第33話 2人での依頼と不穏な予感

 レンとエリアスは何の依頼を受けようか、掲示板の前で考えていた。


 だが実際は、エリアスは人前で話すことは避けたいので、相談をしたりしているわけではないが……


「よし!これにしよう」


 レンが選んだのは、ゴブリンの討伐。


 早速依頼を受け街を出た。

 最近、街の近くの洞窟にゴブリンが住み着いているとのことだ。この前は、スティグマが召喚していたがその残りかもしれない。


 洞窟の近くまで来て、周りに人がいないことを確認し、エリアスと会話する。


「ギルドではみんな不思議そうにあなたを見てたよ」


「えっ!俺なんかした?」


 レンはあまり周りの目を気にしてなかった。鈍感ともいうのだろう。


「全く喋らない私と行動してるのが不思議だったんでしょうね。どうして最近有名な冒険者が謎の鎧着たやつとなんて……」


 と言いながらエリアスは兜を取る。


「みんなわかってないな。こんなに可愛いエリアスと唯一話せる俺は、とてもラッキーだということを」


 と笑いながら言った。


 エリアスの耳がピコピコ動いていた。嬉しかったようだ。可愛い。




 気をとりなおし、洞窟の様子を伺う。中はそれなりに深そうで、ゴブリンがいるのかは、よくわからない。


「索敵」


 スキルを使ったところ15体ほどの反応があった。


「15体の反応があった」


 とエリアスに伝える。


「思ったより多いね」


 と返ってくる。


「いけそうか?」


 とレンは聞く。最悪レン1人でも戦うつもりだ。


「ええ!大丈夫」


 とエリアスは言う。彼女も実践慣れしている様だ。


 レンは、パーティで戦うのだから連携が大事だなと思い作戦を考えることにした。


 エリアスを前衛とし、レンが後ろから魔法でサポートする形にした。作戦と呼べるほどのものではないが……


 洞窟の中を進んでいると後ろの方にゴブリンが現れた。だが、レンはそれを魔法であっさりと倒してみせる。


 ゴブリンは、地中に穴を掘り突然の奇襲を仕掛ける。初心者の冒険者ならばこのパターンでゴブリンにやられていたかもしれない。レンは、もしかしたら起きるかもと予想していたため余裕で対応できた。


「レンは、剣も魔法も使えるんだね。すごいな〜」


 とエリアスが言ってくる。


 この世界では、武器と魔法どちらもバランス良く使える人は珍しいようだ。


「エリアスは、大剣に特化してるね」


 前にステータスを見たため知っていた。


「そうなの。洞窟の時とかは、使いづらい」


 現在エリアスは、普通の剣を持っていた。洞窟で大剣を使うのは愚策だ。


 洞窟の奥の方では、ゴブリンがバリケードを作って待ち構えていた。そしてゴブリンの中に1体だけ他のゴブリンとは姿が違うものがいた。


「あれはゴブリンキング!でもまだ成り立て。これなら大丈夫そう」


 とエリアスが言う。普通のゴブリンキングでもレンは倒せるので安心なのだが。


 前に倒した奴よりサイズは小さい。


 レンは、バリケードが邪魔だと思い、アイテムボックスから弓を取り出し魔力を込めて撃つ。


 レンが撃った矢はバリケードを吹き飛ばした。


「エリアスは、ゴブリンを倒してくれ。俺はキングを倒す」


 とレンは言って剣を装備する。


 キングを前に堂々と立つ


「久しぶりだな。ゴブリンキング……」


 前に会ったゴブリンキングではないが、あの時は自分の力を全て出しようやく勝てた存在だ。


 対するゴブリンキングは、レンの堂々とした態度に驚いていた。


「さて、戦おうか?」


 レンは、ゴブリンと戦うエリアスに気を向けつつ武器を構える。


 エリアスは、ゴブリンと難なく戦っていた。


 レンは、ゴブリンキングの棍棒による攻撃を剣で弾き返す。


「やっぱりマジックアイテムじゃないな」


 初めて戦ったゴブリンキングはマジックアイテムの棍棒を使っていたが今戦っているゴブリンキングは、ただの棍棒のようだ。


「あの時みたいには苦戦しないな、あのキングが特別だったんだよな」


 もうゴブリンキングに用はないなと思った。


「さあて、いくぞ!」


 威圧を強めに使ったため、ゴブリンキングは逃げようとした。


「逃がさない!」


 あっさりとゴブリンキングに追いつき真っ二つに切る。


「こっちも終わったよ」


 とエリアスが言ってくる。


「お疲れ様」


 とエリアスを労う。


「それにしてもゴブリンの数が多かったし、まさかキングまでいるとは…」


 依頼の内容と違いがあったことに疑問を覚えた。


 スティグマ絡みだったら面倒だなと思いながら帰ろうとするレンだった。

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