第65話 探索と自爆

 そこにあったのはいくつもの檻とその中に入れられている魔物達だった。


「どうして王都の地下に魔物がいるんだ……?」


「スティグマが持ち込んだと考えるしかないでしょうね。一体、何を行なっていたのかまではわかりませんが……」


 魔物を眺めながらハルカが言う。


 魔物は、ゴブリンを始めさまざまな種類のものがいた。


「ガァァァァァ!」

「グモォォォォ!」


 人が来たことに気づいた魔物は叫びながら檻を壊そうとしている。


「放っておくわけにはいかないですね……」


「ええ、ここで殺しておくのが良いでしょう」


 魔物を放置して行くわけにもいかない。ここで倒すのが最善だろう。


「私がやるわ……」


 ルティアが言った。


「無理はしなくて良いんだぞ?」


「少しでも速く慣れとかないといけないと思う。私にやらせて」


 と言い杖を構える。


「わかった」



「ファイヤボール!」


 多くの火球が檻に向かって飛んでいき、魔物達を燃やし尽くす。


「ルティア様は、魔法が使えたのですか?回復魔法しか使えないと聞いたのですが……」


 不思議そうにハルカがルティアを見る。


「えーと、それは秘密よ!」


 とルティアが言うのを聞きながら誤魔化し方が雑だ……とレンは思うのだった。




「スティグマが地下にいるのは確定でいいでしょうね。先を進みましょう」


 ルティアが魔法を使えることは置いておくことにしたらしい。さらに奥に進むことにした。



 次に見えてきたのは研究所のような場所だった。試験管などが散乱してたり、謎の液体が垂れていたりする。


「1時間くらい前には人がいたかもしれませんね……」


 部屋を見ながらハルカは推測している。飲みかけの飲み物もある。


 机の下に1枚だけ書類が落ちていた。


「これは……複合魔獣?キメラのことかな……」


 魔物のスケッチが載っているが見たことがない魔物だ。なんと表現すれば良いかわからないようなデタラメな姿をしている。




「この魔物知ってる?」


 自分の無知かもしれないと仲間に聞いてみる。


「何その魔物?グロいわね……」


 とルティアは素直に感想を述べる。


「私は、見たことないな」


「私もありませんね……」


 エリアスもハルカも見たことがないようだ。


「スティグマが作ってたとかじゃないよな……」


 怪しげな研究所に、キメラらしきスケッチ、檻の魔物……明らかに関係していると思う。


「それ以外には、何か書類はありませんでしたか?」


「ええ、1枚たりとも見つかりません」


「私達が地下に来たのを察知して情報になるものを片付けたといった所でしょうか。慌てていたため、たった1枚の紙に目が向かなかった……」


 ハルカが意見を出した。


「魔物は諦めて放置したんでしょうか……」


「それはスティグマじゃないとわからないわよ」


 ルティアはお手上げだと言うように手をあげる。



 研究所のような場所を出て再び捜索を再開する。時々、部屋のようになっている場所がある。


「これは魔法か何かで作ったみたいですね」


 部屋を見ながら呟く。錬金魔法があれば部屋なども簡単に作れるだろう。もしかしたら、スティグマは魔法などを使って地下を広げたり改造したりしているかもしれない……


「これ全部見て回るのは大変だよね」


「ああ、さすがにそんな余裕はないな…もっと進もう」


 人の気配も感じないため進むべきだと判断する。





 10分ほど歩いていると行き止まりにたどり着いた。


「ここで終わりなのか?」


「道を戻るしかないわね…」


 と言いながら戻ろうと思った時、エリアスが壁を見ながらあることを言った。


「ねぇ、この壁って周りと比べて色が明るくない?綺麗というか何というか……」


「確かにそうだな……ここだけ新しいというのはおかしいな。この色の壁は今までなかったし」


 レンは壁に触れながら答える。なんか時々聞く展開だと思いながら……



『マスター、この壁は魔法によって造られています』


「魔法で?」


 ナビゲーターさんの説明を聞き驚く。


『はい、この壁は魔力が込められています。造られてそんなに時間は経ってないでしょう』


「みんな待ってくれ。この壁は魔法で造られているみたいだ。それもそこまで時間が経ってない」


「私達を誤魔化すためにでしょうか?」


「多分そうだと思います。これから壁を壊します」



 錬金魔法で自分が作ったものを消すような感覚で魔法を発動させることで壁を破壊した。


 すると、まだ道は続いていた。


「エリアスが気づかなかったらスルーしてたな……」


 と言いながらレンはエリアスの頭を撫でる。


「たまたまだよ」


 エリアスは、赤くなりながら答えた。


 スティグマに近づいているのではないかという気がしてきた。



 道を進んでいると、頑丈そうな扉があり中から音が聞こえた。


「誰かいますね。スティグマでしょうか……」


「反応は1人です」


 扉を開けると、黒いフードの男がいた。きっとスティグマだ。


 部屋の広さは教室くらいだろうか…


「話を聞かせてもらいましょうか?スティグマ!」


 ハルカが男につめ寄ろうとした時、レンは男の手にある物を見て驚いた。


「まずい!ハルカさん」


「この部屋なら軽く吹き飛ぶぞ!私もお前たちも」


 と軽い調子で言いながら。手に持った爆弾らしき物に火をつけた。男の近くには、誘爆しそうなものも多い。罠の様だ。


 レンは、とっさにハルカを掴み後ろに投げた。


 その瞬間、男は不気味な笑顔で言った。


「私を勝利の糧に……」


 男の言葉が終わると同時に部屋が爆発によって吹き飛ぶのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る