第4話 幼なじみとの出会い 後編

 騎士団のトップは領主。ルネは領主一族として手伝いをしているのだろう。

「それでー、害獣を釣り出そうと思って、もちろんバッチリ釣れたんだけどぉ……」

 手伝いどころか割とガッチリ食い込んでいた。

「トーゼンだよね。だってこんな可愛い子がいたら奴らが見逃すはずないし」

「あー……うん。まあ」

 そう、だな。そうなんだけど……何だろうこのモヤる感じ。俺の中の何かが認める事に抵抗してる気がする。とはいえ、実際美少女(?)なので否定も難しい。

「釣れたのが思いの外、いっぱいでね」

 数人というか、一団て単位だったらしい。

 早い段階の駆除だったはずなのだが、予想外の数だったようだ。

「それでも余裕で仕留めたんだよ? だけど兄様のお耳に入ったら『そんな危ない事を』って言われて……」

 おい。いつの間にパフェ食べてるの? てか、いつ? え。自分で作ったの?

 生クリームにチョコブラウニーとチョコソースたっぷりの本体にバニラとストロベリーアイスをトッピングしたそれ。ダメ押しのようにチョコスプレーが彩りを添えている。

 俺の前にも同じものがいつの間にか置かれていた。

「しかも兄様、声荒げたり全然しないの。むしろ淡々と……。向かい合って正座して無言でじっと……」

 手洗い休憩や水分補給はさせて貰えるらしいが、それ以外はひたすら正座で無言の圧を掛けられたのが最早トラウマと言えるレベルのようだ。

「とりあえず謝っても、理由をとことんまで詰められるんだよ?」

 とりあえずって所が間違ってる。とはいえ、詰めるのは容赦がないな。

「結局、丸一日そうやって詰められて、反省文なみに悪かったと思う所とその対策を伝えてやっと解放されたんだよ……」

 丸一日粘ったんかい。

 そんなツッコミが心に湧く。

「でもね」

 パッとルネが表情を明るく変える。

「やっぱり、代わって良かった。怒られてもお土産用意したかいがあった」

 俺を真っ直ぐ見てくるその赤い瞳が、あんまりにもキラキラしていて、まるでルビーかガーネットのような、宝石みたいで。

「レフ、キレイな声だね。お歌、得意?」

「え。まあ、そこそこ?」

 そう答えると、いっそう瞳の輝きは強くなる。

 白状しよう。俺はこの瞳にあてられた。

 だって、その真っ直ぐな瞳には、憧れや期待の色がたっぷり詰まっていて、そんな風に一心に見られる事なんて早々ない。

 好意詰め合わせみたいなそれは、一種の誘惑で魅力だ。家族以外からそんな期待を向けられるなんて初めてで、そこに負の感情が欠片もないなんて惹かれて当然だろう?

「ボク、レフのお歌聴きたいなぁ」

「……独りはちょっと」

「じゃあ、一緒に歌う! それなら歌ってくれる?」

「うん」

 こうして、俺とルネの付き合いは始まった。

 まさかこの時にした軽い了承が後々まで有効にされるとは知らずに……。

 俺達は楽しく歌っていた。

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