第7話 残酷な朝

 札幌のホテルの一室で、原島とジョージィのふたりは、昨夜の激しく愛し合った余韻の残るベッドの中に、昨夜からからの時間をそのまま止まってくれと願いつつ、じっと抱き合っていた。

しかし残酷な朝は訪れる。

日が昇り、カーテンの隙間からわずかに漏れ入る朝の光に、現実の世界を見ることになる。

一日の始まりは、激しく愛し合った者だけに訪れる、別れの始まりである。

愛すれば愛するほどに、別れの辛さは倍増する。

永遠に続くほどに感じたあの快楽の時間の長さは、次の逢瀬までの距離が遠いことを暗示している。

 

ジョージィを千歳空港で見送った時、ジョージィは「今度はニューヨー……」でといった。

その意味を確かめる余裕もなく、ジョージィは出発ロビーに消えていた。

狩野との約束は明日だし、このあとどうしよう。

その日はホテルで何もせず、ひとりでテレビもつけずにぼんやりと過ごした。

「ひとりで居ると時間って長いんだな」

「今は誰かと一緒にただ話すだけでいい」

ジョージィと過ごした昨夜が、遥か昔のできごとであるかのような錯覚に襲われた。

原島は、ひとりで居ることがこんなにも寂しく、辛いものなのかと初めて知った。

一人暮らしには慣れているはずなのに、ジョージィと過ごしたたった一夜でこんなにも自分が変わってしまったのかと、自分に驚きを感じた。










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