2話 会議と発見
希望の国にはザルパーク国をどのように統治するのかを決める機関がいくつか存在していた。その中で最も重要である法律による統治を司るのが希望の国の貴族、ポール家であった。
現在ポール家では貴族会議というザルパーク国の指針を決める会議が行われていた。やがて貴族会議が始まり、議長が言った。
「ハーマン総督、ザルパーク国内で市民の蜂起が各地で起こっている模様です。いかがいたしましょうか?」
ハーマン・ポール。ザルパーク国を統治すべく希望の国から来た貴族出身の行政長官である。彼は怒りが募っていた。
「文字通り立法権は我がポール家にある。法に従わない恩知らずな貧乏人どもは、希望の国の名の下で処罰する。何か問題でも?」
「市民の中にはまだ子供で、学校に行けていない子もいます。その子達だけでも救った方が希望の国としてもいいと思ったのですが。」
「孤児院に入れろ。まだ物事の判別がつかないレベルだったら捕まえることが優先だ。ザルパーク国にはお金を払う必要の無い孤児院がある。」
「はっ、了解致しました。」
「報告します。今回の穀物の襲撃での死者は無し。負傷者は十名程。いずれも軽症です。」ホタルはその報告を丘の上で聞いていた。ホタルが売っている防具は多少の武器では傷がつかない程度に強度がしっかりしていた。だからホタルの仲間達は希望の国が管理している穀物庫を好きなだけ暴れて奪える。
母の死から二年後、一二歳になったホタルは革命派に参加していた。革命派には希望の国の理不尽なやり方に不満を抱くものが集まっていた。ホタルはまだ肉体的に成長していないということ、以前から学校に行く為のお金を防具を売って稼いでいたことを考慮された。充分にお金が稼げた今でも学校に行かずにザルパーク国の各地を武器商人として周り、革命派の人々に武器を売ったり傷ついた武器を治したりして革命派をサポートしていた。全ては母が殺された恨みを晴らす為だった。
「ホタル、とんでもない事を聞いたぞ。」
ボーデンがこっちに来た。ホタルは身構えた。ボーデンから来る知らせは良いことばかりじゃ無いからだ。特に母が死んだ時の記憶が蘇る。
「あ、ボーデンおじさん。こんにちは。」
「おう、ホタル。実はな、穀物庫の見張りの人を尋問した結果、例の法律を司っている一家の名前が分かったぜ。ポール家だ。奴らがザルパーク国の法を変えた元凶だったんだ。」
「そうか、ありがとう。」
ポール家。こいつらだけは許さない。ホタルはそう誓って地図を開いた。次の目的はポール家を襲撃することで決まりだった。
ルールなんてクソ喰らえ。ソフィア・ポールはつややかな長い金色の髪を振りかざし、青緑色の目をそっぽ向けた。両親は規則に厳しかった。いつも母、エラ・ポールからは毎日勉強したのかと言われ、父、ハーマン・ポールからはポール家の為に貢献する様にと言われた。ポール家が歴史ある貴族で生まれた時から私は外への自由が制限されていた。私はもう一二歳よ。せっかくザルパーク国という異国の地に来たのだから外に出たい。その気持ちは高まっていた。そこで貴族会議という人の出入りが激しい時期を狙い、どさくさに紛れて外へ出た。いわゆる家出っていうものである。
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