第23話 迷宮探索と悲鳴

 迷宮の中に入ったレンは、外から見た迷宮と中の大きさの違いに驚いた。


「これは、あの小屋を思い出すな」


 レンがこの世界に来る前にいた空間にあった小屋は、外からはみすぼらしい見た目だったが中は違ったのだ。


 正直考えても仕方ないものだ。そういうものだろう。


 少し遠くの方では、冒険者が魔物と戦っていた。ゴブリンのようだ。4人組で前衛が剣と槍で後衛で弓と魔法を使っている。


 なかなか良いバランスなのではないかとレンは思った。


 パーティを組んで戦うというのはほとんどの冒険者に共通することでソロというのはあまりいないらしい。


「俺ってもしかしてずっとソロだったりして…それは寂しいし仲間が欲しいな」


 さすがに1人は寂しいと思うレンだった。パーティに憧れを感じる。でもどうやって他の冒険者に声をかけよう?わからぬ。



『私がついてますよ、マスター!』


 とナビゲーターさんが言う。


 そうだ俺にはナビゲーターさんがいるではないかと思う。最高の仲間だ。


 ナビゲーターさんに励まされ、さっそく迷宮の探索を始める。通路がいくつかあり迷路のようだ。


「マップ!」


 スキルを使用してみる。


 だか表示されたのは入り口から今いる場所だけだった。


 マッピングしないと迷宮はマップが表示されないようだ。マッピングされるだけでも破格だとは思うが。


「楽はさせてくれないか……」


 時間なんていくらでもあるし冒険を楽しむことにしようと考える。攻略を見ない手探りプレイも良いものだ。




 適当に道を進んでいると魔物に出くわした。懐かしいゴブリンだ。


 2体のゴブリンが突っ込んで来たがあっさりと倒す。


「あまりにも簡単に倒したな……」


 こんなにもあっさり倒せるかなと思っていると


『称号スレイヤーの効果によりゴブリンとの戦闘時ステータスに補助が働きます』


 そういえば称号で補正があるとか言ってたなぁ


 その後も探索を続けマップがほとんど埋まってきたところで階段を見つけた。


 この迷宮は上に上がって行かなければならないのか……


 何階層までかわからないため気が遠くなりそうだ。


 二階に上がると階段の近くに光る石が浮いていた。


『転移結晶のようです』


(確かに帰ってまた上の階まで行くのは苦労するよな……)


 転移結晶に触れればまたこの階層に跳べるようなので触れておく。




「とりあえず、こんなところか……まだ時間があるか」


 まだ帰るには早いだろうし、もう少し迷宮を冒険することにする。


「キャァァァァァ!」



 2階層をマッピングを行いつつブラブラ歩いていると悲鳴が聞こえた。


「悲鳴!何かあったのか……」


 レンは即座に走り出す。


 見つけたのは迷宮の入り口でゴブリンと戦っていたパーティだった。魔物と戦っているようだ。魔物はゴブリンよりも大きい。明らかに押されている。


「鑑定」


 相手のステータスを調べる。


 オーガ

  HP940/956

  MP100/100

  ATK490

  DEF500

 〈スキル〉

  打撃強化


 余裕で勝てるし、助けに入ろうと考える。


 魔法使いはMPが切れかかっているのか倒れそうだ。弓使いが守るように立っている。

 急がないとまずいか?と考えると剣士の男がこちらに気づいた。


「ここは危険だ!逃げろ!」


 と叫んで来た。


 自分の方が危ないのに逃げろと言ったことにレンは好感を覚える。


 悪い冒険者なんかは魔物を押し付けるんだけどな、と考えていたらオーガが剣士と槍使いを突破し、魔法使いと弓使いの少女の方に向かった。


 普通に考えたらこれは間に合わない距離だ。みんな2人が死ぬことを覚悟しただろう。2人もぐっと目を閉じ振り下ろされる死を待つ。ただ1人レンを除いて。


「炎付与……炎の剣、転移」


 剣を構えたレンはすぐさま魔法を唱える。


「え?」


 驚く2人の声を聞きながらレンはオーガの前に立ちオーガを真っ二つにした。豆腐を切るかのようにスパッといった。


 周りがシーンとなっている中レンは大丈夫?と声をかけるのだった。

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