第69話 ダミーと勝利
コロコロと切断されたルティアの首が転がる。そしてルティアの首を刈り取ったことでスティグマは勝利を確信した。
「油断したな……運は、私に味方したよう……だぁ?」
だが勝利の優越感はすぐに消え去った。スティグマは、気がついたら火の人形に囲まれていた。
「何で消えないんだよ……この女は殺しただろうが!」
とルティアの死体を見る。
その瞬間、ルティアの死体は、水となって飛び散った。
「アクアドール……見破れなかったようね」
無傷のルティアが立っていた。スティグマが殺したと思っていたのは、偽物だったのだ。
「そんな馬鹿な……うぁぁぁぁ!」
驚くスティグマをよそに、人形達が飛びかかる。
「さすがに火傷で死んじゃうだろうから助けないとね……アクアボール」
大量の水をぶつける。かなりの火傷を負った様子のスティグマが現れる。
「あちゃ〜、やり過ぎたかも。まぁ回復くらいはしてあげるわ」
とルティアは気絶したスティグマに呟くのだった。
「みんな勝てたみたいだな!お疲れ様」
とレンがみんなに声をかける。
「ちょっと、私は1人が相手でも死にかけたんだけど、どうしてくれるのよ?」
若干ルティアは怒っているようだ。
「何かあったら助けに入るつもりだったよ。それに俺達は、ルティアが水の人形をダミーにしてることに気づいてたし」
うんうん、とエリアスやハルカも頷く。3人はわかっていたから手出ししなかったのだ。
「さすがに3人には気づかれるよね……私もまだまだこれから頑張らないとな」
とルティアは、3人の強さを実感する。
「錬金魔法」
と言いレンはスティグマをまとめて拘束する。
「これだけ捕らえられただけかなりの成果ですね。一度、ギルドに運びましょうか」
とハルカが提案する。
「そうですね。これ以上追っても追いつけないかもしれないですし」
と賛成する。相手の方が地下のことを把握しているし、ここでスティグマと戦ったことで時間もかかってしまった。追っても無駄足になりそうだ。
「ギルド長にも協力をお願いするしかないですね」
元来た道を戻りながらハルカが言う。捕まえたスティグマの数も多く、一冒険者では、どうにも出来ない状態なのだ。
地上に上がり、近くにハルカさんの顔見知りの冒険者がいたためスティグマを運ぶのを手伝ってもらう。
「はぁ〜、辛かった」
エリアスは、地下から出られたことで鼻がスッキリしたようだ。
「なるほど……地下にそのようなものがあるとは、誰も見つけられないわけですね。予想ですが見つけたものはスティグマによって殺されたのでしょう」
とティーラーは言う。
この世界で行方不明というのは珍しくない。冒険者という危険な仕事をしているのならもちろん起こり得るのだ。
「レン殿、地下で見つけた資料を出してもらえますか?」
ハルカは、ここで地下で見つけたものを見ようと提案する。
「わかりました」
レンは、地下で見つけた一枚を出す。
「これは……キメラですか。まさかこれを王都の地下で作っていたと」
ティーラーの顔が曇っている。
「スティグマと遭遇して捕まえたけど、まだ潜んでいる可能性もあります。ですが、捜索する人数が足りません」
「ギルドでも冒険者に依頼を出しましょう。地下にスティグマがいたとなるとこれはかなりの危機ですね」
ハルカにティーラーが提案する。
ギルドで依頼が貼られることになって、冒険者が編成されていく。
「そういえば、ルティアは冒険者登録してるのか?」
レンは、疑問に思ったことを聞いてみる。
「そういえば、してなかったわね……出来るかしら?」
「簡単だからやってこよう」
とエリアスが言い2人で受付に向かって行った。
ルティアがギルドカード用の血を取る時、ビビって針をさせないことがありレンとエリアスは笑ったが良く考えれば自分もビビっていたことを思い出した。
時間はすでに夜中となっていた。
「俺達は、宿に帰らないか?疲労も溜まってるだろうし」
「そうだね。臭いもひどかったからお風呂に入りたい」
エリアスは、地下がかなり堪えたみたいだ。
「お腹空いたわね。レン、ご飯を沢山奢りなさい」
ルティアは、相変わらずだ。頑張ったしそれでも良いかと思う。
捕まえたスティグマは、前回のように暗殺者が忍び込むことが無いように厳重に見張り、取り調べが行われるようだ。
地下には、ギルドも冒険者を多く送り込むことだし、とりあえず今日はゆっくり休んでも大丈夫だろうと思うレンだった。
今日の戦いぶりなどを話しながら3人は帰っていくのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます