第495話 神託

 眩く光り輝く複数の魔法陣が──次の瞬間には神々しく美しい、白亜の門へと姿を変える。

 誰もが身動きすらできずに固唾を飲んで見守る中、ゆっくりと白亜の門が開き……


「ふふっ」


 私のすぐ隣の転移門。

 右側から姿を現すのは、序列三位である私と序列七位であるフィルを除いた、私の仲間たる……

 序列一位〝白帝〟ルミエ。

 序列二位〝冒険王〟ガルス。

 序列四位〝影の支配者〟シャドウ。

 序列五位〝剣帝〟エレン。

 序列六位〝破炎〟フラン。

 序列八位〝疾風〟ラピスト。

 序列九位〝青き聖女〟イヴ。

 序列十位〝竜狩り〟イェーガー。

 序列十一位〝七色の魔女〟オネット。

 序列十二位〝千剣〟ミルバレッド。

 序列十三位〝巫女姫〟オラシオ。

 序列十四位〝軍勢〟アルマ。

 序列十五位〝流雲〟ロイ。

 13人のSランク冒険者達!!


 左側からは、この大陸の頂点に君臨する方々。

 レフィア神聖王国が国王〝聖皇〟ルフィール・セア・レフィア。

 ネフェリル帝国が皇帝〝現人神〟ショウ・アラキ。

 魔道学園都市王国が女王〝大賢者〟マリア。

 アクムス王国が女王〝紅の覇者〟アルバ・ジョン・アクムス。

 四大国を統べる王達を筆頭に、大陸を代表する権力者……


「ソフィ〜」


「えっ?」


 こ、この声はまさか──!!


「ちゃん〜〜!」


 ふわっとした薄い綺麗な緑色のショートボブの髪。

 眠そうに若干瞼が落ちた、金色が混じったようなブラウンの瞳。


「うえっ!」


 咄嗟に振り向いた私のお腹に突進するように抱きついてきた美少女。

 おかげでちょっと変な声が出ちゃったけど、どうせ誰も聞いてないだろうし細かい事は気にしない! それよりも!!


「ふへへ〜、ソフィーの匂いだ〜」


「ベ、ベル様っ!?」


「ソフィー、なでて〜」


「えっ、あっはい」


 いつものように柔らかくて、撫で心地がいいベル様の頭を撫でて……じゃなくてっ!!


「どうしてベル様がここにっ!?」


 ベル様が出てきたのは、本来ならSランク冒険者のみんなが出てくる予定だった私の右側の転移門!

 なのにどうしてベル様がっ!?


 そもそも今回の計画にはベル様をはじめ、魔公の皆様は組み込まれていない。

 なにせこの国……と言うか、この大陸ではその存在を知っている人は殆どいないし。


 そもそも! 七魔公の皆様は悪魔界を統治する大悪魔であり。

 魔法神ティフィアこと、魔神レフィーちゃんに仕える方々だもん。


 いくら可愛がられてるとはいえ、こんな茶番を手伝って欲しいなんて頼めない。

 だから今回の計画では、七魔公の皆様に登場してもらう予定はなかったんだけど……


「えっとね〜! ご主人様がね〜、ソフィーちゃんを手伝ってあげるようにって〜」


 頭を撫でられて満足気に満面の笑みを浮かべるベル様。

 非常に和む光景だけど……やっぱりそうだよね。


 何となく予想はついてたけど、ベル様を……七魔公の皆様を動かす事ができるのは、この世界においてたった1人。

 レフィーちゃんをおいて他にいないっ!!


「うふふ、ベル」


 その妖艶な声に。

 ベル様に続いて転移門から姿を現した方の美貌に、男女問わず息を呑む。


「あまりソフィーちゃんを困らせたらダメでしょ?」


 艶やかな黒い髪に、吸い込まれそうになる黒い瞳。

 女性であっても思わず赤面してしまうほどのプロポーション。

 誰もが見惚れる絶世の美女。


「ノワール様」


「ごめんなさいね、でもでしゃばるつもりはないから安心して」


「ベル、いい加減にしなさい」


「むぅ〜、レヴィアちゃん離して〜」


「ダメです」


 無理やり私から引き剥がされて、若干不満気なベル様と、そんなベル様の要求をバッサリと却下するレヴィア様。


「ベル、いい加減にしなさい」


「は〜い」


 幼い妹を叱る兄のように、ベル様を窘めるサタン様。


「気持ちはわからなくもないけど。

 まずは僕達のお役目を果たさないとダメでしょ!」


「まったく、お前というやつは……」


 めっ! って感じで注意するシルフ様に、呆れた様子のマモン様。

 そして……


「あ〜あ、怒られちゃいましたね。

 だからやめた方がいいって、言ったのに〜」


「うるさい、黙れ」


「俺っちだけ当たりが強くない!?」


 ベル様を揶揄って、冷たい目で睨まれるアス様。

 アス様は七魔公の皆様の中でもトップクラスの常識人だけどね……


 後でフォローしてあげないとだけど……七魔公の皆様が勢揃いなんて!

 めっちゃ壮観だわ!!


「さて……ソフィーちゃん。

 いえ、ソフィア・ルスキューレ」


「は、はい!」


 きゅ、急に空気が変わった!

 すごい厳かな緊張感!

 私以外のこの場にいる全員が自然と跪く。


「我らが神の愛子よ、汝に我らが主人の言葉を伝えます。

『今度はソフィーの番、見守っているから存分に』との事です」


 不思議な感覚だわ。

 まったく予定にない展開だけど、何を言って、何をするべきかが自然と理解できる。


「光栄にございます」


 優雅にカーテシーで一礼し……


「ふふっ、当然私達も見守っているわよ」


 私の耳元でノワール様が呟き……七魔公の皆様の姿が掻き消えた。

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