第26話 大学部
「ユニは見たこと無い? 占い目玉飴」
「な、ない」
コロコロと口内で飴を転がす。甘さがしみる〜。
駄菓子と呼ばれる菓子だけを集めて売っている駄菓子屋と呼ばれる店舗では、この飴が大きな瓶に詰められて売られているんだが……。ああ、でも第二階層じゃ駄菓子屋が無いか。物価おかしいし、あそこ。ユニ住んでたの山の中だし。今度、皆で駄菓子屋行くか。
「じゃあ、ユニにはコレ!」
「ひぇっ、今度は何ですか……?」
そう言いつつも律儀にルネが差し出した、三角錐の形に葉っぱみたいな緑の持ち手がついてる手のひらサイズの菓子を受け取るユニ。そして俺は耳を塞ごう。
「その緑の部分を引っ張って出してね」
「こう、で――」
『きぃぃぃゃゃやぁぁぁあああああああああああああああああああああぁぁぁぁあああああ! 雪』
うん。耳塞いでいて正解。
マンドレイクチョコなんて防犯ブザー代わりの代物を出すんじゃない。ちなみに叫び方で超大吉から虚無までを占える。最後に呟かれるのはラッキーアイテムだ。
「わぁ。ユニ、末吉だって!」
「…………」
引き抜いた格好のままユニが固まってるな。可哀想に。
「ルネ」
「なぁに?」
「今日持ってきてるおやつ全部見せろ」
思った通り全部駄菓子。
「持ってき過ぎ。あと駄菓子ばっかこんな食べるな。買い過ぎ」
「えー。だってコレとかアレとか新作だよ? 一度は食べないと。あっちのはリニューアルだし!」
「いくらお前が食べたそばから魔力に持ってかれる体質でも太るかも知れないだろ⁉ 肌とか荒れたらどうすんだ」
「太らないし、荒れないもん。うちの領の錬金術師たち優秀だし!」
「知ってるけど流石に想定外の量だよ彼らも!」
自制出来ないなら没収すんぞ!
「それに全部食べるんじゃなく、ユニに分けたげようと思って持って来たんだよ」
そう言いながらテキパキと可愛いラッピングをした小袋三つを固まってるユニの膝にそっと置く。お供えものかな?
あー……疲れた。まあ今日はもう帰るか。明日の俺、任せた。
「ユニ、おーい、ユニ」
昨日の俺に任された今日の俺。今は絶賛、白くなって燃え尽きたユニの眼前に手を出して振っている。
放課後にうちの衣装を作ってくれてるルネの伯父上が来て、衣装合わせをしていった。ちなみに終わった今はルネと双子が親戚水入らずという名の接待をしている。
「終わったぞー。もう終わったから帰ってこーい」
「……っは!」
悪夢から覚めたようにユニが覚醒した。
衣装合わせとはいえ、グッズ用の撮影も一緒にやったからなぁ。疲れたんだろう。
しかし流石にあちらは手慣れているな。衣装量から考えると凄い短時間で終わった。
「ちょっと帰りに大学部に寄ってユニの衣装預ける所があるから、衣装持ってついて来て」
学園の大学部とはいえ、それなりに離れた距離に敷地があるので陣を使う。
学園の玄関である大広間に隣接した部屋にある陣がそれ。部同士を繋ぐ陣に乗り、瞬き一つの間で大学部に到着した。
目指すのは研究棟と呼ばれる校舎の端にある場所。大学部は初等、中等、高等のどれよりも広大な敷地と規模が桁違いの校舎を持っている。
本校舎自体が無駄に広いうえ、構造も複雑なので同じ敷地内にもかかわらず要所要所で陣を設置した部屋が存在するくらいだ。
他世界の例にするなら、電車とかがある世界で、校舎内にその電車と停車駅がある感じとかになるかな。
陣を乗り継ぎ、お目当ての棟、お目当ての階にあるある研究室の前に到着した。
軽くノックしてから白い塗装された金属扉の銀色のノブを回して開く。
「諸先輩方、お疲れさ」
「だ〜か〜ら〜! 変身ベルトとかナンセンス! 時代はさり気なく実用性も抜群の変身アクセサリとかに決まっておろう!」
「はぁ〜っ? 頭わいてるの貴様! このベルトの機能美がわからないと? ついに老眼拗らせたか?」
「老眼はお前だろこの脳筋戦隊オタク!」
「だれが脳筋だ! このエセインテリ風情のネクラ野郎!」
「はあぁぁぁぁ? お前に根暗いわれる筋合いはないぞ、この駄犬」
うん。ソッ閉じするよな。
んー? んんー? えーと……。
あはは。俺ったらうっかりさんだなぁ。
ノックはもっとしっかりしなきゃ駄目だよな。いやーうっかりうっかり。
と、いうわけで。
「おほん。すぅー……はぁ……」
しっかり拳を握り、
「お疲れ様でーす! 諸先輩方! お願いしたい事があり参りましたー! 開けますよー! 十数えて開けますよー? はーい、いーち、にい、さん…………なーな、はーち、きゅーう、じゅう! はい!」
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