第19話 フェレンスと冒険者登録

 レンは、無事フェレンスに入り街中を見渡していた。門を通ってすぐの所には多くの出店があり街の活気が伝わってきた。


 街を見て回りたいのだが、まずは冒険者ギルドに行こうと考える。


 現在レンはただの無職だ。働かねば生きていくことはできない。住む家もないので自宅警備もできない。


「さすがに異世界で引きこもりにはならないぞ?やるなら冒険者だな!」


 異世界なら迷わずこの仕事だ。

 目立ち過ぎないようにとは思うが……まあ自分の実力がそこまであるかもわからないので、様子見だ。



 近くの店で串焼きを買ってギルドの場所を聞く。

 街の真ん中あたりにあるようだ。


 街中には人間以外もいる。エルフや獣人はよく見かける。


「おお!生のエルフだ。とうとう、本物をこの目にすることが出来るだなんてな……」


 レンは普通一生会えないであろう存在に会えたことに喜んだ。ありがたやーと拝みたくなる。


 ハリウッドスターにでも会ったような喜び方だ。


「これ以上、見ていたら兵士とかに通報されそうだな……」


 ずっと見続けても危ない人だと思われるのでギルドに向かうのだった。




「ここで間違いない……緊張するな」


 ギルドは大きい建物なのですぐにわかった。

 さあお約束の展開は起きるのか?レンはそればかりが気になって仕方なかった。


 大きい扉を開けて中に入ると中には大勢の冒険者らしき人がいた。


「これが本物の冒険者か!すごい数だな」


 現在の時刻は夕方。依頼の報告なんかでギルドは混んでいた。


「今日は、たくさん魔物を狩れたな!」


「目的の薬草が見つかった良かった」


「まさかあんなに魔物が出るとは酷い目にあった……」


 など色々な話が聞こえる。依頼を達成して喜ぶ声や、苦労話など興味深いものばかりだ。まさに理想的な冒険者達の姿だ。


 これは人が少なくなるまで待とうと思うレンだった。あんまり人が多い所が得意というわけではないので端の方に移動する。




 端でポツンと1人立っていると、声をかけれた。


「おい!そこの坊主」


 スキンヘッドの筋肉がムキムキのおっさんが話しかけてきた。


「はい?何でしょうか」



 お!これはお約束か?戦うなら相手になるぜとレンは思ったが、そんなことにはならなかった。


「そんなとこでポツンと立って困ったことでもあったのか?」


 相手は、レンの様子を気にかけてくれたようだ。申し訳ないが見た目に反して良い人だった。


「冒険者登録したいのですが人が多くて、空くのを待ってたんです」


 と答えた。


「なかなか気の遣える坊主じゃないか!気性が荒い奴もいるからもう少し待った方が良いかもな!困ったことがあったら言ってくれよ。俺の名前はガルドってんだ」


「ありがとうございます!ガルドさん」


 優しい人だなと思った。



 だんだん人が少なくなってきたため列に並ぶことにした。


 そして自分の番になる。


 受付の人は猫の獣人の女性だった。黒髪のクールそうな人だ。


「冒険者登録をしたいのですが」


「わかりました。まずはこの書類に記入をお願いします」


 さすがに語尾に「ニャ」とかは付かないようだ。受付嬢から渡された書類に記入を行う。


 名前はレン・オリガミにしておく。字は日本語を書いているつもりだが異世界語になっている。スキルのおかげだ。


 スキルの記入についてはどこまで書こうか悩んでいると


「最悪名前だけでも大丈夫です。スキルを知られたくないということもありますので」


 と受付嬢が言った。


「それは助かります」


 と言って名前だけで提出すると


「隠したいスキルをお持ちなのでしょうか?」


 と返された。急な駆け引きの様な展開。嫌いじゃない。


「さあどうでしょう?」


 と適当にごまかしておく。動揺しては簡単にバレてしまいそうだ。


「次はギルドカード用に血をいただけないでしょうか?」


「血ですか……」


(針で刺すやつだぁぁぁぁ!怖ぁぁ)


 と内心怖がるレンだった。怖くて刺せません。なんて言えないと思い覚悟を決める。


 外から見た感じはクールそうに行う。

 チクッとした感覚があったが無事に血を提供できた。


(ふっ、ビビらせやがって)


 と心の中で思う。


「それではカードを作りますのでお待ちください」


 と言われレンはカードができるのを楽しみに待つのだった。

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