第28話 ゴブリン討伐と人の死
レンが出て行った後のギルド長の部屋には、アリーが来ていた。
「お疲れ様です。ギルド長、レンさんは先程依頼を受けていかれました」
「ありがとう。アリー」
「レンさんはどうでしたか?」
アリーは今回ギルド長にレンを呼ぶように言われていたため何を話していたのか気になったのだ。
「そうね、彼が悪い人ではないのは確かよ」
「そうですか……よかったです!」
冒険者登録を行った立場として気になっていたのだ。悪い人に思えなかったので良かった、と思った。
「そして彼はかなり強いわね。いえ、強くなると言った方がいいかしら……彼は、無意識でかはわからないけど威圧を込めて言葉を話してたわ。この私を一瞬でも恐れさせるような」
ギルド長であるフィレンは、この世界でもレベルは上位に入る。その自分がレンに恐れの感情を持たされたのだ。
「レンさんが救国の英雄に匹敵するのですか?」
アリーもギルド長の話を聞き有望な新人とは思っていたがまさかそこまでとはと思った。
「ええ、彼は救国の英雄ナンバーワンすら越えるかもしれないわ。予想だけど」
「ええっ!そこまでいきますか」
救国の英雄ナンバーワンといえば、この国最強の男だ。彼がそうなるとはなかなか想像がつかない。
「彼の周りではこれから色々なことが起きそうね……」
と最後にフィレンは呟くのだった。
時は少し遡りギルド長の部屋から出たレンは、最初に受けようと思っていたゴブリンの討伐依頼をアリーに提出し、受理してもらっていた。
「では5体討伐です。気をつけて行ってきてください」
「ありがとうございます!行ってきます」
そう言ってギルドを出たのだった。
街の門から出て草原に向かう。依頼書によるとゴブリンが森の方から草原に出てくることがあり、危険だと言うことだ。
「ここら辺に出てくることがあるらしいな……索敵!」
さっさと見つけて倒そうとスキルを使用する。
すると反応があった。数は10。聞いてたより数が多い。
『マスター、急いだ方がいいかもしれません。10体は、多い気がします』
「わかった」
レンはすぐに反応があった場所に向かった。
反応があった場所が見えてきてレンはスピードをさらにあげる。スキルのおかげでとてつもない速さで走れる。
「馬車が襲われてる。あれは、ゴブリンアーチャーとゴブリンマジシャンもいるな…」
レンが目にしたのは馬車がゴブリンに囲まれている状態だった。ナビゲーターさんの予感はこれだった様だ。
護衛だと思われる冒険者がゴブリン達と懸命に戦っていた。
さっき索敵した時は10体ほどだったのに数が増えているように思える。
「これは分が悪いな。すぐに手助けしないと」
レンは弓を取り出し連射する。矢はしっかりとゴブリンの頭部に命中し、命を刈り取る。
「30体はいないか?……援護するぞ!」
と護衛の冒険者に声をかける。
「助かる!」
と声が返ってきた。護衛はたった1人でも加わるだけありがたいと感じたようだ。
そこからレンの介入もあり冒険者と協力しながらゴブリンを押し返していく。
だが、ゴブリンが減っている感じがしない。木々の合間から次々と飛び出してくる。
「さすがにこの数はおかしくないか…」
巣でもあるような規模だ。
『マスター、木の陰に何者かが隠れています』
「なに!」
ナビゲーターさんの言葉を聞き、見回す。
木の陰でフードを被った男が魔法を唱えてる様子が見えた。
「いでよゴブリン!」
とフードの男が言うと5体ゴブリンが出てくる。アーチャーとマジシャンも混じっている。
「なるほど、ああやって馬車を襲ってたのか」
召喚しているのならあの男から倒さないといけない。
「転移!」
「な!貴様は…どこから」
転移を使用し、フードの男の近くにレンは現れる。
マジックアイテムの棍棒を取り出し5体をあっさりと吹っ飛ばして、倒す。まとまって召喚されたばかりなので楽だった。
ここでフードの男が変な動きを見せる。
「おい、お前……待て!」
「くそっ!ここまでか……私を勝利の糧に……」
と言って男は剣を胸元に突き刺していた。突然のことで止めるのが間に合わなかった。
「まさか……自害したのか……」
目の前で人が死んだことにレンは恐怖を覚えた。自分の呼吸が荒くなっていくのを感じる。人が死んだ……吐き気が込み上げてくる。
「はぁ、はぁ……はぁ……」
『マスター、気をしっかり持ってください!精神強化をインストールします』
インストールが完了した瞬間、少し気持ちが楽になった。恐怖心が和らいだようだ。
「ふぅ……ありがとう。ナビゲーターさん」
魔物なら余裕で殺してきたというのに人が死ぬというのは慣れない。すぐに対応してくれたナビゲーターさんに感謝する。
「おーい!大丈夫か?」
自分の呼吸を整えていると後ろの方から声がかけられた。護衛の1人だろう。
「俺は大丈夫なのですが……敵に自害されてしまいました」
「なるほど……とりあえずここを離れよう。匂いでほかの魔物が来るかもしれないから」
「わかりました」
と返す。
魔物は匂いに敏感なのだ。特に血の匂いに。
馬車の方に行くと商人風の男が声をかけてきた。
「私は、ゴリスという。助けてくれてありがとう」
「気にしないでください。もともと依頼でゴブリンを倒しに来たんで」
「これは少ないが受け取ってくれ!」
と言いゴリスは小さな袋をレンは渡してきた。
レンはありがたく受け取ることにした。人の死を見た後ではなかなか喜べないものではあるが……
馬車に乗せてもらいゴブリンのいた場所から移動した。
「ここまで来れば大丈夫だろう」
護衛の冒険者が言った。
「まさかあんなに大量のゴブリンに襲われるとはな……」
とゴリスが呟いた。
「フードを被った男が召喚を行なっていました」
と俺は言う。
「一体何が目的だったんだ……」
と言った言葉は誰にも答えられないのであった。
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