第2章辺境フェレンス編

第18話 漆黒の龍と最初の街

 レンはとある森の中に立っていた。


「急に場所が変わったな…」


 小屋があった場所から歩き出したと思ったら全く別の森の中にいるのだ。


「そういうものだって受け入れるしかないもんな。さて、ナビゲーターさんがマップが使えるようになったって言ってたし早速やってみるか。…マップ!」


 するとスマホの地図と大差ないものが表示された。見慣れているものであり助かる。


 レンが現在いる場所は、封龍の森という場所らしい。名称もしっかりと記載されていた。


「名前的に龍が封じられているのか?いきなり物騒だな」


 どうかドラゴンとかと出会うことがありませんようにと祈りながらレンは進む。


『索敵を使用していますが付近に生命反応はありません』


 ナビゲーターさんが言っているのなら大丈夫だろうと安心するのだった。


「隠密もあるし大丈夫だろう」


 森の中であるためある程度の魔物からは隠れることも可能だと考える。


 この森を抜けて少し進めば街に着くとマップに載っているため注意しながら進む。森の中なので時間もよくわからないのだ。もし夜が近ければ街に入れないかもしれない。


「急ぎたいな……なんだ?」



 あと少しで森を抜けそうだという所で急に悪寒がした。


『マスター、すぐに身を隠し隠密を発動してください。魔力操作も使用してください』


 ナビゲーターさんが慌てたようにレンに注意する。


「わかった!」


 レンはすぐさま近くの茂みに身を隠しスキルを使う。なにやら強力な気配が近づいてくるようだ。


「どこだ……強い気配はするが」


 周りを見回すが何もいないようだ。


『上空です!マスター』


 ナビゲーターさんの声で上を見上げると、空を巨大なドラゴンが飛んでいた。まさに漆黒と言っていい綺麗な黒色だ。


「ドラゴン……本物だ」


 ただひたすら驚いた。異世界にいるということを強く実感する。


 バレませんようにと心で強く祈ったからかドラゴンは特にレンに気づくことなく去っていった。


「ふぅ、行ったか。本当に異世界に来たんだな…いきなりドラゴンのお出迎えとは」


 ドラゴンは無事去ったため茂みから出る。鑑定を使おうとしたがバレる危険があるとナビゲーターさんに言われたため使えなかった。


『またこちらに来ないとも限りません。先を急ぎましょう』


 とナビゲーターさんが言うので従って移動する。


 森で魔物を見なかったのはあのドラゴンが原因かもしれないとレンは考えた。




 街に向かって移動しながら街に着いたら報告すべきか悩んでいた。


「ドラゴンが〜とか言っても信じてもらえなさそう……」


 話す相手を考えようと思うレンだった。


 マップを見ながら街を目指す。レンが向かっているのは、アルセンティア王国の辺境フェレンスという場所らしい。


 マップでは、街の情報は手に入らないため実際に行くのがとても楽しみだ。





 そしてついに街が見えてきた。

 フェレンスは10メートルほどの壁に囲まれているようだ。門の方では受け付けが行われていた。


 列に並んで待っていると、自分の番がきた。


「通行料は銅貨2枚となります」


 兵士らしき男が言った。異世界言語もしっかり機能している。


 やはり通行料があるんだなと思いながら、レンはポケットから巾着袋を取り出し中から銅貨2枚を取り出す。いくらかのお金は小屋に用意されていたのでそれを持ってきたのだ。


「確かに。後は犯罪歴がないかを確認するから右に向かってくれ」


 と言われたので


「わかった」


 と頷き向かう。



「こちらで確認を行います」


 魔法使い風の女性が呼んでいた。


 机の上には宝珠のようなものが乗っていた。


「こちらに手をかざしてください。青く光れば通過できます。赤く光れば……捕まりま〜す!」


 ニコニコしながら言っている。少しからかわれているみたいだ。


 レンは言われた通り手をかざす。


「あれ?何も反応しない。故障かな?」


 女性は困惑していた。


 だがレンはここで思い出す。


(やべっ!ステータスはロックされてるんだった)


 新たなユニークスキルのロックが働いているためステータスを宝珠が認識出来ないのだ。冷や汗をかいた。


 一度ロックを解除する。


「もう一度良いですか?」


 と言って手をかざすと青く光った。


「はい。大丈夫です。通過してください!…不調かな…」


 女性は不調を疑っていたが、レンは俺のせいです。と心の中で謝罪するのだった。


「ようこそフェレンスへ!」


 という声を聞きながらレンは、異世界で最初の街に足を踏み入れるのだった。


「さてと、初めての街だな!何があるか知らないが、異世界の旅を満喫するぞ」


 この街で、大きな出会いが待っていることをレンはまだ知らない。

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