第3話
「みんなっ、次の軍艦を占拠するんだ!」
ジュリの掛け声に従って、おおーっと雄叫びが上がる。
ここは反乱の出発点である軍港。ジュリは反乱を率いる一人の水兵だ。
「これ以上、戦争なんてやってられるか! 絶対に出港なんかさせないぞ!」
ジュリはもやい綱を器用に綱渡りして、船から船へと飛び移り、反乱軍に声をかけて回る。
「行けーっ! 押せーっ! この軍港を占拠するんだ!」
ジュリさん、と仲間の一人が言った。
「占拠はほぼ完了しました。この後は持久戦です!」
「分かった! みんなでがんばってサボタージュだ! 上官の叱責に屈するなよ!」
「はいっ!」
「あとは近隣の労働者にも働きかけるんだ。軍需工場の人たちはきっと協力してくれる! それに町の人だって……ん?」
ジュリは船の上から目を凝らした。何か、武装していない人たちの集団がこちらに向かってくる。
「なんだなんだっ!?」
ジュリは身軽に船から飛び降りて、その集団の前まで走って行った。
「こんにちは! 君たちは何しに来たのかな!?」
「こんにちは。私の名はアムリンだ」
集団を率いていた、勇ましい様子の女性が言った。
「アムリン団は、この反乱を支援する。あとのことは私たちに任せろ」
「わあっ、すごいや!」
ジュリは叫んだ。
「あの有名なアムリン団が来てくれた!」
アムリン団は急進的な革命派集団である。彼らは労働者による革命によってよき国を作ろうという理念を掲げており、市民から多数の支持を得ていた。そんなアムリン団が協力するとなれば、この反乱はドンドコ帝国全土に一気に広がることになるだろう。
「ありがとうございます、アムリンさん!」
「礼には及ばない。私もこの時を待っていた。お互い協力して革命を成功させよう」
「はいっ!」
ジュリは元気よく返事をした。
***
パクリダ皇帝から反乱を何とかせよとの要請を受けて、政府は比較的市民に近しい立場の議員であるカレーを派遣することにした。
「急ぎ、北へ向かおう」
カレーは移動しながら、部下からの報告を聞いていた。
「つまり、アムリン団も協力して反乱の勢いは膨れ上がっているということだね? ふふん」
カレーは何故か嬉しそうに笑った。
「頑張るとしよう。何せ僕は、反乱鎮圧のための重要人物に任命されちゃったのだからね……!」
カレーが到着すると、北の町は大騒ぎになった。
「政府の人間が来たぞー!」
その中を悠々と歩いて進むカレー。彼は満足げに頷きながら、こう独り言を言った。
「よしよし、いい感じだ。……計画を実行に移す時が来たよ」
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