第32話 壮絶な過去と運命
これは、とある少女の物語…
少女は、狼人族に生まれたただ普通の女の子だ。家族に可愛がられて大事に育てられてきた。
ある日、少女は猫人族に出会う。たまたま村にやってきた大人と一緒についてきたアリーという自分と変わらない歳の女の子だ。2人はすぐに意気投合して友達になった。アリーが彼女の村に戻ることになり、会いに行きたいと思った。だが残念なことに猫人族の村は遠くにあるため、子供である少女にはたどり着けない。
せっかくできた友達とのお別れを悲しんだ少女であったが、アリーは提案をした。
「なら手紙を送り合いましょう!」
とても嬉しい提案だった。
2人は、それから何年も手紙でのやり取りを続けた。いつか街の方にも行ってみたいというやり取りも行なっていた。
ある日少女に嬉しい知らせが来た。なんとアリーがギルドの職員に合格したのだ。
ギルドの職員はなかなか倍率が高いのだ。そう簡単に受かるものではない。
アリーにお祝いの返事を書き、私も早く街に行ってみたいなと思っていた時に、狼人族の村に悲劇が起こる。
村の人たちが突然体調を崩し始めたのだ。もともと狼人族は身体が頑丈なため病気などは、ほとんどかからない。
ついには死者が出てくるようになった。村の人たちは、どこか別の場所に移動しようと考え出した。
少女は、アリーへの手紙を書いている時だった。全身に何かわからないものが入り込んでくる嫌な感覚を感じた。かなりの痛みを伴い少女はもがく。椅子から転がり落ちて床に倒れる。
「たす……け……て。ああ……あ」
すると扉を開け父が入って来た。
「大丈夫か?すぐ医者に連れて行ってやるからな」
と私を抱き上げようとする。
「お父……さん」
と呟いた。
だが父の手が少女に届くことはなかった。父はそのまま少女の近くに倒れ、動かなくなった。
少女は衝撃を受けた。必死な声で父を呼ぶ。
「お父さん!お父さん!起きてよぉ!」
と言っていたところ、今度は母がやってきた。
「そんなに声を出してどうしたの……あなた?一体どういうこと!?」
母も慌ててしまっている。
「お父さんが突然倒れちゃったの……」
少女は涙ながらに言った。
だが言葉は返って来ない。
母も倒れてしまっていた。
少女は、ただ助けを求め外に向かった。驚いたことに外では多くの家から火があがっているのだ。
そして気づく、黒いフードの集団に…
そして集団は、少女の元に辿り着き言った。
『どうだ?大切な人を自らの手、いや言葉で殺した気分は?』
「えっ…」
少女は、何を言っているのかわからなかった。
『呪いを受けし者よ、我らが楽にしてやろう』
いつの間にか集団は小刀を構えていた。ただ少女は自分が死ぬのだということを感じた。
目を閉じ終わりを待つがその時はまだ訪れない。いい加減に終わらせてほしいと思い目を開けた時、少女の前に魔法使いらしき女性が立っていた。
「間に合わなかったわね……」
女性は、悲しそうに呟く。
綺麗な黒髪の若い女性だ。
そして集団をたった1人で倒した。
不気味なことに集団はみな、最後に
「私を勝利の糧に」
と言っていた。
「1人に逃げられた……大丈夫かしら?」
と女性が話しかけてくる。
「うん……」
と言って、しまった!と思った。
私の声は人を殺すと言われたのに…
だが少女の心配は杞憂だった。
「大丈夫!私には呪いは効かないから」
一旦ここを離れようと、女性が言ったのでついて行くことにする。
「行く場所がないなら一緒に暮らさないかしら?」
と言ってくれた。
そして女性の隠れ家での少女の生活が始まった。話すことで人を殺してしまうため出来るだけ多くの文字を全て覚えなければならない。
「そういえば自己紹介してなかったわね。私の名前は………よ」
と女性は名乗った。
「私は、エリアス。エリアス・ミリーです」
こうして少女ことエリアスは、必死に勉強した。文字を覚え、エリアスは街に行きたいと伝えた。
「そうね、でもあなたの呪いは話すだけじゃなくて触るのも駄目だから全身を隠さないといけないわ」
と言われた。
そしてエリアスはフルプレートを装備することにした。運動もしてたため、身体能力に自信があり鎧を着ても動けた。
そして旅立つ日、エリアスは抱きしめられこう言われた。
「いつかきっとあなたの呪いを打ち消してくれる人が現れるわ。それまでどうか頑張って…わたしの勘は当たるのよ」
と言ってくれた。
こうしてエリアスは街に旅立った。
街でアリーと再会し、自分のことを文字を書き説明した。アリーは、涙を流しながら説明を聞いた。
それからは、冒険者となり戦った。魔物、そして己の心と……
だが辛い日々が続き限界がきてしまった。気づけば自分の黒髪も真っ白になっており衝撃を受けたものだ。普通に考えたらここまで良くもったと思う。あとどれだけ自分の気持ちが持つだろうかという時だった。
そんな時、遂にエリアスは出会う。彼女の呪いを打ち消してくれる存在と。
運命の人レン・オリガミと……
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