第66話 安否と包囲
「ケホッ……みんな……大丈夫?」
エリアスは起き上がりながら声をかける。
「ええ、私は何ともないわ……」
「私もです」
ルティアとハルカの返事が返ってくる。3人は自分達が無傷だったことに驚きながら安堵する。
エリアスは、レンがいた前の方に目を向ける。
「レン。無事?返事をして!」
「ああ、危なかったけどな……」
すぐに返事が返ってきたため安心する。しかしレンの額からは少し血が出ていた。ルティアがすぐに駆け寄り声を掛ける。
「ちょっと血が出てるじゃない!私に任せなさい」
と言いルティアが治療を始める。
「爆発に巻き込まれたと思ったんだけど違うみたいだね」
エリアスは自分が怪我をしていないことから爆発に巻き込まれていないと思った。
「ああ、ハルカさんを後ろに投げた後にすぐに錬金魔法で壁を造ったんだ。慌ててたからな……爆発で少し飛んだかけらが頭に当たったよ」
「まったく、無茶苦茶ね。はい、治療完了よ」
「ありがとう、ルティア」
ルティアにお礼を言う。
「すみませんレン殿。私の行動が甘かった……」
ハルカがレンに謝る。
「気にしないでください。みんな無事でしたし」
「みんな無事で良かったです」
とホッとした表情をしている。
「まさかこんな方法を取ってくるとは……死にはしないにしても大怪我は間違いないな」
確かにスティグマは、命を捨てるような集団ではあるがここまでとは思っていなかった。舐めていた結果だろうかとレンは思うのだった。
「まずはこの部屋から出ましょう。崩れたら生き埋めになるかもしれませんからね」
レン達は、ハルカの言葉に従ってすぐに部屋から出る。
「大分スティグマに近づいたと思うんだけどな……」
今回の足止めはかなり痛いものとなった。
「ですが、相手も慌てています。きっと何かしらの見落としもあるはずです」
ハルカは無駄ではないという。
「でも相手は、自爆って方法を取ったんだし私達を殺す気よね。また捨て駒とかで何かしてくるんじゃないかしら……?」
ルティアは少し不安そうに言う。
「どうして木が生えてるんだ……」
歩いていた4人が出たのは、森だった。4人は一瞬、外に出てしまったのではないかと思ったが違うと確信している。上に空など無くあるのは天井だからである。
「どうして森なんかを…」
「スティグマは、大分前から地下で何かしら実験をしていたのでしょうね……今回の呪印で明らかになっただけで前から暗躍していたのでしょう」
エリアスの疑問にハルカが答える。
「果物がなってるわよ!」
ルティアがそう言いながら木からりんごのような果物を取る。そして食べようとしているのをレンは慌てて止める。
「毒とかあったらどうするんだ?危険だろう」
「あってもスキルで無効化するわ!それにお腹空いたし」
食いしん坊だなと心で思ったが言葉には出さない。
「解析はした方がいいんじゃない?」
エリアスが提案したため、レンは賛成した。
「どうだろうか……」
『現在、解析を行っています。マスター。…
結果が出ました。人体に害のない普通の果物です。地上の市場などでも販売されているものと一致します』
「安全だって結果が出たよ」
「いただきます!」
結果を伝えた瞬間ルティアが果物にかぶりついた。
王女なんだよな……ルティアは王女……と思いつつ見るレンだった。
「ただ果物を育てただけなんてことはないだろうしな……何か目的はあるのだろうか?」
「スティグマか魔物の食料にするとか?」
「それぐらいしか思いつかないですね」
3人で雑談している時、レンの索敵に反応があった。
「おいおい、いつの間にか囲まれてるぞ…」
レン達4人を囲むように気配が接近している。
「まさか、散らばってから私達を囲むようにしたのですか……」
4人は戦闘準備をする。
「相手は、多分スティグマ暗殺部隊だろうな……手際が良い奴らだ」
武器を構えてレンは周りに伝える。
「良いでしょう。ここで捕まえて、情報を吐かせます。油断は命取りですからね」
ハルカの注意にみんなが頷く。
「数は8か……こっちの倍いるな」
人数的には不利だ。
場所は森だ。暗殺者にとってとても良い相性だ。
一本のナイフがルティア目掛け投擲されるがレンはあっさりと弾く。
「おおっ……凄い反応ね……ありがとう!」
ルティアはレンの反射速度に驚いていた。
レンは、落ちたナイフを拾い森の方に投げる。
「グアァ!」
と声が聞こえ木から落ちるような音がする。レンが投げたナイフがスティグマに命中したようだ。
「やってみれば出来るもんだな……」
レンは、そう呟いて次にどのような方法でスティグマに攻撃するかを考えるのだった。
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