第493話 〝白銀〟ソフィー
「ご紹介に預かりました。
Sランク冒険者フィルと申します、以後お見知り置きを」
おぉ〜、流石は超大国たるレフィア神聖王国の第一王子にして王太子。
私から見ても優雅で気品に満ちた完璧な所作! 同じ王太子でもどっかの誰かさんとは大違いだわ。
「S、ランク冒険者……だと?」
「バカなっ!!」
「っ! ありえないっ!!」
セドリックが唖然と呟き、オズワルドとラルフィーが驚愕に叫ぶ。
「「っ!!」」
私の正体を知ってるガイルとサイラスも、流石にフィルの登場にはびっくりしてるようね。
そして肝心のエマは……
「えっ? なに……?」
状況が飲み込めずに困惑と。
まぁ既に乙女ゲームとは全然違う展開になってるし、そもそもフィルは登場すらしない。
エマが困惑するのも無理はない。
とはいえ! それで手を緩める私ではないのだよっ!!
なにせこちらとしては冤罪をふっかけられてる真っ最中なわけですし。
むふふっ! それにこんなもので驚かれては困る。
ここからもっともっと誰もが驚くであろう展開が待ち受けているのだから。
この私に喧嘩を売った意味を教えてあげるわ!
そしてその愚かさを思い知りなさいっ!!
「皆様、フィルの登場には驚かれているようですが……フィルこそが私の無実を証明する証人です」
「ふ、ふざけるなっ!!」
「ふざけてなどおりませんが」
私は至って真剣なのだよ。
だって私の無実を証明するのに、フィル以上の適任は存在しないもん。
「Sランク冒険者とは、人類最強と呼ばれる英雄達!
現在は全世界で15名しか存在せず、その影響力は一国にも匹敵する程の者達の事だぞっ!?」
ほほぅ、これは意外だわ。
まさかセドリックがちゃんと、Sランク冒険者の事を理解しているとはね。
いやまぁ、過去に王族とSランク冒険者と揉めて、冒険者ギルドが撤退した国が滅ぶ事例もあるし。
これでも王太子なんだから、このくらい知ってて当然なんだけど。
「光天のフィルが仮面で素顔を隠しているのをいい事に、Sランク冒険者の名を騙っていいと思っているのかっ!!」
「殿下の仰る通りです!
この件が光天のフィル本人の耳に入り、彼の不興を買う可能性を考慮できないのか?」
「かつてSランク冒険者の不興を買った事により、冒険者ギルドが国から撤退して滅びた国の事を知らないんですか?
貴女が見下す平民である、僕ですら知っている話ですよ」
セドリック達の言い分を聞いて、会場にいる者達も口々に同じような事を言ってるけど……別に嘘なんて一言も言ってないんだなこれが。
まぁそう簡単に信じられないのもわかるけども。
「私が平民の方を見下した事などありませんが、ラルフィーさんの仰るお話は勿論存じています」
「つまり貴様はSランク冒険者と対立する危険性を知っていて、このような事をしでかしたという事だな?
愚か者がっ! 貴様の身勝手な行いは国を危機に晒しているのが何故わからないっ!!」
「ふふふっ、少し落ち着かれては?
私も彼も嘘など一言たりとも口にしておりません」
「まだ言うか……」
「いくら貴女が殿下の婚約者であり、天才などと少し持て囃されていたとはいえ……所詮はただの公爵令嬢にすぎない貴女に、Sランク冒険者との関わりがあるはずがない」
ん? えっと……もしかしてセドリックもオズワルドも、そしてオズワルドの言葉に頷いているラルフィー少年を含めた、この会場にいる者達も。
私のお兄様達が誰なのかを忘れてるのかな?
関わりがあるはずがないって、私のお兄様の1人であるエレンお兄様は剣帝と呼ばれるSランク冒険者なんですけど。
しかも長兄であるアルトお兄様も最年少の十四賢者であり、Aランク冒険者でもあるのに。
仮にエレンお兄様がSランク冒険者じゃなかったとしても、アルトお兄様の存在だけで私がSランク冒険者と関係があっても不思議じゃないはずなんだけどなぁ。
特にフィルがオルガマギア魔法学園に在籍してた事は周知の事実だし。
「……」
「ふん、反論すらできないようだな。
貴様の愚行は国家反逆罪に相当す……」
「はぁ〜、もういいや」
本当はセドリック達の言い分を聞いた上で、完璧に論破してやってからって思ってたんだけど……
「なんだと?」
「もういいと言ったのよ」
「やっと自身の犯した愚行を認める気に……」
「証拠があるって、さっきも言ったはずですよ」
「「「は?」」」
むふふっ! さぁ……驚愕せよっ!!
「教えてあげましょう。
私がエマを虐めていない証拠を、そしてSランク冒険者であるフィルと交友がある証拠を!」
パチンっ!
軽く指を打ちなし……
「
純白のドレスから白銀のマント羽織った軽装。
膝上ミニ丈の白いワンピースにニーハイ、黒のロングブーツ。
腰にはベルトに差した一振りの刀。
そして……
「ふふっ、これがその証拠」
白を基調に金色が混じった白銀と紫のラインで装飾がされている仮面。
「ま、まさか……!!」
誰もが唖然とする中、私の覇気によって跪いていた近衛騎士達のリーダーが愕然と呟く。
「えぇ、そのまさか。
私がフィルも所属する冒険者パーティー・トリニティのリーダー。
Sランク冒険者〝白銀〟ソフィーです」
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