第77話 対レン戦と終幕に向けて
レンは、白い空間に漂っていた。
「またここに来たのか……」
レンはてっきり、白髪の少年が出てくると思っていたが、今回は誰も現れなかった。
「そういえば、俺はどうしてここに……さっきまで戦っていたはず……」
とレンは、考えているとエリアスが殺されそうになっていることを思い出した。
「まずい!エリアスが……」
と言いながら走るが、白い空間は消えることがない。どこまでも続いているようだ。
「俺は、どうしたら……」
『見つけました!マスター』
聞き慣れた相棒の声が聞こえる。だがレンの前にいたのは金髪の美しい女性だった。
「君は誰だ?」
『酷いですね、マスター。相棒を忘れましたか?』
いつも共に過ごした頼りになる存在の声、明らかにナビゲーターさんだ。ナビゲーターさんに姿があることに驚いたが今はそれどころではない。
「ナビゲーターさん……ごめん、俺は……」
『大丈夫です、マスター。すぐに助けます。それにあなたにはエリアスとルティアもいる。2人を信じてください』
「ライトニング!」
エリアスは、魔法を発動しレンに突っ込む。
スピードを上げたエリアスの突き技をレンは、簡単に弾いていく。
「アクアドール、避けてエリアス!」
ルティアが今までにないほど巨大な水人形を作り出す。水人形は、そのままレンを飲み込む。
「これなら攻撃を当てられる。ライトニングアロー!」
水人形に向かってエリアスが雷の矢を放つ。
レンは、感電し膝をついた。
「効いてるわ!」
「ええ、あの変な力も無敵じゃないみたいね」
シャンを相手に圧倒的な力を誇っていたレンであったが、その分身体に大きな負担がかかっていた。力を使いこなせていない分、体力の消費がかなりのものとなるのだ。
「ここで決める。ライトニング!」
再び細剣を握りしめてレンに向かって突っ込む。
「はぁぁぁぁぁぁ!」
お互いにひたすら剣をぶつけ合い一歩も引かない。
雷を纏った細剣がレンの身体に当たり、感電する。
「ぐっぁぁぁ……」
レンに確実に攻撃が効いている。だが、レンも簡単には倒れない。
「ほんと、レンって強いわよね!元に戻したら沢山お礼をしてもらうわよ」
とルティアが魔法を連射しながら言う。
「ええ、絶対に助けるよ!」
とエリアスも続く。お互いにボロボロになりながらの戦いだ。
カキィン
と音がしてエリアスの剣が弾き飛ばされる。レンには、ここで攻撃手段を無くしたと油断が生まれた。
「レンは、それくらいで油断しないよ。目を覚まして、レン!雷の拳」
武器を失ってもエリアスは止まることなく素手でレンの元に駆ける。そしてエリアスの拳がレンに命中し吹き飛ばす。
「ん……はぁはぁ、俺は、戻ったのか……痛ッ」
ついにレンが意識を取り戻すのだった。頬に強力な痛みを感じながら。
「ごめんエリアス……俺は……」
レンは、暗い声で呟く。
「レンは、私を守ってくれた……だから、ありがとう!私こそ何も出来なくてごめんね」
エリアスは、レンを抱きしめながらお礼を言う。彼女は何て優しいのだろうかとレンは思った。
レンの目からは涙が流れ、それをエリアスが拭ってくれた。
「全く、大変だったわよ」
怒ったような表情でルティアが言う。
「ごめんな……迷惑をかけた」
「まぁ元に戻れば結果オーライよ」
とサムズアップする。その顔に恨みなんてものはなく。屈託のない笑顔だった。
さすがルティアだなとレンは思った。
「エリアス、まだ魔物はいる?」
「ええ、まだ何体か残ってるわ」
上空には飛んでいる魔物も見えた。まさか飛行できるキメラまでいるとは。
「ボロボロだけどやるしかないな……」
レンは立ち上がりながら、剣を持つ。
「無理しちゃ駄目だよレン!」
エリアスは、レンを心配するが止まらなかった。
「大丈夫だ。身体もだいぶ楽になった。2人は休んでても大丈夫だよ?」
「そうはいかないよ!」
「私も行くわ!」
と2人もレンについて行く。
レン達が着いた時、そこではハルカが魔物を両断している所だった。
「ハルカさん!」
レンは、声をかける。
「レン殿!ご無事でしたか。かなり服がボロボロになってますが……」
たしかにこの格好はマズイかと思いつつも、レンはハルカの武器に興味を持つ。
「まあ無事です。色々とあって……ハルカさん、その武器は」
ハルカが持っているのは、紛れもなく日本刀であった。
「ええ、私のスキルで作ったものです」
と言いつつ日本刀が消えた。そして今度は銃が握られていた。
「それは、狙撃銃!」
ゲームなどでも出てくる。遠距離の敵に使用する単発式の武器だった。
そして狙撃銃であっさりと空中にいる敵を狙撃した。
「私は、地球の武器を知識があればなんでも作成出来ます」
ととんでもないことを言う。
「そのスキルは凄いですね」
とレンは驚くのだった。
「さて、残りはあの1体のようですね」
とハルカが言う。巨大な魔物がこちらに向かって来る。
王国の混乱も終わりを迎えようとしていた。
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