第70話 接近する魔物と疑問

「ん……あ?もう朝になってるのか」


 若干、寝足りない気がしながらもレンは起き上がる。昨日は疲れたものだ。


 レンが食堂に降りていくと、すでにエリアスとルティアが、朝食を食べていた。


「おはよう、レン」


「おはよう、モグモグ……起きるのモグ……遅いわねレン」


 エリアスとルティアが挨拶をしてくる。


「おはよう、エリアス。ルティアは、どんだけ食ってんだよ!」


 ルティアの周りにはお皿が大量に置かれていた。こいつ本当に王女なんだよな……とレンの中で疑惑が湧く。


「王女に向かって失礼ね!お腹くらい空くでしょ」


「悪かったよ……」


 本気で怒ってるわけではないだろうが謝罪しておく。


「わかれば良いのよ!」


 と言い食べるのを再開する。前言撤回したくなったが堪える。やっぱり食いすぎだ。



「2人とも昨日の疲れは残ってないか?」


「うん、大丈夫」


「ええ、大丈夫よ」


 昨日はスティグマとの戦闘もあり、疲れているのではないかと思ったが2人とも良く休めたようだ。


「今日はどうするか……一度ギルドに行った方が良いよな?」


「そうだね、尋問の方も進んでるかもしれないし」


 とエリアスが返す。





 そして3人でギルドにやって来た。


「おはようございます。3人とも昨日のことで来たのですか?」


 ギルドに入ると中にはハルカがいて、声をかけてくる。


「おはようございます。ええ、何か進展があったかなと思って来ました」


「それがですね、今のところ全く進展が無いんですよ。さすがはスティグマの暗殺部隊と言った所でしょうか、口をわりません」


 スティグマの尋問は進んでいないようだ。話すくらいなら死を選ぶような連中だ。どんな尋問でも口を割らない気だろうか……


「地下の捜索はどうですか?」


 スティグマが潜伏していた地下には、多くの冒険者が送り込まれることになっていた。


「そちらも詳しいことはわかってないみたいです。地下の地図も存在しない状況では探索は難しいようです」


「それじゃあ、俺達に出来ることはないですね」




 どうしようか……と3人で顔を見合わせているとギルド長のティーラーが声をかけてくる。


「ああ、レン君達じゃないか。やることがないならお願いしたいことがあるんだけど良いだろうか?」


「ええ、大丈夫ですよ」


「それは有難い。実は、また魔物が多く王都に接近していてね、討伐をお願いしたいんだ。受付に行ったらさらに詳しく話してもらえるはずだ」


 そういえば、魔物が多いという話もあったけど最近は聞いてなかったな…と思いつつ2人にどうするか相談する。


「良いと思うよ」


「良いわよ」


 と返事をもらえたため受付に向かう。



 今回の依頼は、王都に接近する魔物を討伐することで、倒した分によって報酬も増えるようだ。出来高制と言ったとこだろう。



 早速レン達は、魔物が多く現れる場所に向かった。


「それにしても、何で魔物が王都に向かってくるんだろうか?」


「人が多いから襲おうとしてるとか?」


「冒険者も大勢いるのにそれは愚かじゃないかしら」


 向かいながら話し合う。モンスターパレードほどでもないにしろ多く感じる。普通に起きる事ではないと思っているのだ。


 スティグマが原因じゃないのだろうかという考えもあったが、それにしては何も起こっていないため違うのだろうと考える。


「ナビゲーターさん、魔物を見つけたら何かわからないか調べてくれない?」


『了解しました。マスター』


 やはり、ナビゲーターさんに頼るのが1番だと思った。俺よりもスキルを使いこなせるし……


『そんなことはありませんよ。マスター』


 と返ってくる。


「レン、このまま真っ直ぐ行けば魔物にぶつかる」


 嗅覚の良いエリアスが教えてくれる。


「ありがとう、このまま進もう」



 少し歩くと、魔物もこちらに気づいたのか向かってくる。


「来たな、エリアスと俺が前に出るから、ルティアは援護を頼む。隙を見て攻撃しても良い」


「わかった」


「任せて」


 3人はそれぞれの武器を構えて戦闘態勢をとる。


 魔物は10体ほど、対するレン達は3人、普通ならば魔物が圧倒的に有利だが関係ない。それだけの力を3人は持っている。


「よし、行くぞ!」


 レンの声とともに戦闘を開始するのだった。




 数分後、レン達は魔物の死体、魔石などの素材を回収していた。


「あっさりと勝てたな」


「うん、余裕だった」


「楽勝ね」


 スティグマとの戦いで成長したのだろう。魔物を楽に倒せるようになった。



 他の魔物を探そうと思った時に、遠くから冒険者の声が聞こえる。


「大変だ!ワイバーンが出たぞー!」


 それを聞きレン達は、すぐにその場所に向かおうとするのだった。

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