第34話 失敗と解呪への道

 ゴブリンの討伐を終えたレン達は、洞窟を出て少し歩いた場所に川を見つけ昼食を食べていた。


「依頼が速く終わってのんびりご飯を食べられるのは良いもんだな」


 のんびりとした調子でレンは言う。気分はピクニックである。外でご飯を食べると何故だかいつも以上に美味く感じる。


「たしかに、普通は倒すのにもっと時間かかるよ」


 とエリアスが言った。


 本来レン達と同じランクのものが、同様のクエストを受けた場合には、もっと時間がかかるし、ゴブリンキングが出たというイレギュラーが発生した場合、死者すら出ただろう。


 このようなことから、2人の、特にレンの実力がうかがえる。



 ご飯を食べた所でレンは、エリアスの呪いを解けないか試してみようと思った。


「エリアス、これから俺のユニークスキルで呪いをどうにか出来ないか試してみる。ただし俺の能力については黙っていてくれよ?」


 一応釘を刺しておく。ステータスを一度見せたが、内容はエリアスにとって驚くものが多すぎる。


「わかった」


 エリアスは、すぐさま納得してくれた。素直でありがたい。


「アンインストール!」


 エリアスの呪印に対して発動してみるが、消えた様子がない。


『他人のステータスには、現在介入出来ません。介入のためのスキルが必要となります、マスター』


 ナビゲーターさんの解説を聞く。


 ステータスへの介入はできないようだ。そう易々とエリアスを救うことはできないのだろう。悔しさに顔を歪める。


「ごめん、エリアス。俺の今のスキルじゃ駄目みたいだ」


「気にしないで、話すことが出来る人がいるだけで私は救われているから」


 本人はそう言っているが、話したい人がたくさんいるだろう。レンは、絶対に諦めたくないなと思った。


「約束する。絶対に治してみせるから」


 いつも以上に真剣な顔つきでレンはエリアスに宣言する。




 エリアスは、呪いにより家族を失っている。家族がいなくて話せる人がいないというのはとても悲しいものだ。



 ここでレンは、ふと家族のことを考えた。


 レンの両親は、レンが小学生の頃、交通事故で亡くなったのだ。それは、レンにとてつもない衝撃を与えた。


 そこからレンは、母の妹に育てられた。母の妹は、俺のことを実の息子のように大切に育ててくれた。悪いことは悪いと叱ってくれた。俺はいつの間にか「母さん」と呼んでいた。


 元の世界に残した後悔があるとすれば、母のことだけだろう。あの人のことだ、懸命に探す。この世界に来て見て見ぬふりをしてきたが、俺は酷い息子なのだろうと思った。


 逆に、母のことを除けばそれ以外はどうでも良い世界だった。幼稚園、小学校といじめられたり、特に変わり映えなかったり、中学、高校もロクなことがなかった。一部話が会う人もいたのも事実だが……この世界に来たことは本当に感謝している。



 過去のことを振り返っていると声がかかる。


「どうしたの?ボーっとして」


 エリアスが言った。


 ハッとしながら


「考えごとをしてたよ」


 と答える。



 少しのんびりして街に帰ることにする。結局エリアスの呪いを解くことはできなかったため1から考えなければならない。


 街には図書館もあるし行ってみるかと考えるレンだった。呪いについての記述があるかもしれない。



 特に何事もなく2人は街にたどり着いた。


 今回遭遇したゴブリンキングのことについてギルドで報告を行った。


「まさかゴブリンキングが出てくるとは……ギルド長にも報告しておきます」


 とアリーは言っていた。ゴブリンキングの死体を提出したし、レンへの信頼は厚いため信じてくれる。


 今回は、特に引き止められるようなことはなく帰ることができた。


 ギルドでエリアスと別れたレンは図書館に向かう。かなり大きい図書館だ。


 呪いに関する本を探しているなんて司書に言ったら怪しまれそうなので自分で探すことにした。


 探している途中、レンは面白いものを見つけた。


「あれ?歴史的書物のところの本に見覚えが……」


 どう見てもライトノベルだ。歴史の本が並んでいる中にラノベがあるのはなかなか面白い光景だ。


 前の世界でレンも読んでいたラノベだ。これは、かつて召喚された勇者が持っていたものらしい。


「まさかこっちの世界でもラノベを見ることができるとはな」


 自室に置いてあるラノベが恋しくなってきた。


「おっと、いけない。探し物を続けよう」


 本来の目的のため再び探し始める。それから何冊かの本を見つけることができた。


 少しでも情報が無いだろうか?とレンは本を読み進めていくのだった。

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