだとも思うのだった。





 ギルドでは、戦いに参加した冒険者に報酬が支払われていた。今回の相手はかなりの相手であり、街中での戦闘だったため、報酬もかなりの額となっていた。


 高額な報酬に喜ぶ冒険者もいれば、仲間を亡くし悲しみを隠しきれていない冒険者もいる。


「厳しい世界だよな……」


 とレンは呟く。エリアスやルティアが死んでもおかしくない戦いだった。


 今回の戦いでは、反省が残る結果となったなとレンは思うのだった。


 エリアスから聞いたが、怒りに任せ暴走した挙句、味方に刃を向けるという行動。自分自身を許せない気持ちになった。



 だが、エリアスは


「でもレンがいたから私は生きてる。ありがとう!」


 といった。



 彼女達を傷つけないように強くなりたいとレンは決意するのだった。


『マスター、あなたの力を使いこなせるように厳しく行きますからね!』


 とナビゲーターさんも言っている。ナビゲーターさんも俺を見つけ出して助けてくれた。彼女のマスターとして恥ずかしくない存在になりたい。




 今後のことを考えていると、受付嬢が声をかけてくる。


「レンさんとエリアスさんのランクアップ試験が行えるようになったそうなのでお知らせに来ました」


 と言われ、


「ん?……ああ!」


「そういえば!」


 2人は、忘れ去ってた王都に来た目的を思い出すのだった。

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