4話 内情と事実
ホタルがソフィアを連れて向かった場所は二階建ての小さな旅館だった。隠れ家にしてはデカすぎる。と最初はホタルも思っていた。だが革命派の仲間が言うには、あえて目立つ旅館の様なところに集合することによって、人の出入りの不自然さを無くしたいという意図がある様だった。ホタルは知らない女の子を連れて帰ったということで、旅館にいた革命派のメンバーから疑り深い目で見られた。
「あの子は一体なんなんだよ。」革命派の一人メルンがこちらに来て言った。
「襲われている所を助けたんだ。家出らしくてな。落ち着くまではここに住まわせようと思う。」
「おいおい、俺たちのここに来た目的を忘れた訳じゃあるまいな? ポール家と戦うためなんだよ。何処の家とも分からない様な奴を入れて、もしスパイだったらどうするつもりだ。」
「それまでに事情を話して帰ってもらうつもりだ。ソフィアをここに長居させるつもりはない。」
ホタルが言ったことをメルンは納得しなかった。無理もない。ソフィアは恐らく希望の国の人間だろう。見た目と服装からそれは分かる。
ホタルはむしろチャンスだと考えていた。革命派の目的である希望の国の人間を追い出す為には相手の事を多少知っておかなければならない。その為の第一歩としてソフィアは使える。だから今からソフィアに自分の真実を伝える。
ソフィアは旅館の二階の一番奥の部屋に一人でいた。
「ソフィア、少し話をしてもいい?」
「ホタルね。大丈夫よ。ここの旅館は悪くないわ。でもいつまでもここには、居れない気がする。」ソフィアは不安そうな目をして言った。
「僕達は旅館を一式借りているんだ。とある目的と為にね。」
「薄々そうじゃないかと思っていたわ。団体旅行ってとこかしら?」
「だと良いんだけどね。今の世の中はそれどころじゃない。希望の国の奴らはこの国を植民地化させてザルパーク国の人間に理不尽な法律を課しているんだ。だから僕はこの旅館にいる革命派のみんなとザルパーク国をもっと良くしようと戦っているんだ。」
話を聞いている最中からソフィアの顔は蒼白になってきた。無理もない。革命派の運動はポール家の中では大問題で父が良く会議をしていたからだ。
「ちょ待ってよ。革命派なんて聞いてないわよ。あたしを人質にするつもり?」
「君はやっぱり希望の国の人間なんだね。大丈夫。僕達が変えようとしているのはザルパーク国の人々の足枷になっている法律なんだ。そしてそれを作っている一家が見つかった。僕達は希望の国の人を無闇に殺したりしないよ。目的の達成だけを考える。僕は母を希望の国の奴に殺されて分かったんだ。理不尽に死んだ人間に対してできるのは、その人が生きたかった世の中に作り変えることが一番だって。」
ソフィアはこのホタルって男の子は純粋なんだと思った。同時に何処か惹かれるところがあった。それは自分が生きてきた環境とは全く異なる人だからだろうか。だからこそ止めなかればならないと思った。このやり方では平和的な解決にならない。
「ホタルいい? あたしの身分をこれから言うけど、それを聞いた上で答えをちょうだい。」ソフィアは体が震えていた。
「どうしたのソフィア。身分って何?」ホタルは嫌な感じがした。
「あたしはあんたが襲おうとしてるポール家の長女なの。」
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