第67話 暗殺部隊と戦闘
「1人倒したし、残りは7人だ。シャンもいないから油断しなければ大丈夫だ」
とレンは3人に言いながら剣を構える。
「集中しましょう。敵も命がけで来ますよ」
ハルカの言葉を皮切りにスティグマが森から飛び出し、迫ってくる。みな黒ずくめでフードを被っている。
レン、エリアス、ハルカが2人をルティアが1人を相手どる形だ。
「転移」
レンは時空魔法を使いスティグマとの間合いを一瞬にして詰める。
「!!……」
「一瞬で……!」
レンの転移に驚いた隙に1人目の意識を刈り取る。
続けて2人目も気絶させようとしたが回避されてしまった。
スティグマは、森の方に姿を隠し移動を始めた。だが殺気からレンをどこからか狙っているのは明らかだ。
「貴様でも私の姿は追えまい!」
「植物よ……そしてナビゲーターさんにお願いしようかな」
レンは生命魔法で周りの植物に魔力を注ぐ。
スティグマは、動かないレンを見て確実に仕留められると確信していた。
「死ね!」
一撃で決めるためレンの首を狙う。
スティグマのナイフには確かに切った感触があった。だがそれは人の首ではなかった。
「何……?身体が動かない」
スティグマは、身体中を巨大な植物によって捕らえられていた。
「さすがナビゲーターさん、完璧だったよ」
スティグマの頸に拳を落としながらレンはナビゲーターさんを褒める。
『いえ、スティグマより私の反応速度の方が速かっただけです』
生命魔法で植物に魔力を流し、スティグマが飛び出した瞬間に急成長した植物に捕らえさせたのだ。ナビゲーターさんは、スティグマの動きを見切り捕らえた。
「良し片づいた」
レンは、良い実験も出来たなと思いながら敵を見つめる。
ハルカは、スティグマに銃で乱射して自分に近づけないようにしていた。
「連携も慣れてるみたいですね」
落ち着いて状況を見ながらリロードを行う。スティグマも銃という武器に対してはなかなか迂闊に攻めることが出来ないでいた。
スティグマの片方が煙幕弾を投げ、ハルカの周りが煙に包まれる。
「これで何も見えまい」
「その首もらうぞ」
煙の中スティグマの言葉だけが聞こえてくる。
「では、これはどうでしょうか?」
と言った瞬間に閃光が走る。
「ぐっ……目が」
「おのれ……」
相手は動けないと侮り油断していたこともあり、閃光弾をモロに受けてしまう。
「優れた視力が裏目に出ましたね」
スティグマの2人の視力が治る時にはすでに煙もなくなっていた。
ハルカは、別の銃に交換し片方に狙いをつける。
パァン!
乾いた音が1発鳴り、スティグマが崩れ落ちる。
「安心してください。麻酔弾ですので」
「くそっ!だが間合いを詰めれば貴様はすぐには何も出来まい」
飛び道具を使っていることからスティグマは、ハルカに接近し斬りかかろうとする。
「死ねぇー!」
と言った瞬間にスティグマは、自分が宙を舞っていることに気づいた。投げられていると気づいた時には、身体が地面にぶつかった時だった。
「私は、多少ですが体術の心得がありますので。油断して間合いに入ってくれてありがとうございます」
とスティグマの意識を奪いながら言うのだった。
「久しぶりに体術なんて使いましたね」
ハルカはそう呟きながら、自分に体術を教えてくれた人を思い浮かべる。
「覚えていて損は無いと言っていましたが、意外と役に立ちますね。聖女様」
ハルカに体術を教えたのは、聖女だった。聖女なのに魔法ではなく拳で解決しようとする人なのだ。
「大変な訓練でしたね……さて、スティグマを運ぶとしましょうか」
と言ってスティグマを持ち上げるのだった。
エリアスは武器を構えながら、人と戦うのは久しぶりだな……と思うのだった。
大抵の対人戦は、レンがあっさりと片付けてしまうためエリアスが出る出番はない。少しばかり緊張してしまうのは仕方のないことだろう。
だがエリアスには、確信があった。レンに強化してもらった自分が負けるはずがないと。
「さあ、どこからでもかかってこい!」
エリアスは堂々と言い放つ。狼人族のエリアスが言うとかなりの凄みがある。
「死ねっ!獣人がぁ!」
素早い動きで移動しているスティグマからナイフが投げられる。しかし2人から投擲されたナイフをあっさりと弾き返す。
エリアスは、スティグマに動揺が走るのを感じた。
「次はこっちからだ!」
エリアスの剣に雷が纏う。
獣人の俊敏を活かした動きでスティグマに迫り剣を振るう。
「がぁぁぁぁぁぁ!」
感電によりスティグマが悲鳴をあげるが倒すまでは至らない。
「さすがにこれ以上、出力を上げたらまだ私はコントロールできない」
今日、レンにインストールしてもらったばかりのスキルなので完全には使いこなせていないのだ。無理に使えば剣も壊れるだろうし、自爆の可能性もある。
コントロールを意識しながらもスティグマを追い詰めていくのだった。
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