第27話 いやどういう意味です?
「騒々しいぞ。入室はもっとスマートにするものだ」
とは銀髪をポニーテールにした眼鏡、緑の目の麗人先輩の言。
「まったく、忙しいのだ。用件は手短にな」
これは黒髪に赤い目、そして垂れ犬耳の先輩の言だ。二人共にシャツとズボンの上に白衣という出で立ち。
ドンドンドンドンドンドン! と悪質な取り立て屋の如く扉叩きまくった関係でちょっと拳が痛いが、効果はあった。どちらも体裁を完璧に取り繕っている。
「すみません。シル先輩。ところで手にしてる本、天地逆ですよ」
「う、うむ」
「そうですね手短にしますね、ミト先輩。ところで頭ボッサボサですよ手鏡とブラシの常備をオススメします」
「あ……」
うん。今日も
それにしても……いつ見ても
白い天井と壁、床は飴色の木製タイル。そこに二人のアルミ製デスクが通路みたいな幅開けて並んでる。あ。前回と違って薄っい安そうな白いカーテンが窓についてる。
そして変わらず部屋の隅には茶色い紙製の箱が積まれていて、中身は諸先輩方の試作品やコレクション。
「そ、それで? 小生達は忙しいのだ。早く用件を聞かせて貰おうか」
天地逆だった本をさり気なくデスクに置いて、シル先輩がほぼ伊達な眼鏡をチャリチャリさせる。動揺し過ぎですよ先輩。
「先輩方に新しいメンバーを紹介しに来ました。ユニ、入って。大丈夫。お二方とも優しいから」
大丈夫大丈夫。怖くないぞー?
てか早く来て。そんな視線と笑顔でまだ部屋の外で固まっているユニを手招く。
意を決したのか強張った表情をしつつも、ユニが部屋に入ってペコリと頭を下げる。
「新メンバー? よく入ったな」
「ミト先輩、それどういう意味です?」
「諸君らの中に突撃出来る度胸と神経がある者が身内以外に居るとは、吾輩予想していなかったゆえ」
「別に度胸も神経も要らないと思いますよ?」
「「いや絶対要るだろ」」
息ぴったりで合わせやがった諸先輩方。こういう時に息が合うんだからやっぱ仲良いんだな。
「あの、新しく入りました。ユリティニカです。よろしくお願いします……」
まだビクついてはいるものの、きちんと挨拶するユニに諸先輩方が何故か憐れむような目を向ける。何でだ。
「可哀想に。何かよっぽどの事情があるのだな」
「然り。自身の意志ではないのだろう。難儀な事だ」
いやどういう意味です?
何か同情めいた視線をユニに向けながら、諸先輩方はユニにお茶や焼き菓子を勧めている。
こっちには無いんですか。
「いえ、い、一応自分の意志、です」
ユニ、一応って何だ一応って。
「そうかそうか。ほれ、ここに座れ。遠慮するな」
「これも食べてみろ。美味いぞ」
「うちのユニを餌付けすんのやめて貰えます? 貴方がたは孫を可愛がる親戚のご老人ですか」
まあ嫌われるより気に入られる方がこの人達は良いけど。
「いや、何か可愛くてな」
「然り。貴殿達のような輩と比べるとどうしても庇護欲がそそられてな」
「シル先輩はまあ良いですけど、ミト先輩はアウトですね。失礼です。こちとら発注主ですよ。先輩達にお仕事あげてる側」
しかもこの先輩ドサクサに紛れて輩とか言った。
「そういう所が可愛くないのだが」
今度価格の割引交渉しようかな。
「話が進まないので、こっち見てもらって良いですか」
パンパンパンと手を叩き、全員の視線を一度こっちに集中させる。
「ユニが自己紹介したんで、諸先輩方もお願いします」
「シルルだ。よろしく」
「アルティミトだ」
シルルというのが銀髪に緑瞳の麗人な先輩。アルティミトというのがシル先輩より若干失礼な黒髪に垂れ犬耳の赤瞳な先輩だ。
「シル先輩は主にアクセサリー系の道具を作ってくれて、ミト先輩はそっちとは別系統の道具を供給してくれるから。具体的にはバイクとか大きめのやつ」
「え。バイク……ってあの他世界の道とか走ってるっていう機械ですか?」
「そうそう。俺達も時々パフォーマンスで乗ったりするから。あ。大丈夫。運転は主に双子がやる」
まあ俺もルネも運転は出来るけど。
「何か道具が壊れたり使い方わからなかったら、それぞれの先輩に連絡して」
「新しいメンバーという事は、ユニ君の衣装も装身具化するのだろう? データ寄越してもらおうか」
「はいはい。これでお願いします。こっちが衣装」
「データって何ですか」
シル先輩の
「うん? ユニの身体データだけど?」
「何勝手に共有してるんですか⁉」
「「必要だから(な)」」
シル先輩とハモった。
「小生の構築した術式には各部位の正確な座標が要る。衣装と各
「話すと長くなるから割愛しますよー」
「待て。これからが」
「うちの新メンバーが辟易するんでやめて下さい」
割愛するっつってるでしょうが。それでも言うならオブラートに包みませんよ。キリがない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます