第81話 試験とレン対ハルカ

 エリアスがBランクに合格し、次はレンが試験を受ける番となる。


「しかし、わざわざ救国の英雄が試験をするってのは珍しいな……いや、今まで無かったことだな」


 エリアスとルティアの近くでケルレンが呟く。


「そうなんですか?では、どうしてハルカさんは試験官に名乗り出たのでしょうか?」


「レンが強いからじゃない?」


 エリアスの疑問にルティアが答える。


「なに!ある坊主はそんなに強いのか?嬢ちゃんよりも?」


 ケルレンが2人に聞く。


「ええレンは強いわよ。エリアスよりも」


 とルティアが自信満々に答える。


「そうだね、レンのおかげで私達も強くなれたし」


「嬢ちゃんより強いのか……それは楽しみだ」


 少し苦笑いを浮かべながらケルレンは、レンとハルカの方を向くのだった。




「みんなからかなり距離を取りますね。ハルカさん」


「ええ、私達が戦えば周りを巻き込みかねないですから」


 柔かにハルカが答える。


 これは、もうただ試験で終わってくれるものじゃないだろう……とレンは思い始めている。フィレンに続き厄介な人に目をつけられたような気がする。確か、フィレンはこの人が戦闘好きとか言ってたような……


『マスター、鑑定を行いましょうか?』


「うーん、ハルカさんにバレないか不安だけどバレたらバレたで仕方ないかな?ナビゲーターさん、お願い!」


『鑑定を発動します』


 ハルカ・ミナヅキ(人間)Lv78

HP6000/6000

MP3500/3500

ATK1020

DEF600

〈スキル〉

異世界言語

 身体強化

 初級魔法

 精神強化

 状態異常耐性

 上級鑑定

 アイテムボックス(有限)

〈ユニークスキル〉

現代武器作成

 上級戦闘適正

〈称号〉

転移者

 救国の英雄

 戦闘狂



「強い……というか、明らかに戦闘狂って……」


 ハルカのステータスはかなり高いものと言っていい。HP、ATKに関してはレンを超えている。さすがは転移者と言える。


 それに称号にも不味いものが乗っている。



「レン殿、もしかして今鑑定を使いましたか?あまり女の子のプライベート(ステータス)を覗くものじゃないですよ?」


 ハルカも上級鑑定を持っており、レンの鑑定がバレたようだ。


『フィレン・アーミラの時と、似たパターンですね』


「ああ、ナビゲーターさんが気づいたやつね」


 あの時は、ギルド長に鑑定されたのをナビゲーターさんが気づいたんだっけか?と考える。



「すみません。さすがに英雄と呼ばれる方のステータスが気になったもので……」


「いえいえ、もし私のステータスを見ることが出来たならかなりの実力ですよ。それではお返しです!」


 レンは、魔法がかけられるような感覚を感知した。


『ユニークスキル、ロックで鑑定を無効化しました』


「おや……レン殿のステータスが見えない?なるほど、レン殿の実力が上または、強力なスキルを持っているのでしょうね?楽しみです」


 ハルカが武器を構えながら言う。


 これは、火をつけてしまったみたいだとレンは、諦めるのだった。




 レンもアイテムボックスから武器を取り出す。黒龍の素材で作られた剣だ。



「それでは、試験を開始してください」


 と受付嬢が言った瞬間にレンから仕掛けた。


「転移!」


 相手は救国の英雄、出し惜しみしている場合ではないと考え時空魔法を使う。


 ハルカの後ろに移動したレンは剣をハルカに向かって叩き込む。



 ガキィン!


 金属と金属がぶつかる音が試験場に響く。


「レン殿の実力を考えてどこから現れて攻撃してもおかしくないとは思ってましたが、まさか本当に空間を飛んでくるとは……」


 刀でレンの攻撃を受け止めながら、ハルカが言う。しかしその表情は笑っている。


 レンは、カウンターを警戒しすぐに後退する。


「俺も、まさかこんなにあっさり、受け止められるとは思ってなかったですよ」


 心の中では取ったと思った部分もあったが、相手はSランクの英雄だ。油断は、命取りも同然になる。


「さて、気を取り直して行きましょうか?」


 と言ってハルカは、銃で撃ってくる。


「身体強化」


 飛んでくる弾丸をレンは、剣で器用に切る。アニメのシーンなんかで憧れてたが実際に自分が出来るようになったことに感動を覚える。


「さて、数を増やしましょう」


 二丁の銃でさらに撃ってくる。


「錬金」


 地面から壁を出現させ弾丸を受ける。だが直後に嫌な予感がしたため、すぐに壁を離れると、壁が爆発した。


「手榴弾か!危ないな」


 レンは、弓を装備してハルカに向かって射る。ハルカは、再び刀を装備して矢を弾く。


 レンは、矢に多めのMPを貯めてハルカのもとに落ちるように射るった。


 矢が着弾した瞬間、ドガァァアン

 と大きな音を立て爆発する。


「これは……変わった弓をお持ちですね」


 とハルカの声が聞こえてくる。砂埃が付いているくらいでダメージというダメージは入っていないようだ。


「ダメージなしか、強いなぁ」


 レンは、剣をもう一本取り出して二刀流になる。そしてハルカに向かって突っ込む。


「はぁぁぁぁぁぁ!」


 2人が打ち合いを始める。


 レンの頬をハルカの刀が掠める。


「もう少し、深く入ると思ったのですがね。レン殿の攻撃は、外れたようですね?」


 とハルカが言う。それは、接近戦では私が強いと言っているような感じがした。


「それはどうでしょうか?俺の攻撃も当たってますよ?」


 とレンが言った瞬間にハルカの腕に火がつく。


「魔法を使ってましたか」


 とハルカは自分の燃えている腕を見ながら驚いた表情をする。


 だがすぐにニコリと笑い。


「さすがレン殿ですね」


 と冷静に返してくるのだった。これは手強いなと思うのだった。

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