第6話 カレリアのジョージィ
翌日、狩野から電話があった。
嬉しそうな声だったので、紺野が戻ったのかと思ったが違った。
良かったと思う半面「なんだ紺野のことではないのか」と嬉しさとガッカリが半分半分であった。
「今度はいつ来る?」
狩野の声に「早く自分に彼女を見せたいのだな」と思った。
「俺だって見せたい彼女がいるぞ」といってしまいたい気持ちになったが、先ずは狩野を祝福しよう。
「来週の土曜日に行くよ」と狩野に告げた。
その日、ジョージィからも嬉しい電話があった。
「私、来週仕事で札幌へ行くの、ひとりで二泊よ、省三も来ない?」と言った。
原島はもちろん行きたくて、行きたくて、たまらないのだが、ジョージィは仕事だ。原島は平日には行けない、どうしよう。
原島はまだ夏季休暇を取っていない。
夏季休暇は仕事上の予定をを考えながら、各自が自由に取ることになっている。
原島は去年は一日も休暇を取らなかった。
「よーし今年は俺も休むか」
狩野との約束は、ジョージィが札幌へ行く予定の三日後、土曜日に会うことになっている。
原島は、取り掛かっている仕事の進行具合を見ながら、日程の調整に取り掛かった。
予定は8月4日水曜日にジョージィが羽田を発つ、そして6日金曜日午後の便で東京に帰る。2泊3日の出張だ。
原島はジョージィより一日遅れて、5日に札幌に入り6日午後、ジョージィを千歳空港で見送った後、狩野と会う、その後の予定は今は空白にしておくこととした。
ジョージィとは、わずか一晩だけのデートだが「札幌で逢えるのは神様が下さったご褒美だと、ありがたく頂くこととしよう」
原島の休暇届を見た篠原奈津美は、びっくりしたような顔で「えっ、何かあったの?」と聞いた。
「夏季休暇は当然の権利だ」といいたかったが「お願いします」と上司にいう様な口調でいい、深く頭をさげた。
普段あまり笑わない奈津美が、ほんの少しだけ笑ったように見えた。
奈津美が松野の女であることを最近知った。
ジョージィはこの日、すでに予定の仕事を済ませホテルで原島を待っていた。
原島は初めて、東京以外の地でジョージィと食事を共にした。
料理も飲んだワインも原島にとっては、初めて経験する高級なものであったが、
味などは覚えていれないほどに興奮していた。
原島はジョージィと過ごす夜を前にして、期待でワインうを飲む前からすでに心は
酔っていた。
せめて、「ひとりでの出張仕事は大変だね」とか「今日の仕事はどうだったの」とか何かねぎらいの言葉のひとつでも掛けるべきだと、思っていたのだがそれさえも忘れていた。
ジョージィが先に部屋に入り、原島はドアーを閉めドアーロックをした。
振り向くとジョージィは、原島の首に両手をまわし強く、唇を求めてきた。
原島はジョージィの腰を強く、そして優しく抱きしめそのままの姿勢で数分間を過ごした。
ベッドで初めて「今日一日どうだったの?疲れていない?」と聞くとジョージィは「ううん、省三こそ」と答え、両親や祖父祖母のことなどを話した。
「父の父と母はカレリア人、名前はジョージィ、母の母はエストニア人、母の父は日本人………私の名前はおばあちゃんと同じなの……」
ーん、ややっこしい、今は聞いても覚えられない、聞いても俺の体が聞こうとしていない「ごめん」と、そう心の中で言い、ジョージィの唇を自分の唇でふさぎ、左手はジョージィの顔と髪を優しくささえ、右手はジョージィの体のうねりに添うようにゆっくりと動かした。
ジョージィの声は日本語から外国語になり、そして徐々に喘ぎ声に変わっていった。
原島は、欲望を制御しようとする理性を一切捨て、本能が要求するままにジョージィに挑んだ。ジョージィもまた、原島の求める欲求のすべてに反応した。
ジョージィの喘ぎ声は原島の耳から全身に流れ。全神経を刺激した。
二人は快感の波に溺れるよろこびに浸った。
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