3話 出会いと強襲

 ソフィアは外に出たからと言って特に目的がある訳では無かった。でもあの家はすごい居心地が悪かった。一人でザルパーク国の大きな道を歩いていた。ザルパーク国は希望の国に比べて店が多いわけでもなく、道も整備されているとは言い難い。でも人々には活気があった。

 しばらくして裏道のような所に出た。人が少なく雰囲気は少し暗い。出会う人はどこか殺気があった。ソフィアは後ろに何か気配を感じた。足音が二つ。さっきからずっとついて来る。角を曲がった所で走った。後ろの足音も早くなる。突き当たりに行くと目の前にもう一人現れた。

「おっと、お嬢ちゃん。止まってくれないかな?」

 ソフィアは足を止めた。後ろから二人のごろつきがやって来る。

「何よ、あんた達。」

「ボス、これは服装から見て希望の国の金持ちですぜ。やっちまいましょう。」そういうと後ろからソフィアは抱えられた。地面から足が離れる。命の恐怖を感じた。

「キャァーアアアアアアアアアア。」大きな声で叫んだ。


 一般の民家がある街の中央には、ひときわ大きい城が立っていた。あの城がポール家の居住区だった。ホタル達革命派は相手に悟られないように散り散りに街に入った。来たる一週間後の夜九時。西門と東門に決めれた人数が集まりポール家を攻める計画を立てていた。ホタルは現在、街の至る所に落ちているゴミを掻き集める仕事をしていた。一日でどれだけの量のゴミを集めたかを夕方に報告し、重さによって給料が確定する。そして夜には決められた宿で仲間と落ち合う。ホタルの役割はゴミ拾いを通して街の状況を見ることだった。そんな生活も三日目を迎える頃、いつも通りゴミ拾いをしている最中に近くから悲鳴が聞こえてきた。


 ホタルは気づいた時には走っていた。女の子が一人、ごろつき三人に連れ去られようとしていたのだ。ごろつき達はホタルに気づいたが遅かった。ホタルは女の子を抱えている男の腰に思いっきりぶつかった。男は体勢を崩し手の力が緩んだ。女の子は抜け出した。

「君、こっちに来て。」ホタルは女の子に呼びかけた。

「このガキ。テメェ…。」

「ついて来て。」

「うん。」そう言ってホタル達は走った。

「逃がすな捕まえろ。」ボスと思われる男が叫んだ。

 ホタルは走りながら腰に巻いている袋を開けた。やがて建物の角まで来た。

「先に行って。」

 ホタルは角を曲がり相手の視界から外れたタイミングで袋の中身をばら撒いた。中にはまきびしが入っていた。当然追いかけて来た三人は気づかずに踏んでしまった。

「痛えぇ。」足裏を見ると血が流れていた。

 それ以上ごろつき達は追いかけてこなかった。

「もう大丈夫そうだね。」道を振り返ってホタルはそう言った。

「助かりました。ありがとうございます。」

「君一人? 名前は?」

「えぇ…ちょっと訳あって今は一人なの。名前はソフィア。」

「ソフィアか。家まで送るよ。」

「あ…、実は家出してしまって…。」ソフィアは少し顔を下に向けてそう言った。

「そうか…。こんな所に居たらまた襲われるかもしれない。僕の隠れ家まで案内するよ。付いて来て。」そう言って二人は歩き出した。

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