6話 苦悩と作戦
ホタルは街の郊外まで逃げた。一面に広がった芝生の上に石でできた一つの砦があった。ここは元々無人だった。革命派のメンバーの一人が見つけ、何かあった時の第二の集合場所と決めていた。まさか本当に使うことになるとは思わなかったが。
「ホタル無事だったか?」
ホタルが扉を開けるとボーデンはそう言って出迎えてくれた。
「うん…僕は大丈夫。ボーデンおじさんは?」
「俺は今回の襲撃の時にはまだ偵察に出ていたんだよ。その時、逃げてくる仲間に出会ってな。それで敵に会うこともなくここに来たって訳だ。」
「それは良かった…。」
ホタルは小さな声で言った。
「なんだよホタル、元気がないな。」
「だってメルンが僕の目の前でハーマン・ポールに殺されて…。」
「そうか、でもおかげでホタルは無事だったんだろ。メルンの分まで頑張るしかないぞ。もうすぐ飯もできる。切り替えようぜ。」
「うん。」
それから夕食にかけて何人かの革命派の仲間が襲撃から逃れて砦に戻って来た。だが旅館に先にいた人数の半分ぐらいしか居なくなってしまった。ボーデンが言う通り悲しんでいる場合では無かった。作戦を練り直さなければならない。
「俺たち革命派の人数は半分の五〇人あまりに減ってしまった。だが悲観することはない。我々には心に刻み込んだ目標がある。それを忘れない限り我々は戦いそして最後には勝つ。」仲間全員の前でボーデンはそう言って仲間を鼓舞した。
「僕はポール家に気づかれていた以上、襲撃タイミングを早めた方がいいと思っています。」ホタルは自分の意見を言った。
「俺が偵察して分かったことだが東門より西門の方が警備が手薄だったことだ。そこから入るのが良いと思う。」
それから色々な意見が飛び交い、ある程度まとまった。決行は明日の深夜、ポール家を囲っている壁を超えて城の中に中に侵入すると決めた。
次の日、朝からそれぞれ準備をしていた。ホタルは昨日からずっと頭の中がジレンマに襲われていた。ソフィアのことである。彼女と出会ってある意味ホタルの中で変化が起こっていた。最初はただの希望の国の市民だと思っていた。だがそれがポール家の人間だと話は違って来る。少なくともあの子の父親を殺さなければならない。そうなるとかつて母を殺された自分と同じ気持ちになるのではないかと考えたのだ。
ホタルは夜の作戦決行時間まで改めてザルパーク国の国としてのあり様を見直した。ザルパーク国は希望の国とどう接するべきなのか。本当の幸せとはなんなのか。自分の幸せの為に他人の幸せを奪いに行くのか。人はなんのために生きているのか。自分は何を成すべきなのか。
ある程度の答えがまとまり決心がついた所でホタルはポール家の西門の前まで着いた。革命派の五十人全員がホタルが売っていた防具を着けている。ボーデンが手で合図をした。これから先どんな方向に進もうとも自分は後悔しない。そう心に誓った。
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