第42話 善戦と敗北
封龍の森から転移したレンは、一度ボロボロのフィレンのいる場所に来た。
「ギルド長!すぐに回復します」
レンは、ポーションをフィレンにかけまくる。
「レン……エリアスが死んでしまう」
ポーションをかけていると、フィレンが声を絞り出すようにいう。
レンが黒龍の方向を見るとエリアスはドラゴンに突っ込んでいた。
エリアスにとって守りたいものがあるから逃げ出さないんだとレンは思った。そしてそんな彼女を助けたいとも。
「エリアスは、絶対に死なせません……俺が行きます。転移!」
レンの姿がかき消え、フィレンには黒龍が吹っ飛ばされる所が見えた。
「あなたの存在が唯一の勝機よ。頼んだわレン」
まだ完全に動けない身体を動かしながらフィレンは呟く。
「スティグマと戦っていたら出遅れた……ごめんな、エリアス」
レンはエリアスに声をかける。
「ありがとう……助けてくれて」
とエリアスが言う。やはり来てくれた、鎧の中では頬を涙が伝う。
エリアスは、自分の心臓の動きが早まるのを感じていた。呪われたまま自分の人生は終わるのだと思っていた。でも違ったのだ。自分を助けてくれる人がいる、彼こそが自分の運命の人だと……
黒龍がすぐき起き上がってきた。不意打ちが効いたとはいえ、簡単にやられてはくれない。
「ガァァァァァァァ!」
レンによる不意打ちに驚いたようだ。怒りをあらわにしている。
「鑑定!」
レンはかつて出来なかった鑑定を使用する。
黒龍
HP125000/150000
MP20000/25000
ATK35000
DEF3000
〈スキル〉
黒炎ブレス
飛行
龍の咆哮
魔法微耐性
「強すぎる……」
黒龍のステータスはあまりに高い。
逆によくここまでHPを削ってきたものだ。
ここで黒龍は、何やら放とうとしている。
「ブレスが来るよ!レン」
エリアスが教えてくれる。
ステータスを見た感じ黒炎ブレスのことだろう。今は、街が後ろにあるため逃げた場合街に被害が出るだろう。
「あれを出すか!」
レンはアイテムボックスから盾を取り出す。小屋から持ってきたもので、煌びやかな装飾がなされた大きな盾だ。
「グガァガァァァァァァァ!」
レン達に向かって黒炎ブレスが放たれた。
「障壁展開!」
盾の効果が発揮され、黒炎ブレスを受け止めた。
「すごい!あのブレスを完全に防いでる」
隣でエリアスが息を飲む。
「これは、1日に一回どんな攻撃も受け止めてくれる障壁を出すんだ。だからもう使えない。出来るだけすぐに決めたいな……」
レンは盾をアイテムボックスに収納しながらエリアスに説明する。
「行くぞ!」
黒炎ブレスが止まった直後レンとエリアスは、黒龍に接近する。
「うぉぉぉぉぉぉ!」
雄叫びをあげ剣でひたすらに斬りかかる。
「インストール!」
いくつかのスキルを取る。
「錬金!」
レンは、魔法で剣を作り出す。
二刀流になる。元の世界では、木の棒を持って二刀流なんてやってみたものだが、ただ振り回すことしか出来なかった。しかしスキルを使用することで流れるように無駄の少ない動きが出来るようになった。
使えるスキルを次々と使用して黒龍に攻撃を繰り返す。
「くっ!硬い。ファイヤ、ウィンド!」
攻撃があまり通っていないようだ。黒龍を押し切ることは全くできない。魔法で攻撃するも、魔法微耐性で防がれてしまう。
エリアスには、付与をかけ直す。だが正直エリアスが相手をするには、なかなかきついようだ。レンの付与で付いて行くのに一杯だ。
疲労した瞬間、エリアスが尻尾で叩き飛ばされる。
「エリアス!」
黒龍がブレスを放とうとしている。くらえばエリアスは、一発で死ぬだろう。
「させるか……転移!」
レンは、エリアスの前に移動し、錬金魔法で壁を作る。
ブレスが壁にぶつかるが、レンの魔力に軍配が上がったようだ。だが、黒龍はそのままレンに向かって突っ込んできた。
MPも少なくなっており、すぐさま転移も出来ない。
レンはエリアスを押し飛ばし、スキルを全開で迎え撃つもあっさりと吹き飛ばされ、さらには、尻尾の追撃がレンを襲う。
「ぐぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
弾き飛ばされたレンは、地面に叩き付きられる。なんとか剣を地面に刺して立ち上がる。だが身体からは出血していた。視界が歪むのを感じた。
さらにレンを黒龍が攻撃する。レンは優先して倒すべき敵と認識されたようだ。紙のようにレンが宙を舞う。
「はぁはぁ……レン!」
エリアスが悲痛の声を出す。
「ぐっ、はぁ…はぁ、あ…」
とボロボロになりながら立ち上がるも、荒い息を吐きながらレンは、前に倒れ込む。そしてそのまま意識を失うのだった。
即死回避のお陰で死ぬようなことはなかったが、ほとんど再起不能の状態になる。
そして、レンが倒れたことはかなりまずい状況である。
「レン!」
エリアスはレンに駆け寄る。倒れたレンを抱き起すもその目は閉じたままだ。
「遅くなってすまん!ここはワシらが食い止める」
ガレスらAランクパーティが黒龍に向かっていく。ようやく駆けつけることができたようだ。
「若造にばかり任せて何がAランクだ。ワシは、戦うぞ」
ガレスは吠えた。
「あんたならそう言うと思ったわよ」
ナティアが続く。
正直、戦闘は避けたい所だが、戦うレン達に心を打たれ参戦した。
「私が回復します!」
と言ってカーラがレンに魔法をかけていく。
エリアスは、声を出すわけにはいかないため頷く。
レンは、深い海に落ちていくような感覚にとらわれていた。
「ここはどこだ?黒龍には、全く歯が立たなかったな…」
さっきまで戦っていた存在を思い出す。
「ナビゲーターさん、いる?」
声をかけるが返事はない。
いつもマスター!と声をかけてくれる相棒の声が聞けず、心細い感覚に襲われる。
だがそんな気持ちもコツコツと歩いてくる足音で吹き飛ぶ。
「誰だ?」
レンは声をかける。
「久しぶりだね、レン。僕のことは忘れてしまったかな?」
と言って白い髪の青年は、微笑むのだった。
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