第29話 スティグマとランクアップ

「そういえば自己紹介がまだだったな。俺の名前はレイドだ。さっきは助かった」


 レイドが挨拶をしてくる。


「私は、マーティよ。よろしく!」


 もう1人の冒険者が挨拶する。


「俺は、レンです。よろしくお願いします!」


 お互いに挨拶をし握手交わす。こちらの世界では握手はよく行われる。映画なんかの握手シーンはなんとなく憧れたものだ。


「レンのさっきの戦いを見るにかなり強いな!ランクはどれくらいなんだ?」


 とレイドが聞いてくる。


「ランクはEですよ。数日前に冒険者になったばかりなので」


 と答えると2人はかなり驚いたようだ。


「Eランクってあんなに簡単にゴブリンを倒したっけ?」


 とマーティが困惑しているようだ。


「世の中、ランクじゃないってことだな……こんな実力者がいるとは」


 とレイドは感心する。ランクだけでは判断しないレイドに好感を抱く。


「ですが……俺は、フードの男が死んだ時は恐怖に駆られてしまいました……」


 戦いの中で恐怖に駆られ動きを止めるのは致命的だと感じた。実力はあってもそんなことが足りないと思う戦いだった。


「確かに人が死ぬのは、未だに辛いものだ。最近俺はCランクになったが慣れない」


 レイドも死は怖いようだ。


「そうね!死に慣れるのも良くないと思うわ」


 マーティが言ったことは確かに大事だと感じた。これからも意識していきたいと思う。


 レンとレイドは揃って頷く。


 話していたらもう門が見えていた。ちなみにここはレンが初めてこの街に来た時の門とは真反対だ。



 ゴリスとレイドたちは現在依頼の終了の話をしていた。それが終わり2人がレンの方に来る。


「ギルドに今回のことを話したいからレンも一緒に来てくれるか?一緒に説明をしてもらいたい」


「わかりました。ちょうど自分も依頼の報告があるので」




 そして3人はギルドにやってきた。


「お帰りなさい、レンさん。そちらのお2人はどうされたのですか?」


 とアリーが聞いてきた。


「ゴブリンの討伐中に会ったんだが……色々あってね」


 とレンは言う。



 内容をアリーに簡単に説明をしたところ……


「この話は、私の手には追えませんのでギルド長に相談したいと思います。少々お待ちください」




 そしてアリーがギルド長フィレンに報告に行き数分後、レン達はギルド長の部屋にいた。


 朝も来たばかりだってのにと思いながらレンは椅子に座る。


「さて、アリーからも大まかに話は聞いたけど、もう一度聞かせてもらえるかしら?」



 レンとレイドはそれぞれの依頼のことからゴブリンに遭遇したことを詳しくフィレンに話した。


「それで危なくなったところをレンが助けてくれたってわけさ。レンが来なければ依頼は失敗、依頼者は死んでいただろうし、俺たちも危なかった」


 とレイドが説明した。レンは、結構自分を持ち上げるな、と思った。


「ええ、レンがゴブリンの討伐を受けて来てくれたことに感謝だわ」


 とマーティが続く。


「大活躍じゃない?レン」


 フフッと笑いながらフィレンが言ってくる。


「からかわないでください。それより問題は黒いフードを着た男のことなんです」


 とレンは話をすぐさま元に戻す。


「そうね。問題はその男ね」


 フィレンは、すぐさま真面目な顔に戻る。


「黒いコートを着ていて、ゴブリンを召喚してたんでしょう?悪人で間違いはなさそうだけど」


 マーティが聞いてくる。


「ああ!顔は見えなかったけど人間だったはずです」


 人間と断言できたのは、ナビゲーターさんに確認を取ったら人間だと言っていたからだ。


「他に何か思い当たることはない?」


 と聞かれたため、数少ない敵の言ってた言葉を思い出すことにした。死に際に奴が残した言葉……


「そういえば、私を糧にとか……言ってたような?」


 と言った時に、フィレンはわかったようだ。すぐさま反応する。


「私を勝利の糧にって言ったのかしら?」


 とフィレンはあの男が言った言葉を言った。


「それだ!」


 レンはすぐに返答する。


「それは何の言葉なんですか?」


 レイドが尋ねる。


「これはスティグマと呼ばれるイカれた集団の言葉……あらゆる生き物を敵とみなし迫害する奴らが死に際に残す言葉よ」


 なかなか酷いことをする集団が存在するようだ。


「スティグマ、名前は聞いたことがありますけど。そんなに危険な連中なんですね」


 レイドは、名前だけ知っていたようだ。ちなみにレンは知るはずがない。


 フィレンも昔その集団と戦ったことがあるそうだ。


「スティグマが出たとなると王都に報告する必要がありそうだわ。奴らは何をしてくるかわからない危険な存在だから」


 ただのゴブリン退治が面倒なことになりそうだと思うレンだった。


「聞きたいことは聞けたし、ありがとう!3人の報酬を上乗せしておくわ。受付でもらってちょうだい」


 何やら報酬が増えたようだ。それは嬉しい。さっさと貰って帰ろうと思ったが最後にレンは、フィレンに声をかけられる。


「レンは、まだ残ってて」


 マジですかい……とレンの顔には出ていた。居残りが決定した。


 レイドとマーティが出て行ったあと朝と同様に2人だけとなってしまった。


 さて、どんな話が来るのかと思っていたら予想とは違う話になった。


「今回の活躍をもってレンをDランク冒険者にランクアップさせるわ」


「え…!本当ですか?」


 正直またスキルとかの話になると思っていたので驚いた。


「ええ!今回のゴブリン討伐に加えて、スティグマの発見は大きな功績よ。本音を言ってしまえば、Cにあげたいくらいだけどね」


 良い評価をしてもらえてるようだ。実力をしっかり見てもらえてるのは嬉しい。


 受付でギルドカードを出すよう言われ解放された。お茶は頂きました。美味しかった。



 ランクアップやらスティグマやら色々あった1日だったとレンは思うのだった。

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