第496話 それでは気を取り直して

「「「「「「「「……」」」」」」」」


 自然と平伏してしまうほどの、神々しく圧倒的な。

 まさに生物としての格が違うと理解させられる、絶対的な存在感。


 突然の出来事、それこそ私としても想定外の出来事だったわけだけど。

 つい数秒前までほんの数メートルほどの距離いたノワール様達に。


 普通であれば例え一国の王であろうとも、一生目にする事はないだろう存在に。

 直接目にした七魔公の皆様に誰もが跪いた状態のまま愕然とし、会場に静寂が舞い降りる。


「やっぱりすごい」


 あの方々を見てると、私なんてまだまだだと思い知らされるわ。

 ほんの僅かな時間で、それも話してるだけなのに、この会場を完全に支配下に置いちゃうんだもん。


 それにノワール様から告げられた、レフィーちゃんをからの言伝。

 か〜、ふふっこれで余計に負けるわけにはいかないわね。


「まさかソフィーの転移魔法に干渉するとはね」


 むむっこの声の感じは……フィルめ仮面の下で苦笑いしてるな?

 いやまぁ、苦笑いしちゃう気持ちはわかるけども。


「っ〜! な、なんだ今のはっ!?

 王太子たる俺が跪くなんて……貴様ら俺達に何をしたっ!!?」


 我に帰ったと思ったら、騒がしいことで。


「ふふっ、随分と慌てているようですね」


 あ〜あ、顔を真っ赤にしちゃって。

 そんなに多くの貴族達の前で、跪いちゃったのが恥ずかしくて屈辱だったなかな?

 まったく王太子ともあろうものが、簡単に取り乱すなんてみっともない。


「口調が荒くなってますよ?」


「まぁ、あの方々を直接目にしたんだ。

 彼が取り乱すのも仕方ないんじゃないかな?」


 まぁ確かにね!


「それもそうね」


 現在の世界で表舞台に立つ人の中では、頂点といっても過言ではないだろう私達Sランク冒険者ですら足元にも及ばないもんね。


 ここ数年で力をつけたとはいえ、セドリック達の現在の実力はAランク冒険者程度。

 個々の実力で言えば過去にセドリック達が倒した、魔王〝灰燼の魔術師〟ルイーナの……


 光の使徒の最高幹部たる十使徒が第六席次〝真実〟のルイーナの下部組織。

 影の騎士のリーダーにすら及ばないわけだし。


「貴様ら聞いているのかっ!!」


 っと、私としたことが。

 王太子であるセドリック殿下を無視しちゃってたわ。


「皆さんもご存知でしょう?

 約5年ほど前に始まった、私達Sランク冒険者全員で挑んだ特級依頼の事を」


 なにせ四大国が一角であるアクムス王国から、大々的にセレモニーを行って出航したわけだし。

 御伽話に謳われる神の国を探すという、あの特級依頼は世界中で話題になった。


 仮にも王太子の立場にあるセドリックや、その側近であるオズワルド達はもちろん。

 この場にいる者の中で知らない者はいないだろう。


「今回の国際会議にて正式に発表される事が決まったのですが……皆さんには一足先にお教えしましょう。

 今から約1年ほど前、我々は特級依頼を達成しました」


「……は?」


「そもそも特級依頼を受けているはずのSランク冒険者私達が、今この場にいるのは不自然ではありませんか?

 つまり私達Sランク冒険者は、既に御伽話や神話に謳われる神の国に辿り着いていたのですよ」


 ふっふっふっ〜ん! みんな驚きのあまり声も出ないみたいね!!


「先程の方々は神の国に住まう方々であり……私達が辿り着いた神の国の主人。

 女神である魔法神ティフィア様に仕える側近とも呼べる方々です」


「ッ! 嘘だっ!!」


 むむっ? ラルフィー少年、急に大声を出してどうした?


「ラ、ラルフィー……」


 ほらぁ〜、セドリック達もちょっとビックリしちゃってるじゃん。


「す、すみません。

 ですが、今まで一度もそんな噂すら聞いた事がありません。

 例の特級依頼が達成されていたなんて、嘘に決まっています」


 そりゃまぁ、今回の国際会議で正式発表を決めたわけだし。

 世間的にはまだ発表されていない極秘情報だからね。


 まぁ尤も……この場でどれだけ、ラルフィー少年やセドリック達が否定したところで意味はない。

 なにせ……


「はははっ、そろそろ私達の事も紹介してくれるかな?」


 ノワール様達、予期せぬ七魔公の皆様の登場で、予定は狂っちゃったけど。


「勿論です。

 ルフィールおじ様」


 特級依頼達成の発表を決めた張本人達が。


「ったく、こうなると思ってたぜ」


 苦笑いしているガルスさんを筆頭に、実際に特級依頼を達成した我が仲間達が。


「こほん、それで気を取り直して。

 皆さんにご紹介しましょう──」


 四大国を始めとする王達に、Sランク冒険者のみんながいるのだから!!

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