第491話 狂い始めるっ!!
壇上から私を見下ろす6人。
サイラスとガイルにはとりあえず、怪しまれないように本来の作戦通りに行動してもらってるわけだけど……
私を睨みつけるセドリック、オズワルド、ラルフィー。
流石は秀才、演技も上手いサイラスとガイル。
そしてしっかりと5人に守られつつも、ちょっと怪訝そうな面持ちのエマ。
まぁでも、エマがちょっと怪訝そうな顔になるのもわかる。
だって本当なら前世の記憶にある乙女ゲームでは、ここで私が取る言動は……
「理由をお聞きしても?」
って、婚約破棄を告げられたショックと動揺を隠し、公爵令嬢に相応しい凛と透き通るような美しい声で。
しかしながら僅かに震える声で理由を聞く事だもんね。
まぁ尤も……私はすっかりと忘れちゃってたけど。
この場にラルフィー少年がいる時点で私の記憶にある乙女ゲームとは違ってるし。
ラルフィー少年は面倒──げふん、げふん! 忙しくて私が学園に殆ど顔を出さないようになった一年半前くらいから、エマの取り巻きになったらしい。
最後の対策会議で確認したら、ちゃんと報告はされてたらしいけど……
エマにはセドリック達攻略対象以外にもいっぱい取り巻きがいたし。
ぶっちゃけ攻略対象以外のエマの取り巻き連中には興味もないし、特級依頼で忙しかったし。
神の国こと悪魔王国に辿り着いたり、世界の諸々を知ったり、1ヶ月前の事件とか色々とあったりで、ラルフィー少年の事を忘れてても仕方ない思うわけだけど……
「ふふふ」
今はそんな事よりも! 残念ながら私はか弱い深窓の公爵令嬢ではなく、人類最強の一人にして孤高の悪役令嬢たるソフィア・ルスキューレなのだ!!
申し訳ないけど乙女ゲームと全く同じように、動くつもりはない。
エマにはここが乙女ゲームの世界ではなく、乙女ゲームのモデルとなった現実だと教えてあげるわっ!!
バッ!
かっこよく扇子を開いて口元を隠し。
「理由をお聞きしても?」
余裕たっぷりな態度で、妖艶に言い放つ!!
むふふっ、流石は私! 今のは我ながらかっこよかったんじゃないだろうか?
セリフ自体は乙女ゲームと一緒だけど、乙女ゲームとは全然違う態度の私にエマは更に怪訝そうに眉を顰め。
ラルフィー少年は嫌悪感を増加させ。
セドリックとオズワルドは僅かにたじろじ……
「な、何だと?」
「あら、お聞こえになりませんでしたか?」
「ふ、ふざけるなっ!!」
一瞬たじろいだ事実を否定するように。
「理由だと? 我々の都合で親しい者達と引き離され、もとの世界に帰る事もできないというのに……魔王を打倒するために!
この世界を救うために! 力を貸してくれているエマに対して貴様が行ってきた数々の嫌がらせを……陰湿で卑劣な愚行の数々を私が知らないとでも思っていたのかっ!!」
セドリックが整った顔を憤怒に染めて、嫌悪感を滲ませた怒声を荒げる。
「嫌がらせ? 陰湿で卑劣な愚行?
何のことでしょうか?」
しかしちょっとふざけて挑発してやっただけなのに、ちょっと沸点が低すぎないかな?
それに、ここまで完璧に一言一句違わず乙女ゲームと同じセリフを言ってくれるとは。
「あくまでも、シラを切るつもりか……」
「私はルスキューレ公爵家の一員として、そして……」
乙女ゲームでは王太子殿下の婚約者としてという場面だけど、絶対にそんな事は言いたくない!
「この私、ソフィア・ルスキューレの名にかけて。
神に誓って恥じる事は何もしておりません」
そうっ! 最高に可愛くて、最強の神様である魔神レフィーちゃんに誓ってっ!!
そしてここで私が否定すれば……
「良いだろう。
ならば貴様の罪を公のものとしてやる……ヤツを拘束しろ!」
やっぱり、セドリックは私の捕縛を命じたわね。
でも……
「恐れながら、私にルスキューレ嬢を拘束する事はできません」
「……はっ?」
「えっ?」
予期せぬガイルの返事に、一瞬理解が遅れたセドリックが愕然と目を見開き、エマがポカンと間抜けな表情を浮かべる。
むふふっ! さぁ、ここからが本番よ!!
ここから乙女ゲームが、セドリック達が企てた婚約破棄劇は狂い始めるっ!!
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